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絶対的な不利

 あれから数ヶ月。またこの光景を見ることになった俺は、今本当にうんざりな気分だ。

 もう一生戦争なんて面倒くさいことやりたくないと思ってたのに。

 今なにをしているかというと、門番である。

 朝早くから家を叩かれ、強引に起こされて、門の外にぽい。これはさすがに冒険者の扱いが悪すぎる。せっかく参加してやったってのに。

「交換だぞー!!!」で起こされる。

 そして今、あくびをしながら門番中。

 敵軍隊らしきものが確認されればすぐに報告。

 何か怪しいものを確認してもすぐに報告。

 とかいう適当な報告をされ。


 無限のように遥か遠くまで続く草原のカーペットで敷き詰められた緑。

 綺麗だけど、今は素直に朝を喜べない。

 朝を告げる太陽も、己を燃やす炎の如く。風は寝起きの俺を吹き飛ばす勢いで吹き荒れ。

 最悪だ。


「ねえリオル、ねていい? …ふぁぁぁ」


 ラアが俺の方にもたれ掛かり、あくびを一つ。

 仕方ない。


「いいよ、休んでて」


 俺は腹の底から押し寄せるあくびを必死に押さえながら喋り、ラアを門の壁に寝かせてあげる。

 元魔王の俺がこんなことをすることになるなんて。おかしいだろぉッ!!!


………


 一時間が経った頃。

 そろそろ交換の時間だってときに、異変が感じられる。俺の身が珍しくふるふると震える、おかしな異変。

 地平線の向こう側から、何かが来る予感。

 俺の危険レーダーがぴんぴん反応している。頭の中で警報をならしている。


「ねえ、ラアも分かる?」


「え、あ、うん。分かるよ」


 ラアはついさっきまでぐっすり眠っていたので、俺に慌てて反応した。全身で伸びをして、眠った体を起こし、神経を集中させる。

 うん、ヤバイな。

 俺は危険を察知し、急いでギルドに報告へ向かう。

 ラアはとりあえず門に残して、ギルマスのもとへ。

 ギルマスは俺の報告を受けるなり、すぐに全ギルドへ放送を流し、ベレリオルの騎士団にも報告を行う。

 それはもう手慣れたものだ。一瞬にしてその情報は国中にしれわたる。

 住民も、情報を得るなりそそくさと避難の準備を始め、速い者ではもう家から飛び出している。


 数分もすれば、ベレリオルの大門の前には数万の騎士団と数万の冒険者軍隊、数万の一般兵の合計十二万の軍勢が並んだ。


「師匠! 何事ですか!?」


「そろそろ戦争が始まるの」


「えー、……めんど…」


 気付けば俺の横にはラアの弟子こと邪魔者のアユが。ガックシと肩を落としてため息を吐いた。

 ラアは無限の草原から迫り来る数十万の異様な空気を放った軍隊を見据える。


「やっぱり、なんか変ね。前とは比べ物にならないほどの魔力エネルギー反応ね」


 ラアも分かっているみたいだな。今回、ベレリオルにはルリオとレリアがいなくて、人魔決戦での残った兵達だけしかいないのに対して、敵軍はさらに強くなった魔王軍だ。

 戦状はかなり不利な状況だ。もしかしたら負けるかもしれない。というか、これはどう考えても負ける。

 今、ベレリオル軍の敗北が決定した。

 こっちは怪我にもいるんだ。戦力差敵には比にならない、天と地の差が開かれている。

 絶体絶命、といっても過言ではない。


「絶望的な感じだねー…」


「ああ、どうしようか。ラア、今回もウクラルは使える?」


「使えるって言わないで! まあ一応、全然大丈夫よ!」


 ラアは俺に親指を立ててみせてくれたので、まあ安心してもいいという認識でいよう。最悪、敵の大軍の相手はウクラルに任せてもいいだろうと思いながら。

 今回はメイピスがボスになるな。

 宣戦布告とか何もなかったけど、多分プライドとか捨てて問答模様でこっちを攻めてくるのだろう。

 俺はまたため息を吐きながら髪の毛をかき回す。

 もしもピンチになったらどうしようかとか、考えながら。


 ◇◆◇


 プライドを捨てた───それは大正解である。

 今、メイピスは魔王のプライドなど関係なしな状態だ。そんな邪魔な物は身体から引き剥がし、敵を皆殺しにすることだけを考える。

 リオルクシが目指した人類壊滅、世界滅亡。

 二万年という彼の努力は、誰にも分かりやしない。

 もともと人間だったリオルクシは魔人になるためにどれだけの血を流したのか。それも誰にも分からない。


 メイピスは魂を燃やす。憎むべき人間、滅ぼすべき人間を蹂躙し、壊す。


 そして軍を動かせる。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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