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魔王、勇者に討伐される


「魔王リオルクシ!!! お前はここで終わりだっ!!!」


 冒険者パーティー「フェロス」のリーダー、勇者ルリオは光剣ライトソードとなった細剣レイピアを構えて俺に迫ってくる。

 その後ろには魔法使いの女、レリアと、男のウォスがいる。

 やばい、まじでやばい。

 幹部も護衛も側近も全員やられた。あとは俺だけ、そしてもう俺は満身創痍な状態だった。

 目の前に勇者ルリオが迫った。

 だが、俺としてはここで死ぬわけにはいかない……


「うおおおっ!」


 もちろん、勝算は無い。

 だから撤退を考えた。この一瞬で、逃亡できるルートや方法を思案する。

 そのために、まずは目くらましとして、俺は最後の力を振り絞って右拳に残った全魔力を集中させ、ここ一帯全てを破壊できる程の威力を持った爆撃魔法を放とうとした。


 ───しかし、ルリオが繰り出した攻撃の方が速く、俺は魔法を放つこともできずにルリオの攻撃をまともに喰らった。

 俺の右肩から光線のような剣が入り、そのまま体を両断された。そこから黒い血が吹き出る。

 それをルリオはサッと避けて、距離をとってからまた俺に近づいてきた。

 後ろから魔法使いのレリアとウォスもやって来る。

 あぁ、二万年の努力が水の泡に………

 俺は勝ち誇って満足気なルリオに見下ろされた。負けたのか……俺はなんて無様なんだ。ミニシャの報復ができなかった……俺は……

 もう勇者にんげんの顔なんか見たくない。

 俺は散っていく自分の体を見つめた。

 ルリオの最後の攻撃で魂も砕かれた。これでは魂の移転での復活は望めない。

 だから俺は、生まれ変わったらまた魔王になって、今度こそ世界を滅ぼそうと誓った。

 そして俺の視界が真っ暗になった。

 勇者が魔王リオルクシを倒したことは、すぐに世界中に広まった。二万年もの間、人間を恐怖に陥れた闇は、この世から消え、平和が訪れた………

 そして、魔王の身体は光の粒子となって消滅した。




 が、その「魔王」は、思わぬ形で復活を遂げるのであった───



 ん、あれ?

 俺はさっき、確かに死んだはずなのに。

 力が出ないけど生きてる?いや、天国か?

 白いもふもふしたベッドで寝かされているな。

 急に視界が真っ暗になって、次もまた魔王に生まれようとか思ってたら……うっ、人間臭いぞここ! おいおい、まさかだが人間に捕まったとかじゃあないよな?何かの実験台にされるとか?

 さすがにないよな。でも、体も感覚も元に戻っている。

 じゃあ、ここはどこだ?

 俺は自分がいた部屋を見回した。薄暗く見えづらいが、知らない部屋だ。

 狭い、小さい、居心地が悪い。汚い、臭い。まるで牢屋じゃないか。

 てことは、本当に俺は人間に捕まったってことか?力を吸いとられて体は元に戻って……いやいや、ないない、落ち着け、なんか変だぞ俺。

 ていうか、なんか服がさっきまで着ていたのと違うぞ。

 黒いスーツに黒いドードルの毛皮の厚靴だったはずだが………なんだこれ。

 白いシャツにぼろぼろの短いパンツ。庶民臭い服装だ。

 そうそう、ちなみに俺は魔王だ。世界最強と恐れられた………じゃなくて、今はどうでもいい。とりあえずここから脱出することにしよう。

 俺は部屋の右隅にあったドアに手を掛けて、そのまま押し開けた。

 外は廊下になっていた。今いた部屋同様、明かりがついていなくて薄暗く、先はよく見えない。

 俺は廊下の壁に身を寄せながら、まっすぐ進んでいった。

 すると…

 ゴンッ


「いって…」


 目の前に立ちふさがった壁に頭をぶつけた。

 その時に思わず声が漏れた。てか、この声なんかおかしい。

 俺の声じゃない。

 知らない男の声だ。

 それから俺はまた急いで先を進んだ。

 すると、また新しいドアにぶつかった。

 とりあえず入ってみよう。

 恐る恐るドアを押すと、ぎぃぃと、古くさい掠れた音がなった。

 そこは、見た感じ洗面所になっていた。一つの鏡があり、そのすぐそばには水道もある。

 この部屋はかなり湿っているな。さっき使われたのだろうか?

 水道は小さいし、汚い。

 俺は我慢して、顔が気になったのでとりあえず鏡を覗いた。


 そこには、俺じゃない、知らないけどどこか見覚えのある男が立っていた。しかも、「人間」だ。


「うおわっ!?」


 俺はまた驚きで思わず声が漏れた。

 やばい、これでもし他にも誰かいたらどうしようと思い、俺は慌てて口を押さえた。

 これで理解した。完全に理解した。

 俺は、夢でもない、人間に捕まったわけでもない、そう……人間に転生した。

 うーん、よく見るとイケメン……だな。年齢は…大人か青年くらいで、まだまだ若そうだ。


 ◆


 それから夜中、簡単に探る程度で部屋内や、外に出てみたりして少しだけ調べたんだが、いろんなことが分かった。

 まず、ここは人間の王国、ベレリオルの住宅地の一軒家で、なんと……この男(転生体)の彼女と同居中だった。

 彼女の名はリュミリー。

 リュミリーは俺が目覚めた部屋の隣の部屋にいた。超美人で、胸も大きく膨れ上がっていて、魅力的だった。

 だから俺は魅了されて少し体が引っ張られたが、さすがに俺が転生した男の知らん彼女にいきなり襲いかかるわけにはいかない。なので、ここはなんとか本能に抗って我慢した。


 まるで、昔の───


 その後、さらに最初いた部屋を漁るように調べると、最悪なことが分かった。

 俺が転生した体のこの男の正体は、有名な……元俺、魔王リオルクシを討伐することを目指す、というかもう一度討伐した勇者ルリオのパーティーメンバーだった!

