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頂上決戦2 ~魔王右腕VS裏魔王~

これこそ頂上決戦ですね!


 その攻防は、一瞬で終わりを告げる。


 まずいまずい。

 タキカワ・アユだったか? 多分だが死んだな。

 メイピスの手によって簡単に、素早く、綺麗に、エレガントに。葬られてしまった。

 そして一人、取り残された俺。


 ───あ…終わった。


 そう絶望した俺だったが、メイピスがタキカワをかたづけると、俺を殺すことなくこちらへ歩み寄り、話しかけてきた。


「あなた…いや、我が君! 偉大なる魔王リオルクシ様ッ!!!」


 はっ?

 俺は驚愕のあまり口からは変な声が出ていた。

 メイピスが俺の目の前に現れ、深々と礼をしてその場で両手をそろえ、ピンと一本の線のようにまっすぐ立ってみせた。

 どういうことだ?

 なぜ……なぜバレた?

 嘘だろ。

 てかさっきは俺のことを殺しかけてたよな…?

 まあそれはいいとして


「お、おい。そんな、馬鹿な───」


「あら、すっかり人間性が出ちゃってますね…って、申し訳ございませんッ!!! 私の無礼をお許しくださいッ」


 俺はメイピスに馬鹿にされたかと思えば、すぐに謝られた。なのでここは許しておこう。

 じゃなくて、どういうことだ?

 周りの空気は凍りついている。その場にいた者全員がぽかんとしている。

 といっても俺とルリオとレリアだけだが。てかレリアは重傷を負っているな。メイピスだろう。

 て、なぜ俺は人間の心配を……

 メイピスの言うとおり、やはり俺には人間性が出てしまっているのか。

 まずはこの状況を整理し、事情を説明してもらおう。

 すこし人間アピールしつつ。無駄だろうけど。


「ど、どういうこと…かな?」


 おどけすぎかな?

 あー、誰か助けてくれ。この状況から抜け出したい。


「それはかんた───」


 そこにタイミングバッチリ、お助けが入った。


「リ……ウォス! 助けに来たよ! 大丈夫そう?」


 ラアだ!

 ナイス! ナーイスッ!

 なんか装備が強そうに変化してるけど、それはあんま気にしないでおこう。これはデヴァに勝ったという認識でいいのかな?

 あと、少しリオルって言おうとしたようにも聞こえたが、ここは眼をつむっておいてあげよう。助けられたんだし。


「チッ、邪魔が入ったか…」


 メイピスは、ラアが来るなり舌打ちをし、彼女を鋭い眼光で睨んだ。

 ラアはそんなの気にせず、俺に飛び付いてくる。


「怪我はない? 大丈夫?」


 普通ならば俺の心配よりも周りの心配を優先すべきなのだが、ラアは俺だけに構ってくる。

 ほんと、空気を読んでほしい。

 メイピスがイライラした様子なのだが…

 これは安心してもいいのかな?


「てか、なにこれ。死体じゃん。あと、メイピス?」


 ラアはやっとこの場の状況に気付いたのか、俺から離れて周りの様子に反応する。そしてメイピスとご対面。


「ラア・ミーレ……。本当に失敗したようね。誰が解除したのか知らないけど、厄介だわ」


 あ、それ俺でーす。


「メイピス、これあなたがやったの?」


「ん? あーはい」


「うーん、ならばラアはメイピスを殺せばいいのね」


 ラアは状況を理解できましたといった様子だ。

 そしてすぐに剣を構える。


「ちょっと疲れてるけど、これでラストだよね!」


 疲れているというのは、デヴァとの戦いのことだろう。

 メイピスも準備万端といった様子だ。そしてラアが先に起動する。

 その動きは、疲れていても鈍らない。

 一秒後。

 闇と闇のような光、ラアが激突する。


 うわぁ


 思わず情けない声が漏れてしまった。

 この二人、ガチだな。

 一筋の隙がない、素早くて洗練された動き。それは両者同様で、何度も何度もぶつかり合い、そして弾ける。


「ラアはウォスのためにも早く終わらせたいんだ! だから最初からとっておきを使わせてもらうよ!」


 ラアがメイピスから一定の距離を取ると、その()()()()()が召喚される。


「ウクラル!」


 は、はぁぁ…


 ここまでくると呆れるな。なんだよ、ウクラルって…

 ドラゴンかよ。こんなの知らない。なにこれ。


「まさか、本当にいたとはッ!?」


 メイピスは知っているようだけど。俺知らないよ?

 ウクラルというドラゴンは、召喚されると同時にこれでもかと雄叫びをあげる。


「ギュオオオオオオオオ!!!」


 そしてラアとウクラルは目だけで会話をし、目で合図を送り合い、再起動する。

 ウクラルは空高く飛び上がり、そこからメイピスめがけて急速落下。それに合わせてラアはメイピスに向かって神速で突っ込む。

 同時に攻撃して眼をくらませる作戦だろうか?

