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女装剣豪令嬢  作者: 高美濃 四間
第五章 名探偵ルノちゃん
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僕はショートケーキを食べるのに夢中だった

「――リリーナを侮辱するなんて、許せませんわ!」


「ケシー様のおっしゃる通りです」


「いや、二人とももういいよ。彼らは十分こらしめたから」


 リリーナとケシー、僕の三人は、ある晴れた日の昼下がりに、カフェ・ハウルで優雅にお茶をしていた。

 ケシーがまた僕を誘ってくれたので、今度はリリーナも連れて三人で来たのだ。

 そこで、先日のアルゴス商会との一件をケシーに話した。


「そのナハルさんという方の上からの物言いが不愉快ですわ。いくらそれなりに大きい商会だからって、淑女に対する最低限の礼儀もなっていないなんて」


 ケシーの言うことも分かる。

 いくら今は平民だからといって、リリーナを小娘呼ばわりして圧力をかけようとしてきたのは許せない。

 彼女は複数の店や商会に出資している立派な実業家だ。

 そんな事実にも目を向けられないほど、彼らの目が濁っているということなら、元雇い主だろうと関係ない。身をていしてでもリリーナの味方をするだけだ。


「まぁ、いつものラブコールが少し過激になっただけだと考えれば、大したことないさ」


「あれ、どうにかならないんですかねぇ」


 実はパーティーの一件以降、屋敷へ次々と手紙が送られて来て困っていた。

 内容はほとんどが「ルノ・カーストをもらい受けたい」ということ。

 妻としてか、養女としてかの違いだけで、ほとんど内容は同じだ。

 僕がリリーナと一緒にいることは広まっているから、みんなクイント家へ送りつけてくるんだ。

 本当に勘弁してほしい。


「まったく、お姉様が迷惑に思われているのが分からないのかしら」


「おやケシー、気付いていないのか? 君もその一人になっていることに」


「な、なんですって!?」 


 リリーナの鋭い一撃にケシーがのけ反る。

 あっ、ショックを受けて涙目になってる。

 彼女をフォローすべく、僕は努めてにこやかに微笑んだ。

 

「ケシー様には大変お世話になっているので、迷惑だなんて思ったことはありませんよ」


「お姉様ぁ……」


「ふっ」


「む、リリーナ、なにがおかしいんですの?」


「ルノ、正直に言ったらどうだ? 甘いものを食べさせてくれたら誰でもいいと」


「んなっ!?」


「リリーナさん、あんまり意地悪しないでください」


 ほら、ケシー様は今にも泣き崩れそうだよ。

 それに比べて、リリーナさんは本当に楽しそうだなぁ。

 その歪んだ笑み、サディスティック全開だよ。


「ケシー様、ぜひまた一緒にお茶しましょうね?」


「お、お姉様ぁっ」


 さて、ケシーも気を取り直したところだし、ようやく運ばれてきたショートケーキを食べるとしよう。


「次はリリーナ抜きでお誘いしますわ」


「勝手にすればいい。君の浅はかな考えなんて、すべてお見通しだから」


「なんですってぇっ!?」


「ルノは渡さない」


 リリーナとケシーがまたなにか言い合いを始めたけど、僕はショートケーキを食べるのに夢中だった。


 言い争いに疲れて、注文していたケーキを二人がようやく食べ始めたときには、僕は二品目を既に注文していた。

 それからはまったりと、最近の貴族情勢をケシーから聞く。


「――さて、そろそろお開きとするかな」


「ええ、なんだかかんだ言って、今日は楽しかったですわ」


「はい、美味しかったです!」


 満足そうな僕の顔を見て、リリーナとケシーが顔を見合わせクスクスと笑う。

 良かった、いつもの仲の良い二人だ。


 そのとき、店員の女の子が近づいて来て小さな声で言った。


「リリーナ様、ケイト店長がご相談したいことがあるとのことです」


「ん? そうか、すぐにそちらへ行くと伝えてくれ」


「かしこまりました」


 店員は頷くと奥へ歩いていた。

 それにしてもいったいなんの用だろう。

 心なしか店の雰囲気もいつもより暗いし、嫌な予感がする。


「それでは、私はここで失礼致しますわ。リリーナ、ルノお姉様、ご機嫌よう」


 僕らはケシーが店を出るのを見送ってから、店長室へお邪魔した。

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