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蹂躙の始まり


 魔王リオルクシの幹部であるバディオルドとリリオルドは、今戦こんせんでの魔王軍の対ベレリオル突撃隊(バディリリオ軍団)に所属する軍団長である。

 この二人は兄弟であるが、仲は良くないというか悪い。

 今戦でも軍団長を賭けて争い、結局二人が軍団長に任命されることになった。魔王軍ではかなりの有名人である。

 あの兄弟が喧嘩をしているときは、近寄ればそこで終わり───とか、噂されるほど。

 そんな二人が軍団長のため、どちらかが勝手に命令や作戦を決定しようとすると、すぐに喧嘩が始まる。なので、配下達は二人を宥めるのが大変なのだ。

 当然、喧嘩が始まっては割り込むことはできないが、始まる前に止めればいいだけ。ま、それが大変なのだが……

 最近まで宥める担当という役割分担があったほどだ。 


 そんな二人たが、今は間もなく始まろうとしている戦争に向け、野営テント内にて真面目に話し合いをしていた。


「あー、なんかめんどくさーい。もう今すぐ潰しにいけばいーのにー」


 リリオルドがため息混じりに呟いた。

 椅子に腰かけている二人だが、リリオルドはギコギコと揺れている。バランスもかなりギリギリを攻めていた。


「俺もお前と軍団長とか、最悪だわ」


 全然真面目に話しているように見えないかも知れないが、これが彼らにとっての「真面目な話し合い」なのだ。

 さっきから、互いの愚痴ばかりをいっているが、これでも話は順調ではないが進んでいる。


「てか、人間だろ?そんな弱っちぃ種族と戦争なんかして何の特があるん?僕もぅ家帰りたぁーい」


 などと、リリオルドはさらに椅子を揺らす激しさを増しながら、自身の不満を爆発させる。

 そんなリリオルドを、バディオルドが腕を掴んで机に引き戻した。


「で、何の話してたんだっけ?」


 バディオルドが言ったのはそれだけだ。

 その一言の後、しばらく二人とも無言になりテントの中は静かになった。

 すると、外の穏やかで賑やかな音が聞こえてくる。

 外では魔王軍の魔兵達がわいわいと騒いでいる。こんな時に乾杯をして酒を飲んでいる者もいるようだ。

 せめて酒を飲むのは、戦争が終わってからにしろよと、バディオルドは不機嫌そうに思った。

 さらにしばらくした後、リリオルドのため息で話が再開される。


「えっとー……上位冒険者軍団? って所の潰しかたを考えていたところだった気がするようなしないようなぁ……」


 リリオルドが頭の中をかき回すように記憶をたどった。しかし、思い出すことは出来なかった。


「いや、もう話したっけな?じゃあ、どうなったんだっけ?」


 などと、考えはまとまらない。

 こうして、同じことをまた考える羽目になる。


「お前、やる気あんのか?」


 バディオルドは、のんきなリリオルドにイラつきながらも問いかける。


「帰りたーい」


 リリオルドはそんなバディオルドを無視し、何度も同じことを連呼する。

 リリオルドを見てバディオルドがまたため息を吐く。バディオルドはリリオルドがぶーぶー言っているのを無視し、思案する。


(今戦で危険なのは上位冒険者部隊……といったところか?いや、国兵部隊とか言うベレル騎士団魔法団も重要視した方がいいな)


 それ以外は眼中にないといった感じで、バディオルドは敵部隊をさらに分析する。


(騎士団魔法団では団長くらいしか強者はいないか?いや、隠れた強者がいる可能性も捨てられない)


