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(仮)犯人当てを趣味にしているニートには霊視の能力がありました  作者: ゆずさくら


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内部事情

 堂島は警察を出ると、丸山に電話した。

「丸山さん、ちょっとお話が」

『取り調べ終わったの?』

「もうその情報入ってるんですか?」

 堂島は、丸山がどこかでこっちを見ているのか、と思い周りを見渡す。

 警察を出入りする中で見知った顔が見えた。

『警察出たばかり? あなた、多分つけられているわよ』

「マジですか」

 その見知った顔の男が、多分そうだろう。

『一番、人が乗り込みそうな路線がいいわね。じゃあ、S谷のxxで。こっちは五分ぐらいで着くわ』

「はい、詳細はLINKにください」

 そう言って、スマフォを切るとなるべく人の流れが多い通りを選んで歩いた。

 地下鉄のホームに下りていくと、最後の数歩を急足で歩き、柱の影に入る。

 電車に乗ったか、乗っていないかが、相手の死角になって見えないはずだ。

 ギリギリのタイミングまで相手の様子を伺って、油断していると判断した堂島は、閉まり掛けた電車に飛び乗った。

 ホームの柱でハッキリと確認はできないが、つけている男を置き去りにできたはずだ。

 堂島はLINKを確認して、待ち合わせ場所を知る。

 S谷の今の乗降客なら、普通に歩いても撒けるだろう。

 完全に撒いたのを確認して待ち合わせ場所に入った。

 席に着くと、丸山の横に、いつもの黄色いジャージの梁巣がいた。

「災難だったな」

「梁巣さん、雰囲気が少し変わりました?」

「俺の『成長』がわかるのか」

 そう言うと、梁巣は腰に手を当てて胸を張る。梁巣は漫画のキャラクターのようにバカで陽気だ。

「成長かは分からないですが、今までと違うのはわかります」

 丸山が二人を制して言った。

「まあ、そういうのも含めて、まずは飲むなり、食べるなりしてから話にしましょうか」

 三人は注文して、一通り飲み食いして腹を満たすと、丸山が切り出した。

「ウチも曲がりなりにもマスコミなので、警察の担当からある程度情報が入ってくるの」

 と、丸山はスマフォを見ながら話し始めた。

「今、角田議員は保守党の党首選に立候補するために、警察がSPをつけているらしいわ。保守党の党首になれば、イコール総理大臣なんだから、そりゃ当然よね」

 丸山は堂島が理解しているのか、確認してから続ける。

「ここからは推測が入るんだけど、警察関係者から角田に、坂田の件を堂島くん、あなたと北上さんが組んで捜査している情報がバレたんじゃないかしら」

「……」

「坂田が首相になってしまえば、もっとそういう情報にアクセスしやすくなるでしょうね。そう考えるとここから先、私たちが警察と組むのは得策じゃないのかも」

 堂島は反論する。

「けど、僕たちは犯人を逮捕できるわけじゃないし、事前に犯行を阻止できないし」

「サクラ教団から出てくる、危険な霊がついている相手を見つけて、端から除霊するとか?」

 梁巣は言う。

「面白そうだな。現代版の辻斬りと言ったところか」

「危険だし、無理だよ。いつ現れるか分からないんだし、万一、角田本人が来たら、返り討ちにあうよ」

「さっきお前は雰囲気が変わった、と言ったろう? 俺は強くなっている」

 梁巣はテーブルに肘をつき、手を顔の前で組んでいる。

「丸山さんのお陰だ。俺が出しうる力を出し切れば、それに見合ったものが返ってくる。お前の親戚の藤井も、何度か来て、強くなって帰っている」

「藤井さんも?」

 すると丸山が答える。

「そうよぉ。二人も相手をするのは大変なのよ。私自身も、めちゃくちゃ疲れるの。お陰でよく寝れるし、シェイプアップにはなるんだけど……」

「そういえば痩せたような」

「でしょでしょ」

 丸山さんは最初からそんな太っていた訳ではない。

 霊力を増やして返しているという話だから、体力を使うのは本当だろうが、体重変化は本人しかわからない計りの上での話だろう、と堂島は思った。

「けど二人ともパワーアップしたなら少し安心」

「お前はパワーアップしないのか」

