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(仮)犯人当てを趣味にしているニートには霊視の能力がありました  作者: ゆずさくら


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 黒いワンボックス車が、円錐の屋根がいくつも重なる特徴的な建物の敷地に停まっている。

 建物の一室で、話し合いが始まった。

 ハイブランドのスーツを着た男は、部屋の奥で座っていた。

「やりすぎたな」

「……」

「今回の一件が、教団にどれだけ負担をかけたかわかるか」

 フリースの部屋着を着た坂田が、頭を下げて聞いている。

 坂田の横には、真っ黒いサングラスと、黒いスーツの上下の男が二人立っている。

「もう『お終い』にするか」

 その言葉を聞いた瞬間、坂田の全身が震え始めた。

「待ってください。まだお役に立てます」

「いや、いらない。代わりを探す」

「待ってください。情報が、情報があるんです」

 坂田は手の指を組み合わせて握り、顔の前に上げた。

「情報?」

「ある女の情報です」

「……喋るな」

 そう言うと男は、坂田の額に人差し指をピッタリとつけた。

「あっ……」

 坂田は妙に高く、か細い声でそう言った。

「ほう、能力増幅者(アンプリファイヤ)だな」

 指が離れると、坂田は少し笑った。

「どうでしょうか。私の立場があれば、まだまだそういう情報を得ることも可能です」

 スーツの男は、坂田の額につけていた指をそのまま天井に向けて立て、言った。

「こんな重要な情報を、今のいままで、我々に隠していたんだろう?」

「そ、それは」

 坂田の表情が、再び曇った。

「これまで、幾度となく、私はあなたのことを庇ってきましたのに」

「それはしなければならない『義務』だ」

「お願いです。まだ私は変われます。お役に立てます」

 スーツの男はため息をついた。

「教団は、お前を育てるための組織ではないんだ」

「待ってください」

 目を閉じて頭を下げると、額を床につけた。

「先程、一度待った。教団には掟がある。それに従って粛々と進める」

 踵を返すと、坂田の横に居た男に言った。

「『お終い』にしろ」

 サングラスの男二人が、坂田の腕をそれぞれ取ると、坂田を部屋の外に連れ出していく。

 部屋に残ったスーツの男の胸には議員バッチが光っていた。

能力増幅者(アンプリファイヤ)丸山(まるやま)奈緒子(なおこ)か……」



 坂田の別荘から丸山を救出した日から、数日が経っていた。

 コンビニに突っ込んだ車による殺人未遂の件は、車が盗難されたという坂田の主張と、監視カメラの映像から判断して不起訴。器物破損などの件は、コンビニオーナーと坂田の間で示談となり、それ以上坂田を追求することはできなかった。

「丸山さん自身は拘束されていたのを沓沢さんがしっかり見たんでしょう?」

 と堂島が言った。

「うん」

「しっかり令状を取ってから踏み込んでいれば良かっただけだ」

 梁巣はそう言った。

「……難しいね。知った方法がどうであれ、事実は変わらないのに」

 堂島が言うと丸山は頷いた。

 ファミレスの四人席で、隣合って座っている丸山と梁巣を見て、堂島は思い出した。

「そういえば、今二人は一緒に暮らしてるんですよね」

 丸山は周りを見てから言う。

「ちょっと。誤解が生じるような言い方」

「そうだぞ。ルームシェアって言わないとダメなんだ」

 梁巣は腕を組んでそう言った。

「一緒に住んでるわけじゃなくて、部屋を間借りして警備をしているのだ。間借りしている家賃と警備の費用でトントンだから、丸山が外で働いている時間は俺もバイトしてる。無職のお前とは違う」

 堂島は苦笑いする。

「まあ、ね。僕は丸山さんの紹介してくれる仕事(バイト)しかしてないから」

「そうそう。今日はその仕事(バイト)の依頼なのよ」

 丸山はそう言うと、タブレットを見せてきた。

「ほら、このメール。坂田教授が、事の真相を話すから会えないか、と言ってきたの」

「えっ? そんなことなら警察に行けばいいのに」

 そう言いながら、堂島はタブレットに表示されているメールの内容を確認する。

「うまく行けばこっちは事件の記事を書ける」

「そんな『心霊系の記事』売れないって言ってたじゃないですか」

 この前のコンビの監視カメラ映像だって、大人が『ごっこ遊び』をしているようにしか見えなかった。こんなことを記事にしても、現実には霊力なんて信じない人が多いわけだ。記事になるようなことじゃない。

「記事にならなくても、『北上・沓沢ライン』に情報として流しても金になるじゃない」

「丸山さん、あんまり警察から金を請求しない方が…… 北上さん困ってましたよ。そうそう、思い出した。この前、北上さんが僕に直接はらうと言って高額紙幣(これ)を」

 堂島は財布から取り出し、丸山に紙幣を差し出した。

「こ、こんなに渡してきたの?」

「ほら、丸山さんの仲介手数料があるでしょ」

 丸山はいつも半分を渡していたのだが、目の前で半分を渡したら、仲介料をぼったくっていることが、二人にバレてしまう。

「い、いいわよ。今回は直接受けた訳だし、非常事態で金額も上乗せがあったんじゃないかな? だから、全額納めと来なさいよ」

「いいんですか?」

「良かったね」

 お金に執着のない子で良かった、と丸山は思った。

「これ読んだ? 坂田教授の話を聞こうと思うのよ」

「危険じゃないですか? 丸山さん監禁されたんですよ」

「だから一緒についてきて欲しいのよ」

 梁巣が威張った感じに言う。

「当然俺も一緒にいく」

「うん。そうしてあげて」

 暗に、俺は行かないけど、と言う風に聞こえる。

「そんな言い方しないで、堂島くんもきてよ」

「僕は何が出来るわけじゃないですから」

 ずっと無力だった。坂田の別荘では、僕は建物の奥まで見通せるわけでもない。

 コンビニ駐車場での、坂田と梁巣のバトルも、何もできずに車の中で見ていただけだ。

 そう、見ることはできる。それ以上の役には立たないのだ。

「犯人を見つけ出すのが趣味なんだし」

「……」

 丸山さんが危険な目に遭うのが分かっていて、止めない、同行もしない、と言うのは流石に人としてどうなのだろう。堂島は考えた。

「わかりました。けど、二つ、お願いがあります」

「何?」

「一つは、僕が危険だと判断したらそれ以上先に進まないで欲しいんです。丸山さんはご自分の重要性に気づいて無さすぎるんです」

 無茶なことをして、丸山さんが洗脳され、サクラ教団に組み込まれてしまったら。

 あるいは、犯罪に巻き込まれてしまったら、と考えると、ここで無責任に逃げる訳には行かない。

「何、霊力を増幅する力のこと?」

「そうです」

「俺もそれを知ったから警備を引き受けている訳だし」

「それともう一つは……」

 堂島は丸山に耳打ちした。

 丸山は納得して、指で丸を作った。

 それを見て堂島は頷いた。

「引き受けましょう」




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