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女装剣豪令嬢  作者: 高美濃 四間
第四章 誇り高き親友
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今はただ、この言葉にできない喜びを感じていたいから、このままでいさせてほしい

 僕の心はかき乱されていた。

 リン・カーネルの友人なんて、今までいたことがあっただろうか。

 そんなの幻想でしかないと思い、いつしか一人でいることが当たり前になっていた。

 だから信じて見守ろう、僕のことを友と呼んでくれる尊い人の小さな背中を。


「友人? まさか、あの冴えない男にこんな可愛らしいお友達がいたとは! いやぁ、傑作だ!」


 ナハルは口を三日月に歪め、バカにするように手を叩いて笑う。

 部下たちもつられて薄ら笑いを浮かべていた。

 リリーナは眉を寄せ、表情に怒りをにじませる。


「なにがおかしい? 分かっているのか? 彼を追い出したせいで、アルゴス商会が追い詰められているということが」


「なにを知った風な口を。そんな事実はない!」


「救えない人たちだな」


 ナハルがキッパリと否定したが、リリーナも間髪入れず吐き捨てる。


「あんな根暗で薄気味悪い奴なんて、視界に入るだけで不愉快だったのだ。むしろ、いなくなってせいせいしたよ」


 僕は悔しさのあまり、強く拳を握っていた。

 さんざん言われ慣れていたことだけど、久しぶりに言われると少し動揺してしまう。

 分かってるよ、僕の正体がそういうつまらない男だってことくらい。

 だけどせめて、リリーナさんの前で言わないでくれ……


 否定する気はなかった。

 別に今さら傷つくこともなかった。

 でも、彼女は立ち上がって、声を上げてくれた。


「ふざけるなっ! いくら雇っている立場だからといって、彼の人格まで否定していいわけがないんだ! あなたたちがそんなだからっ……あなたたちが、彼のことをもっとよく見て、その能力にふさわしい扱いをしていれば、ここまで卑屈ひくつにならずに済んだのかもしれない。少しでも、自分に自信が持てたのかもしれない。彼のことをよく知る私だから、絶対に許せない!」


 その言葉には、リリーナ・クイントの想いが乗っていた。

 胸が熱くなった。

 涙が出そうだった。

 彼女は今、ルノ・カーストのためだけではなく、リン・カーネルのために怒ってくれている。

 そのありえない事実が、この上なく嬉しかった。


「はぁ、もういい。我々は、そんな話をしにきたのではない。要求は一つだ。ルノ・カーストを今この場で解雇しろ。そうしたら、すぐにうちで雇う」


「断る。こんな素晴らしい人を、見る目のない商人たちの、腐った商会に使い潰させてたまるか!」


「小娘が言わせておけば、調子に乗りおって! いいか、後悔させてやるぞ? 世間知らずの小娘が、アルゴス商会にたてついたことを。貴様のような没落貴族ごときが勘違い――」


 ――バリィィィンッ!


「ひっ!?」


 突如、ナハルの目の前のティーカップが砕け、静寂が訪れる。


 申し訳ありません、リリーナさん。

 あなたのことを侮辱されて、我慢できませんでした……


「なっ、なにが……」


「これ以上の言葉は不要です。さっさと立ち去ってください。でないと、次に壊れるのはあなたです」


 驚くほど冷たい言葉が出てきた。

 さすがのド素人でも、僕の居合の構えを見たら、なにをしたかくらいは想像がつくだろう。

 ただ、見えないだけだ。

 この秘剣『飛燕(ソニック)』に、テーブルの幅程度の距離なんて関係ない。


「く、くそぉっ……えぇぃもういい、行くぞ!」


 ナハルは悔しそうに僕とリリーナをにらみつけると、茫然としている部下たちを連れて出て行った。


「ふぅ……」


 肩の力を抜き、深いため息を吐く。

 良かった、僕は大好きなこの日常を守ることができたんだ。


「ルノ、大丈夫?」


 リリーナへ目を向けると、彼女は立ったまま、心配するように瞳を揺らしていた。

 その手が震えているのが分かった。

 恐怖心を抑えてでも、僕のために戦ってくれたのか。


 そう思ったとき、愛しさがこみ上げてきて、気付いたときには彼女を抱きしめていた。


「へっ? ル、ルノ!? は、離してぇ」


「やです」


「は、はわわわっ」


 リリーナは不意打ちには弱いらしく、僕の胸の中でか弱くもがいている。

 今はただ、この言葉にできない喜びを感じていたいから、このままでいさせてほしい。


「ありがとうございます、誇り高くお優しい僕の親友」

もし「おもしろかった!」と思って頂けましたら、この下にある☆☆☆☆☆から作品への評価をお願いしますm(__)m

また、レビューもして頂けると、大変嬉しいです。

ランキング1位を目指しますので、どうぞよろしくお願いします!

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