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プロローグ

2022/12/26 9万字から、10万字に改稿しました。

 放課後の教室。

 開け放たれた窓からは、校舎をランニングする運動部の掛け声や渡り廊下の向こうから微かに届く金管楽器の音がする。時より風が吹き込んできて、クリーム色のカーテンを揺らす。


 そこに彼女はいた。


 肩までの髪を無理やり一つに束ねて、机の上のプリントにシャーペンを走らせている。その真剣な表情を見て、懐かしさと愛おしさで胸が押しつぶされそうだった。


 彼女の声が、その笑顔が、僕に向けられた日々。


 その優しさに戸惑い、拒んでしまった愚かな僕。


 それが今また、目の前にある。


 夢で構わない。あの時、彼女に伝えたかった言葉、心に秘めた想いを、伝えることができるなら。例え夢だって構わないんだ。


「神崎さん」


 彼女は顔を上げた。そのどこかあどけない表情が僕の心をくすぐった。


 ああ、この時間(とき)がいつまでも続けばいい。


 ——何の邪魔も入らない、僕たちだけの世界。



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