 俺なら余裕だなどと、油断してはいけない。バディオルドは過去にそうした油断から失敗した経験があるから分かる。

 バディオルドの作戦は、ベレリオル軍の団長格や強者を炙り出し、そいつらを殺す。その後、残った兵達を殲滅。

 そのための作戦をまた考える。


 ◆


 リリオルドは自分の忠誠を魔王リオルクシだけに誓っていた。だから、リオルクシのためならどんな無茶な任務でもこなしてきた。

 そんなリオルクシに死が近づいているなんて、リリオルドには到底信じられなかった。

 最近は、ため息ばかりをついている。

 自分も、リオルクシがあの世へ旅立つならば、ついていこうと思っていた。

 だいたいなぜ、リオルクシが死ぬのか。もう一人のリオルクシがいるから?そんなこと鵜呑みにするリリオルドではない。

 仮にもしそうならば、リリオルドはどんな手段を使ってでも、そいつを殺……いや、どちらにしろそいつもリオルクシなのだ。殺すわけにはいかない。どうにかして、もう一人のリオルクシを殺さないでも今のリオルクシを解放する方法を思案する。

 リオルクシを救いたい___その一心でリリオルドは戦場にて荒れ狂う。


 ◇◆◇


 そして、決戦は突然始まる。

 少し前まで快晴だったのが、急に雨が降りだしたかのように。

 しとしとと、そして激しく。


「ゆけぇぇぇぇぇ!!!」


 バディオルドの力強い命令はこれでもかと圧を放つ。その合図によって、魔王軍は動き出す。

 今、戦争が始まった。

 魔王と人間の、因縁の戦い。


 少し前の話。リリオルドはバディオルドの作戦に珍しく納得し、乗った。

 それでバディオルドがこの軍の指揮権を得て、軍を進行させる。リリオルドは一人で前衛まで出て、強者の炙り出しへ向かった。


「腕に自信があるやつ! 僕と戦わない?」


 そんなことを言ってこちらに向かってくるベレリオル軍へと突っ込んだ。敵軍の前衛は上位冒険者部隊やあのベレル騎士団だ。

 それは少し危ないんじゃないかと、いりもしない「弟」の心配をバディオルドはする。

 仲は悪くても兄弟だ。

 兄として、弟を守らなければいけない“義務”がある。

 でも、今は戦争なのだ。多少の犠牲は仕方ない。そう考えるバディオルドだ。

 そのときはそのとき。

 バディオルドは自分の軍を見回した。

 順調に進み、もう敵軍の前衛とぶつかっている者もいる。

 そして、「うおおおお」と、叫び声を上げながら両軍が激突した。剣と剣がぶつかる金属音や、爆撃魔法などの爆発音が戦場に鳴り響く。

 バディオルドはその音を聴いて心地よいと思った。


「勝利を我らに」


 そう呟き、バディオルドは命令を下す。

 全員、全力を出せ。

 これはリオルクシの命令でもあり、彼の命令だ。

 魔王軍はさらに士気を高め、勢いが増していく。


 ◇◆◇


 そろそろ始まる……かな。

 今日午前七時頃、魔王軍に動きが確認された。

 敵軍隊がまたも進軍準備を始めたのだ。その速報はすぐに放送され、俺たち上位冒険者部隊にも届いた。

 それを聞いた者達は、一斉に準備を始める。こちらも魔王軍に引きをとらない。

 俺はそんな上位冒険者部隊のやる気に気圧された。やれやれと思いつつ、俺も準備を進める。

 まず、張っていたテントを片付け、装備を着用。この装備は、買ってからあまり時間が経っていないが、もうすっきり馴染んでいる。それと、武器も。

 俺の「メイシェル」だが、試しに使ってみると、とんでもない威力だった。精霊魔法も使えるようになったし、前まで使っていた杖とは比にならない程だ。これなら、魔王へと覚醒したシラスでさえも倒せそうな気がした。

