【意味怖】銀河鉄道旅行
今日はやっと卒業旅行だ。感染症も5類になって、私たちの代は旅行解禁!楽しみにしてきたこの日のために、友達と一緒に特急券を買っておいた。駅に着くと、ホームには銀色の新型車両が停まっていた。車内は広くて快適そうだ。
「かっこいい!早く乗ろう!」
「うん」
友達と席を確認して、荷物を置いて座る。
窓から外を見ると、青空が広がっていた。
これからどんな景色が見られるのだろうかとワクワクした。
そこへ、車掌さんがアナウンスが響いた。
「ただいま発車いたします。この列車は銀河鉄道です。目的地は天国です。」
えっ?銀河鉄道?天国?なんの冗談かしら。
友達も同じように顔を見合わせた。
でも、列車は動き出した。
スピードがだんだん上がって、窓から見える景色も変わっていった。町や田園や山や海が次々と流れていく。それらはどれも美しくて、まるで絵本の中のようだった。
しばらくすると、列車は暗闇に入った。トンネルかと思ったが、長く続く。窓からは何も見えなくなった。友達と話そうとしたが、声が出なかった。
耳元で囁く声がした。「あなたは死んでいます。この列車は死者を運ぶ列車です。あなたは事故で亡くなりました。」
驚いて振り返ると、そこには白い顔をした女性が座っていた。
アズラエルと言うらしい。
彼女は微笑んで言った。
「心配しないでください。あなたは幸せになれます。天国は素晴らしい場所です。私もそこへ行きます。一緒に行きましょう。」
私は信じられなかった。事故で死んだなんて、ありえないと思った。でも、思い出すと、朝に家を出る前に母親に「気をつけてね」と言われたことや、駅に向かう途中で赤信号を無視して横断したことや、その時に後ろからクラクションの音が聞こえたことや、それから何も覚えていないこと。
すべてが真実だったのだと気づいた。
涙があふれてきた。友達も同じだった。
私達は抱き合って泣いた。
お互いに「ごめんなさい」「許して」「さようなら」と言い合った。
列車は暗闇を走り続けた。
やがて、窓から白い光が差し込んできて止まった。
また、車掌さんがアナウンスが響く。
「ただいま到着いたしました。この列車は銀河鉄道です。目的地は天国です。」
扉が開き私達は立ち上がった。
手をつないで、列車を降りた。
そこは、銀河の中にある白い駅だった。
駅には、私達以外にもたくさんの人がいた。
みんな笑顔で迎えてくれた。
「ようこそ」
「おめでとう」
「幸せになってね」
私達は、銀河鉄道に乗って、死の世界へと旅立っていたのだ。
カチャカチャ
ピー…
「よし。成功だ。」
厳重に管理された真っ白い研究室の一角
扉の前にはネームタグが貼ってあった。
フルダイブVRシステム研究開発室




