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【意味がわかると怖い話】 母の日と娘

夫とは子供が幼いころに離婚し、一人娘を20年間育て上げた。


幼心に色々と苦しかったこともあったと思う。

それでも、私に気を使って自分の事は自分でやり

私を困らせるような事はしなかった。


反抗期などもあった。

高校の時は幼少時と打って変わって随分と手を煩わせた



だが、最期には

「ごめんね、お母さん」


と言って仲直りのきっかけを作ってくれたのは

娘だった。



子どもには随分と苦労を掛けた。

私が育てている様で、逆に気づかされる事も多かった。



娘が二十歳になり、一人暮らしをしたいと言い

東京へ引っ越した。

なにか心にぽっかりと穴が空いたような気分だったが

そのあとすぐに、娘は私の心を埋めてくれた。



「一緒にオンラインゲームやろうよ」



オンラインゲーム?なんだろう。今までゲームなどやったことが無かった私に

娘は色々と教えてくれた。

娘を育てる事以外に余裕を持たなかった私は、電脳の世界の楽しさに夢中になった。

もちろん、娘とも殆ど毎日ゲーム内で顔を合わせた。



しかし、突然の娘からの相談に、私は戸惑いと不安を怒りとしてぶつけてしまった。


「私、アメリカに行く、いいよね?」


聞けば、ネットで知り合ったアメリカ人と意気投合し、少し前から付き合っているらしい。

来年からアメリカで暮らすという。

毎年の母の日のプレゼント、カーネーションを渡しながら私に報告をしてきたのだ。



私は断固反対した。心配だったからだ。



しかし、娘も絶対に譲らず、ケンカになった。

その日から、娘とは連絡が取れず、オンラインゲームにも来なくなってしまった。



反対するべきではなかっただろうか。

快く送り出してあげるべきだったろうか。

色々な葛藤を抱えながら、1年が過ぎたある日

アメリカ人の男から連絡が来た。



「娘さんが入院しています。もう・・・長くは無いと思います」



心臓が凍りつくとはこのことだろうか。

すぐに男が言っていた病院の一室へ行くと

管で繋がれた娘が変わり果てた姿で横になっていた。



「ごめんなさい、僕が原因でこんなことに」



流暢な日本語だった。

聞けば、1年前、恐らく私とケンカをしたその日位だろうか

車にはねられて、病院に運ばれたのだという。



「心配するからお母さんには言わないで」

そういっていたが、半年前からは意識も失い

医者からは余命幾ばくも無いだろうと言われたらしい。



私は泣き崩れた。

男は悪くない、理解はしていたが、男にも悪態をついた。



帰宅してからもずっと泣いた。

自分の言った言動を悔いた。

全部オンラインゲームせいだ。

全てを何かのせいにして、自分の過ちに気が付かないようにした。

消してやる。


データを全て消そうとして

オンラインゲームを立ち上げたとき

通知が届いていた。


「ごめんね、お母さん」


カーネーションのデザインで。

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