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女装剣豪令嬢  作者: 高美濃 四間
第五章 名探偵ルノちゃん
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元が男なんだから、男装という言い方がそもそもおかしい!

 暗い表情で待ち構えていた店長から聞いた話は、穏やかなものではなかった。


「――それは本当ですか!?」


「はい、間違いなくお客様のケーキに異物が混入していました」


「偶然にしても、由々しき事態ですね。衛生管理には十分に注意して頂きたい」


「本当に申し訳ございません。ですが実は、お客様に誠心誠意を込めて謝罪し、十分注意していたにも関わらず、その数日後に同じことが起こりました」


「……まさか、第三者の妨害ですか?」


「私もその可能性を疑いはしたのですが、店員たちの話によると、被害に遭われたのはよく当店を利用してくださるご婦人でしたし、怪しい客は一度も入店していないとのことです」


「そうですか……しかしマズいですね。このままでは店の売り上げに関わります。大事おおごとになって広まる前にどうにかしないといけない」


「はい、ですが今のところ、同じことが起きないよう注意する以外、どうしようもないというのが現状でして……」

 

 ケイト店長はお手上げというように眉尻を下げ、ため息を吐いた。

 なるほど、それでオーナーのリリーナにも力を貸してほしいというわけだ。

 彼女の立場からしても、店が窮地に追い込まれるのは防がないといけない。

 しかし、今聞いた話から考えられる可能性は……


「やはり、誰かの嫌がらせだと考えるのが妥当でしょうね」


「ですが、心当たりがまったくありません」


「リリーナさん……」


 僕がささやくと、彼女は頷いた。

 やはりそういうことだろう。


「ああ、タイミングといい、心当たりがありすぎる」


「はい? ルノさん、リリーナさん、それはどういう……」


「実は最近、ある商会の恨みを買ってしまった可能性があるのです」


 いたずらに不安がらせても仕方ないため、アルゴス商会の名は伏せていたが、ナハルたちが仕掛けてきた可能性も考えられなくはない。

 もしそうなら、間接的にリリーナを追いつめ、僕への給料を払えなくすることが目的か。

 そして解雇されたところを狙うと。

 

「張り込みでもしてみるか? ルノ」


「はい、それが一番いいかもしれませんね」


「ぜ、ぜひお願いします! もちろん、張り込みをして頂くのでしたら、店内でのお食事代はこちらで負担させて頂きますので」


 ……なん、だって?

 

「どうしたルノ? なに固まってるんだ?」


「い、いえなんでもありません。とにかく、今日は夕方くらいまで店で見張ってみましょう」


「そうだな」


「リリーナさん、ルノさん、どうかよろしくお願いします」


 とういうことで張り込みをしたものの、その日は特になにもなく終わった。

 やはり女性客が多く、男がいたとしても夫婦か若いカップルがほんの数組いる程度だ。 

 これは一筋縄ではいかないだろう。

 それでも、僕が原因でこうなっているのだから、必ずこの手で解決しなければならない。



 翌朝、僕の格好を見たリリーナは、目を丸くしていた。


「……ルノ、なんだその格好は?」


「リリーナさん、どうでしょうか? 上手く正体を隠せているでしょうか?」


 僕は今、男もののスラックスに上は黒のフード付コートを着ていた。

 長い黒髪は、ぶかぶかの帽子の中に入れ、目元まで深くかぶって顔を隠している。


「最初見たときは、不審者かとビックリしたぐらいだよ」

 

「だって、目立つわけにはいきませんから。毎日ずっとお店にいるわけですし、私とリリーナさんは顔を知られていますからね。もし犯人がいたとしても、警戒させてしまうかもしれません」


「ん? あぁっ、それで男装か!」


「……せめて変装と言ってください」


 元が男なんだから、男装という言い方がそもそもおかしい!

 でも、これならカフェで張り込みをしていても、目立たなさそうだ。

 まさか、いつか着ようと思って買っていた男ものの服が、こんなところで役立つとは……


「ずいぶん張り切っているようだけど、私の支度(したく)が追いついてない。すぐに準備するから、少し待ってくれ」


「いえ、その必要はありません」


「それはどういう意味?」


「今回の件は私に任せてください。おそらく長丁場になりますし、アルゴス商会が恨みを持っている可能性がある以上、リリーナさんの身を危険にさらすことになるかもしれません。ご不便をかけますが、この件が片付くまで、私がいない間はずっとお屋敷を出ないで頂きたいのです」


 僕が留守中のリリーナさんの身の安全は、ケシーさんに頼むことにしよう。


「いやしかしだな、これは私のオーナーとしての問題で」


「でしたら、これは護衛としての私の仕事です。それに、アルゴス商会の一件は私が渦中(かちゅう)にいるわけでもありますし」


 僕は帽子を脱ぎ、まっすぐリリーナを見つめる。

 退く気はないぞと目で伝える。

 すると彼女は、やれやれとため息を吐いた。


「まったく、いつからそんなに強引になったんだか。今の君には、確固たる強い意志があるようだ。分かった、任せていいんだね?」


「はい!」


「それなら頼んだよ、名探偵ルノちゃん♪」

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