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コンビニ

 堂島は後部座席に乗せられて、北上の運転で警視庁に向かっていた。

「あの、喉乾いたんですが」

「着いたらお茶でも水でも出してやる」

「さっきのコーヒー・フロートも飲んでないんです。不当拘留で訴えますよ」

 北上は怒りを抑えながら、コンビニに車をとめた。

 スマフォから顔をあげ、コンビニを確認すると、堂島は言った。

「あっ、僕の好みを知ってたんですか?」

「なんのことだ」

 ルームミラー越しに堂島を見る北上に、堂島は笑顔を見せる。

「このコンビニですよ。ここ作ってくれるタイプのスイーツが美味しくて」

「良いから、早く買ってくれ」

 車から降りコンビニに入ろうとして立ち止まった。そしてそのまま堂島が戻ってくる。

「一緒に来てください。ちょっとヤバイやつがいる」

「はぁ?」

「……結構緊急度高いです」

 北上は急に顔色を変えて車から降りてくる。 

 コンビニに入ると、堂島はレジ上にあるコンビニスイーツのメニューを見ながらどれにしようか選んでいる。

「お、おい。ヤバイんじゃなかったのか?」

 堂島は急に大声で北上に返す。

「マジヤバは、このマンゴーパフェっす」

 堂島はそのまま注文して、会計の際に北上を呼ぶ。

 北上の交通系ICカードで支払うと、堂島はニコニコしながらパフェが出てくるのを待っていた。

「おい、さっきの話……」

 堂島の顔が急に真剣になり、北上は釣られて緊張した表情に変わった。

「今、死角にいるので急いで。イートインコーナーに隠れて」

 北上が言われた通り、音も立てずにイートインコーナーの先に隠れた。

 するとちょうどレジから呼び出しがあった。

「マンゴーパフェご注文の方」

 再び堂島は破顔して、スキップするようにレジに向かう。

「はい、はい、はい」

 北上はイートインスペースに身を隠しながら、周囲を確認していく。

 ゴルフバッグを担いだまま店内をうろうろする中年の男。リュックを前に抱えて飲み物を探しているふうの短髪の青年。黒シャツ、黒スーツにサングラスをかけ、雑誌を読んでいる光頭の男。

 わざわざゴルフバッグを担いだままコンビニをウロウロするだろうか。

 北上はまずゴルフバッグの男の顔を見た。

 細い目で北上と目が合うと、急に怯えたような顔をした。

 違うかな。北上は次に青年を見た。バッグに手を入れて何かやっているようだったが、表情からも緊張は感じられないし、不自然ではなかった。

 最後に、雑誌を読んでいるサングラスの男を見た。

 雑誌を置くとスーツの内ポケットに手を突っ込んだ。

 そしてそのまま出入口へ戻ってくる。

 北上は警戒した。

 突然の爆発音。

 コンビニの天井にたくさんの穴が開いた。

 天井のLEDライトは壊れ、かろうじてケーブルでぶら下がった。

「!」

 出入口に立っていたのは、前にリュックを抱えた青年だった。

 北上は体を隠した。

 右手に五十センチほどの筒状の武器と、左手に手榴弾のようなものを持っていた。

「はい、聞こえたかな。聞こえた人は、手を上げて、レジ奥に集まってくれるかな」

 ゴルフバッグの男、黒スーツにサングラスの男がレジ奥に移動する。

 店員は腰を抜かして、レジの向こうで座り込んでしまっていた。

「なんですか、あなたは!」

 店員が勇気を振り絞ってそう言うと、前にリュックを抱えた青年が言った。

「そう言われて、名前を明かすわけないでしょ。今から、君たちを人質にして、ここで立て篭もるんだよ。金とかが欲しいんじゃない。捕まって死刑にして欲しいんだ。だから銃を撃つのに躊躇はないよ」

「ほら、もう一人、イートインコーナーでパフェ食ってる奴も、こっちに来な」

「ちょっと待って、まだ食べ終わらないから」

「ぶっ殺すぞ。お前じゃなくて、ここにいる連中を」

 銃を向けられた黒いサングラスをした客は、慌てておにぎりの棚に背中をぶつけた。

 震えた声で、その光頭の男は言う。

「は、早くこっちに来い」

 ゴルフバッグの中年男性も言う。

「俺たちまで巻き添えになるだろ」

「美味しいよ、このパフェ。一口あげるよ」

 堂島は座ったまま言う。

 ジリジリと短髪の青年はイートインコーナーに近づく。

「……待て、もう一人いなかったか?」

 身を潜めていた北上の筋肉が強張った。

「ああ、支払いしてもらったから車に戻って行ったよ」

 堂島はソーダスプーンで駐車場の方を指して見せる。

「ほら、見えるかな? あの車」

「うるさい。いなけりゃいないで良いんだ、お前、早くこっちに来い」

 苛立った青年が堂島に向けて銃を構えた。

「!」

 再び発砲音。

 と、同時にイートインコーナーの影に隠れていた北上が飛び出した。そして、完全に青年の背後をとった。

 青年はあっというまに床に倒され、腕を後ろにねじ上げられていた。

 堂島の握っているソーダスプーンとパフェのカップが震えていた。

 それは発砲音の直前。隠れていた北上が、犯人の銃を蹴り上げた。

 蹴り上げたせいで発砲したのか? そうでなくとも発砲していたかは、わからない。けれど、そのままなら堂島は死んでいた。筒から飛び出た金属片が、壁に食い込んでいるのと同様、体に沢山穴が空いていただろう。

「殺人未遂、銃刀法違反の現行犯で逮捕だ」




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