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(仮)犯人当てを趣味にしているニートには霊視の能力がありました  作者: ゆずさくら


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行方不明

 警視庁に戻った二人は、事務処理をしていた。

 北上は、サクラ教団の男の証言を全面的に信用していいのだろうか、と考えた。しかし、沓沢は北上に大学を調べるように命じた。

 北上は反発した。

「わざわざサクラ教団が情報を流すでしょうか? 大学を調べても徒労に終わるだけです」

「……サクラ教団が、正しい情報を流す理由はある」

「どういうことですか?」

 沓沢は椅子を回して、北上の方を向いた。

「サクラ教団は方針を変え、角田(つのだ)に疑惑が行かないよう、知っている情報をすべて出すことにしたのかもしれない」

「堂島の能力が正しければ、角田議員は黒ですよ」

「だが、今回の殺人には関与していないかもしれない」

 沓沢は手を開いて、無実、無関与を示した。

「叩けば埃が……」

「堂島の発言だけで人を逮捕することは出来ないぞ」

「それはそうですが」

 北上は悔しそうだった。

「まずは南東武大学を調べてみろ。顔は気にするな。とにかくスーツが一致するか。ポイントはそこだ」

 北上は頷いた。

 北上は闇雲にスーツだけを見比べても仕方ない、と思い、堂島を連れて行くことにした。

 丸山に電話をかけるが、何度かけても圏外だった。

「……沓沢さん」

「編集部に電話してみろ」

 沓沢は開いたメモ帳を北上の机に置いた。

 そこに電話をすると編集部につながった。

「丸山さんは」

 話を聞くと、最近ずっと編集部側に顔を出していないようだった。取材が続くとそういうこともあるようだが、そんな時でも、電話は繋がっていた。今回は電話もしてこないし、繋がらない。編集長も気になって自宅を訪ねたらしいが、部屋からは応答がなく、管理者と一緒に鍵を開けると、部屋には誰もいなかったそうだ。

「最近丸山さんは何の取材を」

 編集長曰く、ある大学教授に『シンギュラリティ』についての取材を依頼していたということだ。最初のアポイントは編集長が取ったそうで、その大学教授に丸山のことを聞いたが、取材して帰って行ったということだ。

「その大学って、もしかして南東武大学だったりしますか」

『その通りだよ。南東武大の坂田教授だ』

 勘で察したのか、沓沢が勢いよく立ち上がった。

「そうですか。はい、わかりました」

「どうだ」

「丸山さんが取材していたのは南東武(みなみとうぶ)大学です。すぐに調査に入ります」

 沓沢は上着を手に取った。

「俺も行く」



 北上の運転する車が大学の駐車場に止まった。

 大学の総務課に行き、学内の監視カメラ映像の確認許可を得ると、警備室に向かった。

 二人は、丸山が大学教授の取材に入った日の、大学の監視カメラの映像を見た。

 時間をかけて見ていくと、丸山が映っている部分を発見した。

 行き返りとも映像としてしっかり映っていて、大学内にずっといるという訳では無さそうだった。

「この日帰りに何かあったんだろう。あるいは、別の日にも来たのかも」

 沓沢は警備員に訊く。

「ここの監視カメラ、顔認証システムとの連動は?」

「すみません、まだそういうシステムは入っていません」

 北上が言った。

「動画ファイルとしてここ一週間分の映像ファイルを用意してもらえますか」

「許可は」

「コピーについても総務課に許可を取っています」

 二人は、警備室で映像ファイルを取り出してもらうと、丸山が取材した坂田(さかた)藤司(とうじ)教授に会いに行くことにした。

 坂田は科学技術イノベーション政策の為の政府顧問も務めていて、忙しいから、居たとしても会えるかはわからないと言われた。

 研究室に入ると、学生が同じディスプレイを見つめながら議論をしていた。

 沓沢たちを気にもとめていない様子だった。

「君たち、ちょっと悪いんだけど」

 北上が警察である旨を説明する。

 学生の表情が緊張した。

「坂田教授は?」

「私たちがここに入れたんで、きっと教授は奥にいます」

「よくわからない理屈だけど、どういう意味? 教授の顔見てないのにいるってわかるの?」

 学生は面倒くさいな、といった感じにため息をついた。

「外の扉にカードリーダーがついていますよね? そこに、ほら、首から下げてるカードを操作してこちらに入っていらしたじゃないですか?」

 と言うものの、学生はそういうカードを下げていない。

 北上と沓沢だけが、首から『ゲスト』と書かれたカードをぶら下げていた。

「ああ、言われた通りカードを操作したな。総務課で随分設定に時間が掛かってやっと借りたカード」

「……えっと、そのカードリーダーは中に教授がいる時だけ操作できるんです」

「なんで?」

 学生は両手を広げる。

「知りませんよ。そういう仕組みなんです」

「じゃあ、教授が学校に来てない時は君たち研究室に入れないってこと?」

「そうです」

 北上は思った。そこまでの仕組みがあるなら、何か履歴が残ることになっているはずだ。教授のアリバイの一部は、大学の入退室システムで証明できるわけだ。

「ちょっと待って。出る時は? 教授がトイレに出て行ったら、帰れなくなっちゃうの?」

「出るときのカード操作の制限はないです」

 北上は情報を整理した。

 学生が入るときは教授がいなければならない。だから、少なくともこの学生がここに入った時点で教授がいるのだ。そして教授がここを通って出て行くのを見ていなければ、自然とこの奥に教授がいることになる。

「なるほど。ありがとう」

 北上はそう言うと、カードを握りしめ奥の部屋のカードリーダーを操作した。

 ピーピーピーピーと異常な連続音がして赤いランプがついた。

「あれ?」

「その扉は教授しか操作できないですよ」

「先に言ってくれよ」

 北上は扉をノックした。

「すみません」

 部屋内から小さい声が返ってくる。

「インターフォンがあるだろう」

 どうやら教授は訪問者の顔を確認したいらしい。

 北上はカメラ付きインターフォンを見つけて操作する。

 インターフォンを通してさっきと同じ声がする。

「どなたですかな」

「警視庁の北上と沓沢というものです」

「警察の方ですか? どんなご用事で」

 北上はインターフォンのカメラにスマフォを向けて、交通事故で亡くなった看護師の顔を見せた。

「このかたご存知ですよね」

 根拠はスーツしかない。だが、関係を否定することは難しいだろう、と北上は思っていた。否定しても、レストランの店長と店員を連れてきて面通しすればいいわけだ。監視カメラが全ての証拠じゃない。

 教授は何も返事をしない。北上は続ける。

「中でお話し出来ませんか?」

 軽い金属音がしてロックが外れた。

「失礼します」

 北上と沓沢は坂田教授の部屋に入った。




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