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2 助けてくれた子は、むかしむかしに助けた子でした。

「ギルドのために尽くしてきたのに、どうしてだよコーク! 昔はみんなで……」


 今の立場上で考えると、コークは上司でオレは下っ端ではある。でも昔は、そこらへんにいるようなパーティだった。オレとコーク、そして手を切ってきたガーネット、ヒールをかけてきたレイナーで組んでいた幼なじみパーティ。

 現状は、コークをトップとしたギルドで副リーダーはガーネット、レイナーになっている。彼らと違い、平々凡々なオレは創設メンバーながらも下っ端だが。


「ギルド時代は楽しくなかったけど、泥と汗の日々だったパーティは充実してたな……ハハッ、今も泥にまみれているか」


 田舎ギルドに所属して、誰も選ばないようなクエストを取って……お金がないから、4人で1つの部屋にして……良い環境じゃなかった、でも良い日々だった。

 ひとりでに流れた涙が泥に落ちた。顔を洗える水を探そうか……



 水を探しに歩いているけど、一体ここはどこなんだ? 道は舗装はされていないけど、人が歩くのか雑草は生えていない。だけど、周りにある住宅は崩壊しており人気(ひとけ)がない。災害や魔物の影響だろうか。


「……あった、川だ。澄んでいて綺麗だ」


 泥を落とすだけに用いるのが、億劫になるほど綺麗な川。サンサンと降り注ぐ太陽が反射して、今まで見たことのない幻想的だ。オレなんかが使うなんてもったいない。

 バシャバシャと音を立てながら顔を洗った。川がオレの顔を反射している。隈と無精ひげが印象的で、見た目を気にしていないとハッキリ分かる。


「あれ!? もしかして、『香月パーティ』のジャドさんですか!?」


 後ろから耳に覚えのない甲高い声が響いた。確認しようと振り返ると、その声の持ち主が抱きついてくる。いや、おい! このままだと川に落ちる……落ちた。

 しかし誰だ、この女の子。オレを名前で呼ぶなんて数えるほどしかいない。ガーネットもレイナーも、いつからか呼んでくれなくなったし。


「冷た……って誰だ? 君?」


「えっと、昔にジャドさんたちに助けられたんですけど、覚えていないですか? この村……『ツークンフト』で魔物大量発生ってクエストのときの」


 ()()()()()()()……コークたちとパーティ組んでいたときか。ギルド時代だと、ソロ活動しかしていないから20年も前の話か……

 そういえば昔、目の前の子と似たような赤髪の少女を助けた気がする。ほぼコークが助けたようなもんだけど。


「あぁ、なんとなく覚えているな……この様子だと、また魔物がやってきたのか? かなり崩壊しているが」


「それはですね……あ! そうだ、服を乾かすついでに家に来て下さい! 詳しいことも話します!」


 そう言うと、浅い川に落ちていたオレの手を取り連れ出した。……とんだじゃじゃ娘だな。お前のせいで濡れているというのに。

 それにこの村、一応人が住んでいるのか……蔦とかが家を縛っているのを見ると、人がいなくなって年月が経っているように思えるけど。



 人が歩くべきでない、道なき道の先には小さな住宅が何件あった。壊れてるわけでないけど、なんというか素人が立てたような危うさが見える……そのうち勝手に壊れそうだ。

 すると女の子は、ピンと指を家に指し声たかだかに宣言した。


「今はここがツークンフト村! 住民は4人くらいで、頑張っている! さあ、中にどうぞ!」


 中も予想通り、ボロボロな状態だ。本職は大工ではないけど、いろんなクエストをやっている内に覚えた知識もある。例えば、家には柱が重要とかだ。ただ……この家は大黒柱なるものが見えないけれど。


「あれ、ジャドさんって『クリーン魔法』使える? 私はできるけど」


 クリーン魔法……応用魔法の基本の技だ。風と火を組み合わせて、発動できる魔法。オレは基礎魔法しか使えず、応用まではできない。

 ……2番目にたどり着いた村で教えられたけど、まったく覚えられなかったなぁ。コークたちから、かるーくバカにされた記憶がある。


「いや使えないな。頼むよ」


「へへ、分かりました。いや~助けられる側だったのに、ジャドさんを助けることができて嬉しいです! 魔法さまさまですね!」


 はぁ……抱きつかれなきゃ濡れなかったんだけどな。ぶり返したら、またやいの言われそうだしやめておくけど。

 コークたちとは幼なじみで、コークは勇者、ガーネットは戦士、レイナーは僧侶、オレは魔法使いモドキ。ぶっちゃけ、魔法使いの資質はこの目の前の子に負けてる。基礎魔法だけの、モドキだからな。羨ましいね。


「そうだ……なんでこの村は崩壊してるんだ? 20年前は結構栄えていた気がするんだけど」


「えーと、1か月に魔物が襲来してですね。一応、香月ギルドにも依頼出してたんですけどね」


 オレが知らなかった、ということはパーティ専用の依頼だったんだろう……なんだかやるせないな。


「……香月のメンバーはどうしたんですか? 前は4人で来てた記憶なんですけど」


「あー休養みたいなもんだよ。ソロで旅って感じ」

 

 パーティどころか、香月ギルドから脱退だけどな……無駄なプライドが邪魔して言えない……


 










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