 しかも、ここは過去だ! 俺は、あの魔法使いウォスに転生したんだ!

 それも、かなり前だ。俺を倒しに来る時じゃなく、まだこいつらがパーティーを組始めて数年か数ヶ月が経った頃だ。


 翌日。

 俺はとりあえず、何も考えずに落ち着いてベッドで寝て、朝を迎えた。

 部屋を出ると、薄暗かった廊下は陽の光が窓から差し込み、ギンギラと照らされて明るかった。

 床は茶褐色をしている。昨日は分からなかったが、つるつると滑るな。

 俺が部屋を出た後に、()()()の彼女であるリュミリーが、大きく伸びをしながら部屋から出てきた。


「おはようウォス……んんー!」


 彼女はあくびをしながら言うと、俺を見て部屋から出て来た。

 えっとー、どう接すればいいんだ?こいつと話すのは初めて……ウォスの性格が分からんが……とりあえず


「おはよう」


 と返した。

 するとリュミリーはにっこり笑って俺の横を通り、先にキッチンへと向かった。

 で、俺はこれからどうする?とりあえずついていって、朝御飯食べるか…。

 といろいろ考えながらも、俺もキッチンへ行き、そこにあった机にかけてある二つの椅子の一つに座った。


「今作るから待っててー」


 リュミリーはまたにっこり笑った。それから朝御飯の準備を始めた。

 やっぱりこいつは可愛い。ちょっと抱きついてみたいな? 俺はそう期待を胸に抱きながら、夢を見る。

 朝御飯が出来るまで待っている間、俺はぼーっとしていた。たまにリュミリーの料理をちらちらと見たりしながら。

 これはパンだな。

 リュミリーが炎魔法ファイアで火をつけて、その上に鉄板を置き、その上にパンを置いて焼いている。

 いい感じに焦げてきているな。

 すると、リュミリーは氷箱れいぞうこからヴァターを取り出し、それをパンにのせた。

 すると、ヴァターは一瞬にして溶けていき、パンにべたりとくっついた。

 庶民の朝飯ではあるが、このヴァターはかなり上品だ。香ばしい匂いがして、味もしっかりしている。一応高級品だからな。

 俺が転生する前も、毎朝パンに塗って食べたものだ。


「出来たよ!」


 するとリュミリーは焼き上がった二つのパンを俺に見せつけて、皿にのせた。

 それを机にのせてくれた。


「いただきます」

 

 俺とリュミリーは一緒に手を合わせて言い、早速パンを手に持った。そしてそのまま頬張る。

 う、美味いっ! なんだこれ、こんな美味しいパンを食べたことはないぞっ!?

 リュミリー、お前は何者だ?

 俺はリュミリーを少し鋭い目で睨みながら思った。

 かりっとした食感にヴァターの甘い味が合わさってー……


 ここまではなんとか流したが、これからが気まずい。話すことがない。

 俺は静かにパンを食べていた。リュミリーも。

 しばらく沈黙が続いてしまったが、リュミリーが先に話しかけてくれた。


「ちゃんと眠れた? 顔は洗った? 今日も旅に出るの?」


 旅?あっ、そっか、俺は冒険者ウォスか。

 というかウォスお前、彼女にめちゃくちゃ面倒見てもらってるんだな?

 そんなのはどうでもいいとして、ちゃんと眠ったし、顔は洗ってない!


「う、うんしっかり」


「そう、気をつけてね。また元気に帰ってきてね」


 と言われて俺は嬉しくなってついにこっと笑ってしまった。

 それを見てリュミリーも笑った。


「じゃあ、頑張って。帰ってきたらご褒美を用意しちゃうわ!」


「ほ、本当か?」


「ふふーん、まあね」


 俺はご褒美とやらがなにかを考え始めた。また美味しい料理とか? いやいや、まさかのキスとか?

 さすがにないか。俺は上がっていた肩を下ろした。

 今更だけど、俺、意外とリュミリーと話せている? ウォスを演じられているのか? なんか変に感づかれたりとかしてないよな?

 俺はリュミリーを見る。にこにこしながらパンを食べているの彼女を姿を見て、少しほっと安心した。

 大丈夫、だよな。

 うん、大丈夫だ。いける。

 だが、変なことをすれば一貫の終わりだ。例えば、いきなり勇者でパーティーメンバーであるルリオを殺して、俺暴走! なんてしたら、速攻で新人生終了だ。

 それはさすがに馬鹿すぎるな。むしろネタでしかない。バカすぎる。

 考えただけでも怖いな。というか、ばれただけで終わりだ。

 これからはかなり大変になるぞ。

 とりあえず旅をして、魔王討伐を目指しつつも、途中で罠にはめて、ルリオとレリアは死んだということにすれば………結構大胆な作戦だが、俺ならいけるな。

 俺はにやっと笑みを浮かべた。

 さぁ、俺討伐の旅へ出るとしようか! 

 最後までお読みいただきありがとうございます。

 今回は全力で、100万文字目指して頑張りますので、応援、ブックマーク登録、評価よろしくお願いします。




 せめて6話まで読んでネ!!!

(そこから面白いから! 続きが気になると思います!)

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