 俺とよく合うので、これからも愛用しようと思う。

 でも、正直に本当のことを言うと、俺は杖が嫌いだ。邪魔だ。

 理由は簡単。俺は魔王だった時、杖を使っていなかったから。そのため、いざ杖を使うとなると、これが意外と重くて邪魔なんだ。

 そもそも、人間は魔人や魔族と違って体内から直接魔法を放つことが出来ない。一部の例外を除いて。

 だから、人間はその身の奥底に宿る魔力エネルギーを杖に還元して魔法として放つのだ。

 ほんと、面倒である。俺が魔王だった時は簡単に手のひらからぽんぽんと魔法を放てたのに。

 だが、今は違う。邪魔でもなんでも使わなくてはいけないのだ。

 さて、これで準備完了かな。

 俺はルリオ達を確認する。レリアもラアも準備万端そうだ。なんか、ラアは元気なさそうな顔をしているけど……大丈夫そうかな? せっかくの美貌が台無しだよ。

 まあとりあえず、そういう心配は後でするとして。

 俺は眼を凝らしてこちらへ向かってきている魔王軍を探した。

 見渡す限りの大草原。しかし、これは戦場だ。空気は静かで重い。

 風は戦場の雰囲気を作るため、激しく吹き荒れている。

 そこに、うるさい足音を鳴り響かせ、近づいてくる集団が。


「来たか……」


「だな」


 ルリオも気を引き締めて、先を見据えている。その拳は愛剣の「聖勇幻剣イリージェン」を力強く握っている。

 俺もふぅと、大きな息を吐く。

 魔王軍はどんどん近づいてくる。とんでもないスピードで走ってきている。


「全軍、進めぇぇぇ!!」


 俺たちも、その力強い命令で動き出す。

 ベレル騎士団と上位冒険者部隊を先頭に、魔王軍へと走り出した。


「「うおおおおおおおおっ!!!」」


 上位冒険者部隊の猛者達は、これでもかと雄叫びを上げ、俺が先頭だと言わんばかりに突っ込んでいく。

 ベレル騎士団の精鋭達も同じだ。冷静さを保っているように振る舞っておいて、実はずっとうずうずしていたのだ。

 俺もその後ろをついていった。

 そして、魔王軍とベレリオル軍が激突する。

 剣と剣がぶつかる金属音や、爆撃魔法などの爆発音が戦場に鳴り響く。

 俺はそれに気圧されずに、魔法を放っている者達と並んで爆撃魔法を放った。俺のは周りのやつとは比にならない威力のものを放っていた。

 それは、魔王軍の前衛に大ダメージを与えた。しかし、魔王軍だって負けてはいられない。突然、敵のボスなのか確認は出来ないが、何者かの命令が下されたのだ。


「全力を出せ」


 と。その瞬間、魔王軍に変化が見られた。前衛の魔物達は、メキメキと身体強化をしたのだ。

 肉体がまるで鎧のように硬くなり、攻撃力も格段に上昇していた。

 魔物達には、鬼や豚や猫や犬、ゴブリンやゴーレム、悪魔、魔人、天使など、様々な種族がいた。しかも、その全てが人型だった。それは、その者達がずば抜けて強いことを物語っている。

 これは面倒だと思ったもんだ。

 


 ───まぁでも、そんなのはどうでもいい。それよりも気になったことがある。

 ラアの様子が明らかに変なのだ。確かに、様子がおかしいとは思ってた。だけど、それは単なる緊張とか、恐れとか、疲れとかかと思ってた。

 そんな考え方が甘かったと、俺はこの後すぐに思い知ることになる。


 最後までお読みいただきありがとうございます。


 さて、やっとというかもう? 10話をお届けします。

 最新作でありながら、我ながら傑作と思っているこの作品ですが、ついに10話です。

 僕の学校では修学旅行の準備が着々と進んでおり、小説を書いている時間がなかったので、つい最近まではずっと放置状態でした。


「これはいけるぞ!」


 というふとした自信によって書き上げた最新作ですが、これもまた続くのか……大体の物語構成はできているんですけどね……!

 あと、他の二つの作品も書き上げなければいけないから……いけるか少し不安があります。でも、必ず完結して見せます!!!

 他の二つの作品も読んで頂けると嬉しいです。

 その内のひとつはそろそろ完結かも…?

 そっちも頑張るとして、こっちですね! 何度も言いますけど、傑作です。多分。

 思い込みかもしれないけど、傑作ですね。なので、僕としては今まで以上に頑張りたいと思っています。


 どうかよろしくお願いします。


 ブックマークと評価もよろしくお願いします。

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