コアゴッドコラフィ
50000文字達成!!!
………お年玉ください。(PT)
俺とラア、ルリオが大混乱から抜け出した後、再びベレリオル軍の前衛に堂々と加勢した。
押されぎみだった軍も、俺たちの活躍で方向は傾き、良い方へ。リリオルドも去ったことで、ここでの注意すべき敵は極少数となったと考えられる。
だが、油断してはいけない。こういうときこそ冷静さを保ち、周りの警戒を怠らない。まだリリオルドのような強敵、例を言えばバディオルドとかがいるのだから、気を引き締めなければ。
俺は爆撃魔法を敵軍の前衛にかましながら、後衛の遠距離魔法を放ってくる魔法使いらしき魔人達の邪魔をした。
正確に言うと邪魔をしたのではなく、俺たちが邪魔をされていたのだから、排除というのが正しいか。
ともかく、後衛の邪魔者達が減りつつあるので、ベレリオル軍はさらに勢いを増し、形勢逆転を始めた。
さっきまで苦戦していたのが嘘のように、ベレリオル軍は魔王軍の前衛を殲滅していく。
上位冒険者部隊の者達の苦い顔も、血気盛んに興奮した顔へと変わり果てていた。
そうして戦場は、ベレリオル軍の物となる。
俺もこれは行けると自信を持ち、さらに威力の高い、殺傷力の高い魔法を放とうと思った。
そこで、俺はさっきラアとの戦闘で覚えた「核心崩浄」を使おうと思い至る。
円を描くような面倒なことをしなくても、広範囲に影響を及ぼす最大の魔法を。
俺はこの時、新たな魔法の改造を成功させる。
そしてその魔法は、能力へと進化した。
能力は単なる魔法とは違い、その者だけが使える才能という意味になる。
魔法の技術を磨きに磨いた者だけが到達できる、最高の極み。
魔王だった時も別種のを持っていたが、
今回、俺が手に入れたのは───
「核神崩浄」
その能力が本領発揮するのは今からもう少し後の話である。
◇◆◇
魔王軍幹部の一人であるバディオルドは、リオルクシへとルリオ発見の報告をする。
その後、バディオルドはリオルクシからデヴァ軍の進軍許可を出すよう命令された。
もちろんバディオルドもその命令に従わない理由などなく、すぐに許可を出した。よって、魔王軍の現段階での戦力は大幅に上昇することになる。
「デヴァは危険すぎる男だ……その配下の実力も計り知れない……この戦争は、我等魔王軍の勝利となったも同然だな」
バディオルドはデヴァの実力を認め、勝利の未来しか見据えない。敗北などあり得ないと断定し、静かにリラックスし始めた。
バディオルドは本部テントの管制室にある専用の椅子にもたれかかる。
そして、波のようにゆらゆらと揺れる。
周りから見たら仕事をサボり、のんびりしているようにしか見えないが、今も彼は常人では不可能な、とんでもない回転速度で思考している。
それは新たな策を生み、実践しようとする欲望へ。
「人類は完全に潰せという魔王様の御命令、具体的ではないが、それほど焦っておられるということ。必ずや……」
◇◆◇
さて、「核神崩浄」をぶちかまそうかと思ったが、まだ使い慣れていないし、味方への被害が出る可能性が濃厚だ。
この能力は対象の精神と魂を破壊し、肉体だけ残す。精神生命体などは即死する超危険で最強の能力である。
(正確には能力の権能魔法)
それが味方に少しでも影響すれば、普通なら即死である。人間のような魂のもろい者たちは特に。
ひとまず俺は能力を使わず通常の物理魔法で戦うことにした。
しかし、その考えは一瞬にしてひっくり返される。
もう、少しの犠牲くらいはどうでも良いと思うほど、絶望的な状況下に俺はおかれた。
なんと、魔王軍にさらなる援軍───それも、魔王軍幹部最強のデヴァ軍が堂々とやって来たのである。
その足音は、瞬きするその一瞬で迫り来る。
俺はその覇気を感じ、一瞬気圧されそうになる。
しかし、余裕な態度を崩さず、笑みを浮かべる。
デヴァの強さの真骨頂は、その能力にある。
「死滅魔神」
俺と同じく、最強で最悪の極みである。もっと言えば俺よりも強い能力で、簡単に言えば禁術である。
そんな能力を持った化け物なのだから、到底今の俺でも敵わないだろう。となると、頼れるのはルリオしかいない。あいつも多分禁術レベルの能力を有しているはず。
