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手相眼鏡士三坂ツノリの物語  作者: 辛一無理
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第二話: 役割と変容のメガネ

店の扉が静かに開き、風鈴の優雅な音が響く。それは三坂ツノリにとって、新たな人生の物語が始まるサインだった。


「こんにちは、あの、こちらのブログを拝見して…」と、中年の男が照れくさい様子で言った。


玉結は彼の言葉を受けて明るく笑顔で迎え入れた。「いらっしゃいませ!ブログをご覧いただきありがとうございます。どのようなご相談でしょうか?」


男は眼鏡を指差しながら、「最近見えにくくなって、でもただ度数だけでなく、自分に合ったものを…」と言葉を探る。


玉結は店の奥にある高級感のある椅子に客を案内する。ツノリは彼の手を取りながら、「まずは手相から、あなたの心の中を見せていただけますか?」と優しく語りかける。この奇妙な提案に、男は少し驚くが、ブログに書いていた内容を思い出しはにかんだ。そして男はツノリの誠実な眼差しに心を開いて手を差し出す。


彼の手相をなぞりながら、ツノリは「この線…あなたはまだ見ぬ景色や出会いを待っていますね。新しいメガネは、その新しい未来を見るための相方となるでしょう」と微笑む。


玉結は男の好みや顔の形を見ながら、いくつかのフレームを選び出して提案する。彼女の人当たりの良さと、細やかな気配りに、男は徐々にリラックスしている。


その後、羅月は精密な検眼を行う。彼女のその強みは、検眼技術もさることながら被検者の心理も測れる異能によるものでお店の強みとなっていた。


羅月の検査結果と報告からツノリは店奥の加工機を稼働させると店内にレンズを削る加工音が心地よく響く。


ツノリは彼に新しい眼鏡を手渡すと、「このメガネが、あなたの新しい人生の扉を開ける鍵となることを願っています」と告げる。


新しい眼鏡を掛け鏡を見ている男の横顔には自信が漲っていた。男は自分に合った、そして未来に繋がるメガネを手に入れることができたのだ。


店を出る時の人間の晴れ晴れとした笑顔をみてツノリは胸の中に幸せがたまっていくのを感じ、幸福感に包まれた。


その後ろ姿を見ながら、ツノリと彼の助手たちは再び、次の客を待ち続ける。


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