消えたリュミリー
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家に帰ると、俺は一人だった。
リュミリーがいない。
リビング。
「いない!」
台所。
「いない!」
お手洗い。
「いないッ!」
風呂場、寝室、リュミリーの部屋、倉庫。
「い、い……ない!」
まぁ、絶対にいるという訳でもないか。どっかに出掛けているのだろうか?
家は薄暗くて、人の気配はもちろんない。
風が吹くこともなく、空気は懐かしい匂いだった。新築って感じの新鮮な美味しい空気。
なのに、どこか苦くて不味い。
嫌な予感がするんた。俺の直感が常に震えている。こういう場合、なにか良くないことが起きている時だ。
リュミリーに何かあったのだろうか?
その疑問は、すぐに答えが現れる。
見落としていたのか、リビングにでかでかと設置されていた机の上に、メモ帳らしき物の紙切れが一つ。
「なんだこれ?」と呟きつつ、俺はその紙切れを覗く。
そこには、衝撃の手紙が書かれていた。
『さようなら』
という一言だけ。ポツンと。
さようなら? どんな冗談だよ? どういうことだ?
リュミリーが消えた。
べ、別に俺は心配なんてしないけど…? 逆に晴れ晴れするよ。一人になれるんだから。
俺はそんなことを考えながら、大きなため息を吐いた。
「どうしちまったんだろ? 何があったんだ?」
独り言をぽつぽつ呟きながら、俺はその場にストンと腰をおとした。
静かで、冷たくて、寒い。何年、何十年、何百年ぶりかのさみしい空気。
俺はいろいろ考えるのも面倒なので、むしゃくしゃしてリュミリーの手紙をビリビリにちぎった。
浮気……かな?
俺はそう思いいたり、考えるのをやめた。
スッと立ち上がり、部屋の電気をつける。今度は俺の視界がパッと明るくなり、空気も綺麗に入れ換えられた。
そりゃあ人間なんだし、浮気はするものか。
ま、俺にはラアがいるんだし、どーでもいい。リュミリーのことを考えるのはやめだ。
俺はすんなり気持ちを入れ換え、リュミリーのこを忘れた。そして疲れを癒すため、酒を取り出し、一人の夕飯の準備を始めた。
翌朝。
俺はなんだかんだ言ってリュミリーの心配をしていて、気付けばギルドに行き、行方不明者届けを出していた。
何もなければいいけど。そんなことを思いながら。
ほんと、俺はすっかり人間になってしまった。あれから一年がたつだろうか? そんなに経ってないか?
まだ魔王だったときの感覚がうっすら残っているような気もして、俺はごちゃごちゃしている。
行方不明者捜索の件は、初めはあんまり動いてくれなかったものの、今では結構大規模に動いている。
魔王軍が壊滅して魔物魔獣の勢いも次第に衰え、今ではギルドの仕事も減少していたところだったので、どうにか動いてくれたのだ。
最近は平和すぎて、居酒屋や服屋、雑貨屋いろんな所で元冒険者を見かけるようになっていたが、久しぶりの活動再開に盛り上がっている様子。
これで見つかればいいなと、俺はまたもいらぬ心配をした。
前、口論でのバトルを繰り広げたルリオも、協力してくれている。もちろん、ラアも。
そういえば、ラアには弟子ができたようだ。
タキカワ・アユ。俺を助けてくれた彼女だ。俺には全く興味が無いらしいけど。
異世界人らしい。あのだぼだぼの服は、ジャージと言うらしく、異世界の学校での服だったらしい。
それと、刀は愛用している武器なのだとか。
これも異世界から持ってきた武器だそうだ。とても興味深い。
それはさておき、捜索は今、順調とは言いがたいが進んでいる。
捜索開始から一ヶ月。
衝撃だったのは、リュミリーがこの国にいなかったという報告だ。
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