まさか、こんな技を使う日が来るなんて
静まり返っていた周囲から、拍手喝采が巻き起こった。
「す、凄かった! 心から感動した!」
「素晴らしい! 恐怖のあまり、誰も動けなかったというのに」
「美しいだけじゃなくてカッコいいとか反則だろぉ!」
「素敵すぎます、麗しのお姉さま……」
うぅぅぅ、めちゃくちゃ目立ってるぅ~
まあでも、今回は仕方ないか。
リリーナも嬉しそうに涙を浮かべながら手を叩いてるし。
すると、鳴りやまない歓声の中から、ケシーの両親らしき夫婦が駆け寄って来た。
「ケシー!」
「お父様! お母様!」
「無事で本当に良かった!」
「ご令嬢、どなたかは存じませんが、娘を助けてくれて本当にありがとうございました」
「い、いえ、お気になさらず」
高貴な身分の二人に頭を下げられ、僕は逆に恐縮してしまった。
その後、すぐに取り押さえられた男が外へ連れて来られ、騎士たちが男の動機を問いただした。
どうやら血酒のオークションで偽物を掴んでしまったらしく、それを訴えたときの主宰者であるアストライア家の対応が気に入らなかったようだ。
それが原因で破産寸前まで追い込まれてしまったというのだから、気の毒ではある。
それでも、ケシーを襲ったことは許せない。
僕はため息を吐くと、ケシーと話をしているリリーナの元へ戻る。
こちらに気付いたケシーは、頬を赤らめながら歩み寄ってきて、上目遣いに見上げてきた。
「ル、ルノさん、先ほどはその……凛々しくて、カ、カッコ良かったですわ」
「うん、私からも言わせてくれ。ケシーを助けてくれて本当にありがとう」
リリーナも目元を潤ませながら珍しく礼を言ってくる。
しかし僕には、今はまだ歯切れの悪い反応しかできなかった。
「い、いえ……」
「ルノさん、どうしたんですの?」
「なにか気になることでも?」
どこか違和感があった。
いくら信用のある人しか来ないとはいえ、騎士たちも警護していたし、たった一人の商人の犯行をそう簡単に許すはずがない。
なにか胸騒ぎがする。
そのとき、どこからかかすかな殺気を感じた。
「っ!?」
背後を振り向くと、中年の騎士が至近距離まで迫り、剣を振り上げていたのだ。
しまった、騎士に協力者がいたのか!?
もしこの男が手引きしていたのであれば、スムーズに事が運べたのにも納得がいく。
しかしまずい、完全油断していた。
「きゃあぁぁぁっ!」
「なんだ!?」
「あ、あぁぁぁ」
周囲で悲鳴が上がるが、もう既に剣は振り下ろされようとしている。
その軌道はまっすぐ僕の頭上へ。
受け止めるための武器も今は持っていない。
紙一重で避けることはできなくはないが、そうすれば後ろのケシーに刃が届いてしまう。
『あれ』をやるしかないか。
「っ!!」
僕は目を見開き、迫りくる白刃を凝視した。
全身から覇気を解き放ち、荒々しいオーラが溢れ出る。
今の僕の時間間隔では、すべてが遅く見える。
時が止まって見えるようだ。
その一瞬のうちに、刃の進行方向、角度、込められた力、速さをしっかりと見極める。
そして、僕は両手を頭上へ上げ、力を込めて合掌した。
「はっ!」
――バシイィンッ!
「バ、バカなっ!?」
騎士が信じられないというように驚愕の声を上げる。
無理もない。
僕は両手の平を合わせ、まっすぐ振り下ろされていた剣の刃を挟んで止めていたのだから。
真剣白羽取り。
カーネル家の秘技。
まさか、こんな技を使う日が来るなんて。
さすがの相手も茫然と固まっている。
「ふっ!」
その隙に刃へ横へそらし、体を敵の懐へ入れる。そして、無防備なその腹部へ肘を叩き込んでやった。甲冑の防御を貫通するほどの威力を込めて。
「ごふっ!」
衝撃が甲冑を貫き、騎士が怯んだ隙に手首を強打して剣を叩き落とす。
そして、足を払って体勢を崩させると、無防備な胸へ強烈な掌打を叩き込み突き飛ばす。
「ぐぅっ!」
「あの人を抑えて! 早く!」
僕の切羽詰まった声で我に返った他の騎士たちは、ようやくもう一人の襲撃者を捕らえたのだった。
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