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(仮)犯人当てを趣味にしているニートには霊視の能力がありました  作者: ゆずさくら


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メガロドン

 北上が車を走らせ、南東武大の敷地を出る。

 朝からの雨は、もう止んでいたが、曇っているせいで時間の割には、大分暗くなっていた。

 落ち着いたのか、沓沢が急に喋り始めた。

「お前は考えなかったのか」

「な、なんのことですか? 沓沢さん」

「あいつに霊が憑いていて、俺たちの考えていることが全て読み取れているのだとしたら」

 北上はさっきのことを思い出して、答えた。

「……ちょっとは考えましたけど」

「あの場で、何か悪霊の力を使って何かされたら、とか」

 確かにそうも考えた。

 だがあそこは坂田の研究室だ。犯行現場が映ってなくとも、坂田がやっただろうと推測がついてしまう。監視カメラの映像もある。うまくやれたとしても、どれだけリスクを負うのか。

「大丈夫ですよ。あの場で殺されたらすぐに坂田は捕ま……」

「違う!」

 沓沢は急に大声を出してきた。

「そう、俺たちを殺した他の連中で、奴を捕まえることは出来るだろう。だが、俺もお前もあの場で死ぬかもしれない、そういう恐怖に耐えられなかったんだ」

 北上は沓沢の恐怖感が理解できなかった。

「……」

「理解できないって風だな。いいか、お前は何が一番怖い?」

 北上は車を運転しながら考えた。

「サメですかね。大きなサメ。メガロドンとか言うやつ」

「いいか、あの場所のあの状況は、そのメガロドンの口の中だ。それも閉まる寸前の歯の上。俺たちが食いちぎられるかどうかは、奴の意思一つだ。すでに助かる手立てはない。俺たちの抵抗は奴にはまるで届かない 」

 沓沢さん、そんな霊感なんて何もなかったと思ったのに。北上は思った。霊感がなくても、そういう間近に迫った恐怖を感じることが出来るのだろうか。

「沓沢さん、霊感あったんでしたっけ」

「いや、そんな霊感は今も持ってない。だが、俺たちがカオナシと呼んだ犯人が持っている力は、今まで俺たちが扱ってきた暴力とはまるで質が違う。警察でならった柔道も、剣道も、(ボクシング)も、銃でさえも歯が立たない」

 沓沢の言葉で、北上は公園で殺害された被害者の映像を思い出していた。

 何も触れて無いにも関わらず、突然殴られたように体が変形する。

 被害者の動きが鈍くなってきた頃、その見えない力は、鋭い刃物のように肌を切り裂いていた。

 堂島や梁巣、堂島が呼んだ藤井、あの連中は『霊』に直接触れるという力だが、カオナシの力は物理的に攻撃してくる。オートドアを破壊し、床の石を砕いた。

「俺たちは一気にカオナシに近づきすぎたんだと思う。もっと周りを、証拠を固めよう」

「……」

 北上が運転している最中、何度かスマフォが振動した。

 運転中に出れるようにスピーカーで受ける準備をしていなかったので、全部無視をした。

 車が警視庁に着いてから、北上はスマフォの履歴を確認する。

「沓沢さん、ちょっと待ってもらえますか」

 知らない番号だった。

 だが、北上は掛かってきた番号にかけ直した。

 すぐに出た声は、聞き覚えのあるものだった。

『北上さんですか?』

「その声は、堂島くん?」

 沓沢は北上を振り返った。

『そうです。丸山さんと連絡取れないんですけど、なんか知りませんか』

「いやわからない。編集部も連絡が取れなくて心配しているみたいだ」

 沓沢は小さい声で「堂島を呼べ」と言う。

『梁巣さんも連絡取れないし』

「梁巣も? こっちには梁巣の情報は入ってないな」

『まあ、梁巣さんは既読にはなるから、生きてるんでしょうけど』

 逆にいうと丸山は既読にならないということか。スマフォが触れない状況にあるということであり、もし坂田がこちらの考えているカオナシだとしたら丸山の置かれている状況はかなりヤバい。

「ちょっと会えないか。カオナシと思われる容疑者がいるんだが、そいつに霊が憑いているのか知りたい」

『ええ。わかりました。これから xx駅に行きます』

 北上は頷くと、踵を返し、地下駐車場の中を車の方へ歩き始めた。



 xx駅には、堂島が先に着いていた。

 喫茶店でコーヒーフロートを頼み、一人で座っている。

 また同じ赤黒いネルシャツだ、と北上は思った。同じシャツを着回しているからと言って、堂島は体が臭いわけでもない。きっと毎度洗濯して、乾かし、同じシャツを着ているのだ。本当に外に出る機会が少なくて、同じ服を着回せるのだとしたら、年季の入った引き篭もりだ。

 北上たちは店に入り、堂島のいる席に座った。

「堂島くん。至急の依頼で悪いんだが、カオナシかどうかを判別してほしい人物がいる。これから付き合ってもらえないだろうか」

 と、沓沢は間髪入れずに本題を告げた。

「さっき北上さんには言ったんですが、今、丸山さんにも、梁巣さんにも、連絡取れないんです。玲香ちゃんは忙しいということでしたから、見つけたとしても、手出しはできませんよ」

 沓沢は頷く。

「ああ、それでいい。俺たちも危険を冒したくない」

「それなら」

 堂島は頷く。

「梁巣さんはどうするんですか?」

「思い出したんだが、梁巣は、この前、病院で殺されたあの男の件でかなりショック受けてたからな。そのせいで俺たちと接触しなくないのかもしれん」

 北上は思い出していた。

 堂島がこれ以上やったら死ぬ、梁巣には霊だけを倒すことは出来ない、という内容を告げた時のことだった。

 涙を堪えていたようにも思えた。

「僕も人が死ぬところなんか見たくないですよ」

「梁巣がショックを受けてたのはそこじゃなくて」

「何ですか?」

 北上は堂島にはっきりと言った。

「癒着とか言ってた件に対応できないってボソボソ言ってた。自分の能力のなさを嘆いていたんだろうな」

 堂島はそう聞いて、梁巣とのLINKで思い当たるフシがあった。

「『修行』ってそれを思ってか……」

「修行? 何だそりゃ。それはともかくここを出よう」

「分かりました」

 堂島が立ちあがろうとするのを、北上は制して言った。

「先に渡しておく」

 北上は堂島に高額紙幣を出した。

「えっ? こんなに貰えるの? 二日分?」

「いや……」

 丸山からは一体いくらで仕事を受けていたんだろう、と北上は不安になった。




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