表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/64

首は躍る 6




 夜道に。

 先ほどまで善三と話していた美女が立っている。

 猫目に涙黒子の──百花である。

 その隣には、やはり先ほどの笠をかぶった坊主。

 坊主は大きな杖を楽しげに振りまわしては、軽快な足取りで百花の周りを行ったり来たりしている。



「へへ、うまくいったね! さすがは百花姐さん」


「あんたもなかなかのもんだったよ」


「誠二郎の姿があそこまで効くとはねぇ」



 言いながら大きな笠を取り、坊主の格好をした銀狐はニカリと笑う。老爺ではなく、二十かそこらの若者である。

 それを見て、百花はちょっとあきれたように息をついた。



「よくもまぁ、そうコロコロと顔が変わるね。見ているこっちは気味が悪いよ」


「そりゃひどい言い草だ。百花だってコロコロ変わるじゃんか」


「あたいは化粧と演技だもの。化け狐と一緒にされちゃかなわないわ」


「おいらにとっちゃ、化けるのなんて朝飯前さ。そっちこそ人間の癖に変化するんだからおっかないや」


「あんたも口が減らないねぇ」



 そんなことを話していると、道の向こうから黒塗りの駕籠がやって来た。駕籠を担いだ与吉と六助が、いつもの通り顔色ひとつ変えず走ってくる。



「大将のおでましだぃ」



 銀狐はひゅるりと口笛を吹いた。

 二人の前で駕籠は止まる。小窓が開いて黒埜が顔を覗かせた。



「……どうだった」


「万事うまくいきましたわ、夜一郎様」


「御苦労だった」


「いえ」



 百花は恥じらうように肩を縮めて、頬をほんのりと染める。



「あ、夜一郎! おいらも! おいらのことも労ってくれよぅ」


「お前は誠二郎を逃がしたからな。これで帳消しだ」


「……ちぇっ」



 雲間から、すぅと十六夜の月が顔を覗かせる。

 月光は彼らを青く照らした。



「これでようやく手札が……そろったな」



 黒埜の眼が獲物を捕らえたように光る。

 そのあやかしのごとき美しさを、百花はぞくりとしながら見つめていた。




ブックマーク、☆で応援いただけると励みになります!

WEBTOONコミック版→https://www.cmoa.jp/title/270928/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