「僕の力って、霊が憑いているかどうかがわかるだけだし」

 梁巣が堂島を覗き込むようにしてから、言う。

「なんか、霊を集めたり制御したって話だが」

「ああ、坂田の霊が北上さんについちゃった話?」

「そんな力があるなら、その力を伸ばせば、戦闘でも役に立つんじゃないか」

 梁巣が両手を合わせて、広げてみせる。

「僕も試してみたんだ…… その日は出来たけど、次の日にはそんな力、すっかり無くなっていたよ。やっぱりあの日は由依さんの力が掛かっていたんだろうな」

「変なこと聞いて悪かったな。無力なのは辛いよな」

 成長して自信がついたのか、梁巣には余裕が見えた。

 その逆に、僕は相変わらず部屋に引きこもっているだけだし、何も成長してない。堂島は対面している二人から目を逸らした。

 丸山はスマフォを見ていたが、ふと思い出したように手を止めた。

「今、北上さんと沓沢さんが警察内部で立場が危うくなっているせいで、なかなか連絡が取れないようなのよね。だから、あなた達にもLINKでいったかわからないんだけど……」

 あまりに間を置くので堂島は聞き返した。

「なんの事ですか?」

「北上さんから来たのはね、坂田が映っている監視カメラ映像のこと。坂田に憑いていた全ての霊が北上さんに憑いて、北上さんの体から藤井さんが除霊してしまったので、坂田から『カオナシ』の能力が消えた訳でしょ」

 梁巣はただ頷く。

「そのせいで、今まで顔が映ってなかった監視カメラの映像に『坂田』の顔が映るようになったんだって」

「どういうことだ。一旦記録された映像が書き変わるなんて」

「……」

 堂島は考えた。霊の力で物理法則や、電子回路の動作を変えることは容易くないだろう。機械を変えること以外で『カオナシ』効果を実現するとしたら、レンズ、カメラ、レコーダー、それらを繋ぐ配線などを狂わせるより、見た者の心に呪いがかかる方が遙かに簡単だったのかもしれない。

「きっと映像自体は真実を記録していたんですよ。けれど、見る人に呪いが掛かっていた。見るひとが全員、『カオナシの呪い』に掛かっていたから、見えなかったんじゃないでしょうか」

「そっちの方が大変そうだ」

「そうでしょうか? 観測者の意思よって真実の見え方が変わるのは量子物理学では普通です」

 梁巣は堂島の顔を睨んだ。

 堂島にその気はなくとも『知識でマウントを取ってきた』と梁巣には思えたのだろう。

 丸山は二人を宥めるように入る。

「まあまあ、それより問題なのは、未だ『カオナシ状態』の映像のことらしいわ。スーツとか服装は坂田。けれど映像は『カオナシ』なの。今もカオナシなのは失った霊力によるものじゃないということかしら。北上さんは、そこを調べようとしていたらしいの」

「まさか、その映像の事件は、坂田じゃない別人の犯行だったとか」

「じゃあ、着ていたという坂田のスーツはどうなんだ」

「……」

 堂島は考えた。そもそもスーツは坂田が持っていたものと一致するといっても所詮服装だ。DNAのように一致すれば本人という性質のものではない。誰かの犯行に見せかけるため、似たような服を着る可能性も、たまたま同じスーツを買って着たという可能性もある。

「スーツは借りたのかも。カオナシ効果は借りた本人の力で、その本人にはまだ霊力を保っている」

「坂田からスーツを借りれて、悪いことしそうな奴なんて、角田議員だけだろ」

 確かにそうなんだろう。北上さんや沓沢さんもそう思って『角田議員』を調べ始めて、警察内部で目をつけられてしまったのではないか。

「ちょっと短絡的だけど」

「興味深いわね。私も坂田の件をいくつか調べてみようかしら」

 堂島にピンとくるものがあった。

「丸山さん、あまりこの件に首を突っ込まない方が」

「俺がついてるから大丈夫だ」

「どれだけすごい能力か知らないけど、私もこの後一生部屋に引きこもるわけにはいかないもの」

 堂島は反論出来なかった。

「……」

「何かあったら、すぐ連絡するから。そんなに心配しないで」

 丸山が手を伸ばしてきて、堂島の手を握った。

 他人に触れられる経験がない堂島は、なんと返していいか分からなかった。

 ただ、丸山に悪いことが起こらないよう願うだけだった。




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