頼れるのはルリオだけではなく、ラアもいたな。
いざとなれば、なんとかしてくれるだろう。
真なる魔王の能力も知りたいし、ラアは良いかもしれない。最悪の場合、俺が相手することになるが……それはその時だ。
ちなみに、俺が魔王だった時は能力を二つ持っていた。本来なら有り得ないが、俺なら出来たのだ。
「覇強魔極神」
二つ目は
「欲望求神」
である。
「覇強魔極神」は、これもまた禁術で、覇気を制御したり解放したりと操作することができ、この覇気をくらった者は、攻撃力やスピードなどの基礎体力値が大幅に激減する。
さらに、体の状態を自由に変形できる。そして、どんな状態異常でもなんでも無効化する。
簡単に纏めると、無敵ということである。
そして「欲望求神」は、そのまま言うと、新たな魔法を欲望のままに求める能力という意味になる。
本当にそのままだ。
まだ自分が有していない魔法を観察し、分析を完了するだけでそれを使えるようになるし、欲望が強ければ強いほど新たな魔法が使えるようになるという能力である。
技術など磨く必要もなく、奪ったときからかなりの威力を誇る物を得られる。コピー強化番、妄想能力ということになる。
これもかなり強い能力だ。
今、それを思い出して取り戻したいと思った瞬間である。
さてと、かなり不利な状況になったが、こっからどうするかで戦況は一気に傾く。
判断力と分析力が問われるわけだ。
「ラア、分かる? デヴァが来てる」
「うん、知ってるよ! ラアがボコボコにしてあげようか?」
俺の問いに対して帰ってきたのは、意外な答えだった。それは嬉しいが、そんなことを軽々と言うラアを恐ろしいとも思った。
彼女が味方であって良かったと心から思う。
「えっと、じゃあよろしく」
俺は元気そうなラアを見て少し苦笑いを浮かべるも、一応感謝しておく。
「リオル、まかせて!」
ラアは早速剣を抜いた。
さっきまでは広範囲に攻撃をするため魔法で戦っていたが、今からデヴァと一対一をするつもりなのだろう。
くれぐれも死なないようにと、俺は願った。
そんな心配してるなら一緒に行くかお前が戦えと思うかもしれないが、今の俺にそんな力はない。
ここはラアに任せることにしたのであった。
「行ってくるね」
と言い、ラアは俺に優しくキスをしてからフッと気配ごと消えて見せた。
は? と俺は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに冷静さを取り戻す。
でもやっぱりむふふな思考へと切り替わってしまう。リュミリーの何倍も可愛くて強くて楽しい。
浮気もありかな? と思った俺である。
ラアがいなくなって心配な気持ちが俺を支配するが、目の前は戦場だ。他人の心配なんてしている場合ではないと思い知らされる。
気づけばあっという間にベレリオル軍はまた押されていた。血気盛んだった精鋭達も、もうくたくたである。
人間には体力の限界がある。それが近づこうとしていた。
「そろそろ決めないとかな?」
もう魔王軍との戦争が始まってから何時間が経過しただろうか? もしかたら知らぬ間に数日が過ぎていたかもしれない。
死者は何人? 犠牲者は? 怪我人は? 色々と気になることはあるが、今は関係ないことだ。
そんなことを考えていると、デヴァの軍隊が到着してしまった。
俺はあわてて相手をする。
もう周りの精鋭達ではまともに相手が出来ない状態で、今戦場に立っているのは俺と───ルリオとレリアと他数人だけである。
そのメンバーを俺は確認する。
まずベレル騎士団騎士団長の、レイード・ディファルさん。それと、名前わかんない冒険者達。
ここからでは皆顔や姿が見えないが、だいたいは分かった。
レイードはどれ程強いのか、少し気になる所があるので、ちょっと注目しておこう。
ということで、ベレリオル軍は急にピンチに陥った。かなりまずすぎる状況だ。
後ろにはまだベレル魔法団が残っているが、それが潰されればもう終わりと考えておこう。
下位冒険者部隊など、もう戦える者はいない。
絶望的すぎる。
もうやはり、多少の犠牲は厭わないことにするか……