 それは違った。

 突然、ウクラルが口からは炎を吹いた。それはメイピスの全身を包み込み、焼き付くす。

 そこにたたみかけるように、ラアが繰り出したのは、突風を込めた斬撃だ。

 シュババババッ

 とメイピスを切り刻む。


「なっ────ッ!?」


 さすがのメイピスも焦っているようだ。炎の威力が強すぎて、再生が難しく、時間がかかっているようだ。

 そこにラアの斬撃がきてしまっては、焦るのも当然というものだった。


無限の炎(エンドレスフレイム)!!!」


 ウクラルの必殺技で、それにラアの斬撃を組み合わせれば、二人の最強の必殺技となる。

 メイピスは何も出来ずに焦るばかり。とにかく急いで炎の分析と再生をしながら斬撃を避けるの繰り返し。

 それに対してラアとウクラルはひたすらに炎を浴びせ、斬撃を浴びせの繰り返し。


 そろそろ俺も飽きてきたので、レリアの回復へと向かった。


「こりゃあヤバイな」


 レリアは身体中が切り刻まれており、所々から血が吹き出ていた。しかも右腕は今にもちぎれそうだし。

 レリアは身体強化とか施せないからかなりの大ダメージだったろう。そういうレベルじゃないか。

 下手したらもうじき死ぬな。

 このまま死んでもらっても俺としては構わないけど、後ろには心配そうに見守るルリオの姿が。

 俺は今、レリアを回復させること以外、何も出来ない。

 幸い、物理的な怪我しかしてないから、回復は簡単だ。不幸中の幸いってやつだな。


「ほれ」


 俺はレリアの外傷を何もなかったかのように再生してみせた。


「え、あれ? 私…」


「おお! すげぇなウォス! レリアよかったな!」


「うん! 死んだかと思ったぁ」


 よかったよかったと俺は頷きながら、さっきから大騒音を響かせるラアとメイピスの戦闘に眼を向ける。

 お、メイピスはもうボロボロだな。

 これは勝負あったな。


「あっ、ウォス? もう終わらせるね! 行くよウクラル!!!」


「ギュオオオオオオオオ!!!」


 そしてラアとウクラルは最後の必殺をメイピスに叩きつける。

 メイピスもこれで───


「チッ、もうこれは逃げるしかないな」


 おいおい、まてまてっ!?

 俺が叫ぶ前に、メイピスはスッと姿を消した。

 は?

 逃げ…られたな。

 あいつは、結局なんだったんだ。


「やったー! 勝ったね!」


 ラアがウクラルのおでこを撫でると、ウクラルはラアに吸収された。そしてラアはこちらに寄ってくる。


「終わったよ」


 うん、終わったな。

 スッと、いきなり、あっさりと。これで全てが終わった。

 涼しくて心地よい風が俺たちを包み込む。


 全勢力を投入した魔王軍の敗因は、ベレリオルという大国には、次元外れの者たちが数多く存在したこと、ルリオの実力を見誤ったこと、調子に乗って裏魔王を利用しようとしたこと。


 この地獄せんそうは、人間の勝利に終わった───


 ◆【後片付け】


 それと、バディオルド達は………も、逃げたな。

 ならばもういいか。


 魔王軍は壊滅。幹部もほとんどが崩れ落ち、もう何もかも成り立たない状況だ。

 対するベレリオル軍の犠牲は少数。数百人の死者に、重傷者だけ。

 あれから怪我人は運ばれ、俺たちは残った者達とテントや敵陣営などの片付けをした。


 その後、俺は地獄の拷問という名の質問責めに合う。


 片付けや国家関係、ギルド関係やら難しいこと全てが終わると、俺はルリオの家に突然急ぎで呼ばれた。


「お前、ウォス……なのか?」


 あー、はい。聞かれると思っていました。

 ここまでくれば、魔王軍に寝返るといのもいいかもしれないと思った俺である。

 メイピスの言動も不自然だったし、やはりもう一人の俺に何か合ったのだろうか?

 ラアもいるし、寝返るというのも……

 でも、もう一人の俺がなぁ

 どうなるかわからない今は、なんとかこの状況を誤魔化して逃げるしかないようだな。

 ラアもいないし、リュミリーもレリアもいないので、俺は一人である。


 一対一。

 正々堂々誤魔化してやる!


 最後までお読みいただきありがとうございます。

 少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけたら、ブックマーク登録、評価よろしくお願いします。


 これで【魔王軍の蹂躙編】は完結です。(まだ連載は続きます)

 ありがとうございました。

 次話もお楽しみに☆

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