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手相眼鏡士三坂ツノリの物語  作者: 辛一無理
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第四話: 変わる風、変わる自分

日の暮れが近づいた頃、店の扉がゆっくりと開かれる。入ってきたのは、ぼろぼろの服を着た30代の男性だった。彼の手には、壊れてしまった眼鏡が握られていた。


ツノリは彼のその様子を見て、なにか背負っているものを感じ取った。穏やかに声をかける。「大変でしたね。どうしましたか?」


男性は少し戸惑ったように顔を上げたが、ツノリの優しい眼差しに心を開き、「失業して、生活が困窮してきて…そして今日、眼鏡まで壊れてしまい…」と切なげに語り始めた。


ツノリは黙って彼の話を聞き、その後彼の手を取り、手相を見る。「この線からは、辛い経験を乗り越える強さがありますね。そして、あなたは新しい道を歩むための勇気も持っています。」


玉結は男性の顔をじっくりと見つめ、何かを感じ取ったように「新しい未来には新しい眼鏡が必要です」と、今までとは全く違うデザインの眼鏡を彼に持ってきた。


羅月が検査を始め、新しい度数に合わせて眼鏡を調整していく。羅月は階段を上り男性を2階の検査室に連れて行った。そこには特殊なレンズから強度用レンズまでたくさんのレンズが並べられている。


検眼が終った羅月がツノリに男性が強度近視だと報告する。


玉結が選んだフレームは強度近視にはぴったりのデザインだった。ツノリは加工室に入り加工機を回す。ツンとした匂いとともに加工音が店内に鳴り出した。


―――――――男性は新しい眼鏡を掛けると、世界が明るく鮮明に映る。


「ありがとう」と、彼は涙ぐみながら三人に感謝の言葉を述べた。


一か月後、店の扉が開くと、その男性が明るい笑顔で再び店を訪れた。「おかげさまで、新しい仕事に就くことができました。そして、この眼鏡は自分の新しいスタートの象徴となりました。これも真剣に私に合う眼鏡を選んで頂き、しっかりした検査と心配りのある対応をしてくれたおかげだと思っています。」


ツノリたちも彼の自信に満ちた姿に心からの喜びを感じ、「これからもその眼鏡を通して、明るい未来を見続けてください」と、微笑みながら送り出した。


さあ今日は特別な日です。店を閉めましょう。


「玉結、羅月。今月溜まった【幸福感】をあの方に届ける日です。」玉結と羅月の背中には黒い羽根が犬の尻尾のように振られていた。


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