てか、もう周りの戦士達は満身創痍で戦意喪失しているのだし、ぶっちゃけどうでもいいか。
俺はここでやっと決意する。
ルリオやレリア、騎士団長さんなら影響下におかれても耐えてくれるだろう。というか、ルリオは最終的に敵になる可能性が大なのだから、死んで欲しいと思う。
「核心崩浄」
「核神崩浄」の権能魔法のひとつ。広範囲精神攻撃。
それは魂をも砕く、最強最悪の魔法。
俺が発動した瞬間、影響範囲は太陽の如く光輝き、泥沼を浄化していくかのようだった。
魔王軍の前衛に立っていた者など今では皆無。さらには後部隊、デヴァの援軍さえも皆殺しにしてしまった。
影響範囲内の魔人達は一人残らず倒れ付した。
気になるベレリオル軍はというと……当たってすらいなかった。なんと、俺は見事に影響範囲を設定することに成功したのだ。
なので、味方の犠牲者はゼロである。
「お、おお……ウォス、すごいな」
今の魔法を見て珍しく驚愕の表情を浮かべたルリオがやって来た。レリアも同じ様子だ。さらには騎士団長さんらも拍手をしながら俺の周りに寄ってきた。
周りの戦士達も歓声を上げていた。
「す、すごいな!」
「素晴らしい!」
「あ、ありがとう…?」
俺はなんとなく返事しつつ、歓声を受け止める。ルリオなんか、俺よりも凄い能力を隠し持っているくせに。分かんないけど。
そんな感じで、俺の作戦は見事完璧に成功した。
魔王軍の残兵など残っておらず、後は幹部連中だけだろう。
そして俺たちは敵のボスを討つため、先を急いだ。
◇◆◇
「嘘だろ……」
その光景を見たバディオルド、リリオルド、デヴァは口を揃えてぼそりと呟く。
周りにいた中将や護衛などの精鋭でさえもばたばたと倒れていく、有り得ない広範囲で高威力の精神攻撃。あれは油断していれば自分でも死んでいたかもしれないと、彼らは揃って思った。
こうなると、形勢大逆転。魔王軍の勝利がうっすらとぼやけ始めた。
「現実だ。後は俺たちでなんとかするしかないようだな」
そんなことを言うバディオルドだが、まだ勝算は残っていた。しかし、その考えも一瞬にして砕かれる。
「ねえ、分かる? この覇気」
「あぁ、ラア・ミーレだな」
そう、ラアが魔王軍本部テントに到着した。
「お下がりください! ここは私が!」
と言い前に出たのは、幹部三人以外で唯一生き残ったルファーニ少将。彼は幹部に推薦されてもおかしくない実力者であり、賢くて図太い男として有名だ。
任された任務は全て完遂。今までで失敗した任務など皆無と噂されるほど。実際、噂などではなく本当である。
しかし、そんな彼でもラア・ミーレの前では何もできずに死ぬだけだろう。それを分かっている三幹部達は、ルファーニの行動をすぐに止めにかかる。
こんな優秀な存在を失うわけにはいかないので、三人とも全力である。
ルファーニもなんとか渋々諦めてくれ、バディオルドの後ろに控える。
「俺が行こう」
と次に前に出たのはデヴァである。
バディオルドはこいつならば問題ないかと、すぐ断定し、決定する。
「よし、お願いしよう」
しかし、今の今まで無言を貫き通してきたリリオルドがここで口を開く。
「いや、僕が行こう」
が、そんな馬鹿な真似を愚弟に軽く命令できるバディオルドではないので、すぐに却下する。
「だめだ」
「えー、まいっかー」
ここは珍しくリリオルドが大人しい。
バディオルドは少しほっとしつつ、先のことを考える。もしデヴァがラアを倒せたのならばそれでよし、無理だった場合は即撤退だ。
「じゃあ、行ってくるわ」
デヴァが余裕な態度でテントを出た。
バディオルドはそんな彼の背を見つつ、不安な気持ちを押し殺した。
「あぁ」
気を付けろなんて言う意味など無く、バディオルドはデヴァがテントの外に出たことを確認する。
そしてリリオルドとルファーニの二人に、デヴァが負けた場合のことについて話し始める。
最後までお読みいただきありがとうございます。
さて、ついにあのデヴァが、活躍するときが来ました!!!
次回はまたまた新たなキャラが登場するので、お楽しみに⭐
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