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【意味怖】指輪
思い出すのはあの夏の日。
偶然君を見かけてしまった。
あの日から、僕は君の事が頭から離れなくなったんだ。
来る日も来る日も、君を探し、ついに見つけた。
君はとぼけていたのか、それとも確信犯なのか解らないけど
「初めまして」
の挨拶をしたときに、少し警戒をしながらも
「初めまして」
と挨拶を返してくれた。
とまどったのは君だけじゃない。
僕だってとまどっていたんだ。
あぁ、この狂おしい程の気持ち。
これは、恋なのだろうか。
どうか、この狂おしい程の恋がどうか実りますように。
本当の僕を愛してくれますように。
月日を重ねてようやくここまで来たね。
「さぁ、手を出して」
彼女の左手をとり、その薬指に指輪をはめる。
「嬉しい。でも、あれ?これ…私の父の指輪じゃ…どうしてあなたが?」
彼女の顔がみるみるうちに曇っていく。
「なんだ、知らなかったのか。」




