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(仮)犯人当てを趣味にしているニートには霊視の能力がありました  作者: ゆずさくら


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脱走

 沓沢は二階の窓を開け放ち、そこから布団を放った。

 丸山も同じ窓にきて、下に布団を投げた。

 無言で、かつ、急いで。

 投げられた布団が重なって、中央部はふっくらと山になった。

「よし、飛び降りよう」

「えっ?」

 丸山は聞いてない、という風に青ざめる。

「大丈夫。今逃げないと間に合わない」

 無理やり窓枠に丸山を乗せた。

「けど……」

 有無を言わせず、沓沢は丸山を押し出した。

 窓枠にいた時の姿のまま、布団の山の中央に落下していく。

 驚いたような声はしたが、痛いことはなかったようだ。

 二階から降りるのに、十分なクッションになったのだ。

 次は沓沢の番だ。

「早く退いてくれ」

 丸山がメガネを探してヨタヨタと布団の上を這い回っている。

「仕方ない」

 沓沢は窓枠に手をかけて壁に足をつけて、降りていく。

 体が十分下に降りたら、壁を蹴って飛んだ。

 沓沢は布団のないところに着地したが、アスファルトとは違って衝撃は少なかった。

「さあ、走るぞ」

 ようやくメガネをかけた丸山の手を引き、沓沢は走った。

 ここを真っ直ぐ行けば、別荘地を抜けて公道に出るはずだ。

 走りながら、音声入力で北上に向けてLINKメッセージを入れる。

『畑の中の公道に車を回せ』



 坂田教授が別荘に入っていくのを見た後、北上はスマフォを見つめていた。

 LINKには何も返ってきてない。

 つまり沓沢さんはまだ中にいるのだ。

 もうだめだ……

 そう思った時、振動してメッセージが表示された。

「!」

 畑の中の公道に車を回せ、と書かれている。

 北上は急いで堂島に合図して、車にいそぐ。

 車のエンジンをかけると、堂島が言った。

「どうしたんですか?」

「沓沢さんが脱出したんだ。きっと丸山も一緒だ」

「よかった!」

 車は、坂田の別荘をぐるっと回り込むように走って、畑に向かう道に曲がった。

 しばらく走ると、手を振っている沓沢が見えた。

「乗ってください!」

 沓沢は丸山を堂島と同じ後ろのシートに乗せると、自らは助手席に乗った。

「丸山さんに何か飲み物を」

「坂を下りたところにコンビニがあります」

 堂島は丸山に言った。

「どうやって連れてこられたんですか?」

「取材の日、途中までは意識があったんだけど、急に眠くなって、寝てしまったんだと思う。それからどうやってここにきたのか全く覚えがないの」

 取材した日からだとすれば、三日も四日も前の話だ。

「それで」

「何時間かに一回、教授がきて水と食事をくれるんだけど」

 車はコンビニの駐車場に入ると、店の入口近くに車を停めた。

 北上が振り返る。

「何かされなかったのか」

「食事の時以外は縛られてて、何もわからない。とにかく喉が渇いてお腹が減ってる」

「……何か買ってこよう。何がいい」

 沓沢の問いに、丸山は窓を開け、食事と飲み物のリクエストをした。

「丸山さん。もしかして、丸山さんは自分自身の力を知らないの?」

 丸山は横にいる堂島を振り返った。

「なんのこと?」

「丸山さん。丸山さんは言わば増幅装置(アンプ)なんですよ」

「余計わからない」

 堂島は少し考えてから、言った。

「丸山さんに霊力を与えると、倍にして戻してくれる人、なんです」

「へっ?」

 そりゃそうか。そんなこと言われてもなんのことだか、分からないだろう。当然の話だ、と堂島は思った。

 堂島とて藤井玲香から過去、そういう話を聞いて知っていたにすぎない。


『稀に霊力を増幅してくれる人がいて、そういう人と一緒にいるとあっという間に力が大きくなるのがわかるわ』

 堂島は言った。

『じゃあ、養子にするとか養子になるとかして、年がら年中一緒にいればいいじゃない』

『それが無理なのよ。自分の能力の(キャパ)以上に大きくすると……』


 そもそもそんな人、滅多にいないし。

 それに丸山さんは、能力(ちから)の桁が……

「丸山さん、背中のそれ何?」

 直径二センチほどの白い円形のプラスチック片が服についていた。

「確かにずっと違和感があったんだけど」

「あれ、これって」

 GPSではないが、無くしものの位置を把握するためにつけるチップに見える。

「こ、これ坂田がつけたのかも!」

 その時、堂島の視野に黒い影が走った。

「えっ?」

 ガラスの割れる音、人の叫び声が聞こえた。

 車がコンビニに突っ込んだのだ

 停めていた車の後方、突っ込んできた車が来た方向に人影がある。

 気づいた堂島は振り返ると言った。

「坂田がきた!」

 丸山が怯えて、堂島に触れてくる。

 頼られても、僕では丸山さんを守れない。

 どうしたらいい……

「車、この車を動かそう」

 その時、車のガラスを叩く者がいた。

「!」

 黄色のジャージ。黒いライン。

「梁巣さん!」

 梁巣が腰を屈め、視線を合わせてきた。

 のびた髪、鬚、違和感。

「あいつは、俺がやるよ。さっきの仕返しだ」

 静かな車内にそう聞こえてきた。

 堂島はさっき、坂田の別荘で見た時に感じた違和感がわかった。 

「梁巣さん…… 以前よりずっと能力(ちから)が増してる」




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