魔王城への来訪者
魔王城元ガズドナルメシアから異様な空気が漂い始めたという情報が流れ、ギルドで調査依頼が出たあの日からもう一週間。
あれから行方不明者は増えていく一方で、やっと調査依頼は廃止した。
そして、新たに行方不明者発見依頼が出始めた。
それはSランク冒険者の選ばれたものしか受けることが出来ない。
並の冒険者が向かえばまた行方不明者が増えるだけだからだ。もちろん、俺もギルマスにやらないかと誘われたが、そんな恐ろしいもんやりたくない。
それより、パーティーが解散したばかりなのだから、そもそもできるはずがない。
ということで、俺は家でゆっくりしている。
俺の考察では、魔王軍で唯一生き残ったあのメイピスが何かをしているということだ。
何が起きているのか、今の俺に知る由もない。
これで魔王軍復活とか面倒なことになったら、最悪だなぁ。絶対に俺は強制してでも呼ばれる。
それだけは勘弁してほしいが、そんな俺の願いが届かないことぐらい分かっている。
俺は察した。
またあの地獄が繰り返されることになると。
◇◆◇
魔王城元ガズドナルメシアに一人の人間が訪れた。
「メイピスさん……かな? 俺はリュミリーという名の女の見た目をしているが、中身はウォスという名の男だ」
と名乗った見た目は女、中身は男が。
メイピスはウォスという男の説明を聞いているうちに、衝撃の言葉が次々と降り注いできたので驚愕のあまりその場に倒れこみそうになった。
「説明すると長いんだが…」という前置きを喋ってから本題にはいる。
あくまでもウォスという男の考えらしいが、この世に今現在も存在するもう一人の魔王リオルクシが、ウォスの身体を乗っ取った…
ここまではメイピスも分かっていたことだ。
しかし、ここからメイピスが予想もしなかった言葉が降り注ぐ。
リオルクシに身体を乗っ取られたウォスは、ウォスの彼女であったリュミリーという女の体に魂移転をしたらしい。
リュミリーの魂がどうなったのかは不明だが、その後リュミリーになりすましてリオルクシを観察。
そのリオルクシはなんとウォスになりすまし、冒険をしていたのだとか。あの人魔決戦でも参戦しており、人間の味方をしていた。
それもメイピスは分かっていたことだが。
あのリオルクシが本気で人間の味方をしていたとは信じがたい。
もう一人の魔王リオルクシは何を考えているのか……それは決して読むことが出来ない。
「俺はリュミリーはもうどうでもいいんだ。今はなんとしても俺の身体を取り戻したい、それだけだ」
と、あとに付け足しをしてからメイピスの顔をちらちらと覗くウォス。
ここまできてメイピスはウォスの言いたいことを理解した。だが、心の奥底でリオルクシを取り戻したいという思いがまだ残っている。だから、殺すのはやめてくれよと願いながら。
「ふん、ようはお前は私の下に降りたいとそういうことだな?」
「うーん、まあ合ってるっちゃ合ってるけど…俺はメイピス、君に忠誠を誓う気はないよ。ただ、人間と戦うという利害が一致しているから、仲間になろうと言っているだけだ。君だってもう一人のリオルクシが厄介なんだろ?」
「そうだな、私は人間に復讐を、お前は人間に復讐を。なるほど、いいだろう。お前と協定を結んでやる」
二人は深く深く、力強い握手を交わした。
そして、最悪の協力関係が今、生まれてしまう。
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