表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女装剣豪令嬢  作者: 高美濃 四間
第二章 覚醒
15/48

へ、変態だぁぁぁぁぁっ!

 あぁ~ダメだ~目がグルグル回る~

 もう急展開についていけないよ。

 あ、でも、間近で見ても凄い美人さんだ。


 そのとき、完全に思考回路がショートしてしまった僕の手を引き、リリーナがかばうように前へ出た。


「ダメだ、許さん」


 リ、リリーナさん……


「彼女は身も心も私のものだ」


 一瞬だけカッコいいと思ったけど、錯覚だったみたいだ。

 目の前の令嬢も目を丸くしている。


「え、そうなの? もうこの人と結婚してたの?」


 彼女は、憐れむような涙目を僕へ向けて聞いてくる。

 だからはっきりと言った。


「断じて違います。でも、結婚だとか、レズビアニズムとかはごめんなさい」


 でも友達なら……とは言えなかった。

 この手の積極性は、正体がバレてはいけない僕からすれば、恐怖でしかない。


「そう……残念。それなら、あなたの脱ぎたてパンツで今日のところは我慢するわ」


 へ、変態だぁぁぁぁぁっ!


 しかも、今日のところはってことは、次もあるってこと!?

 だ、誰か助けてぇぇぇ。


「ルノ、この変態は本当に君の知り合いじゃないのか?」


「あら、初対面で変態呼ばわりとは失礼ね」


「あなたには聞いてない。で、ルノ、どうなんだ?」


「本当に初対面です」


「それなら変態で正しいな。初対面の同性相手に『結婚してください』はありえないだろう。無論、脱ぎたてのパンツもだ」


「それなら変態でも構わないわ」


「セクハラで訴えるぞ」


 リリーナさん、僕のために面と向かって堂々と言ってくれるのは、カッコいいしありがたいのですが……自分のことを棚に上げて、よく言えましたね!?

 それにしても、相手も負けず劣らず堂々としている。

 変態でなければ惚れてしまいそうだよ。


「まったく、初対面の女性に告白だなんて……まさか君、女装した男じゃないだろうな?」


「ブフォォッ! ケホッ、ケホッ!」


 ちょっとリリーナさん、なに言っちゃってくれてるの!?

 一瞬、自分に向かって言われたのかと思って、心臓が止まりかけたよ!

 

 額にだらだらと冷や汗が浮かぶ。

 そんな僕の顔を、令嬢がじーっと凝視していた。

 青く澄んだ水晶の瞳がすべてを見透かしているようで、生きた心地がしない。

 もしかしてバレた?


 しかし彼女は、小さなため息を吐いて淡々と告げた。


「私が女装した男? そんなわけないじゃない。でも、女装した男の人だっていてもいいと思うわ」


「……なんか悔しいが、それには同感だ」


 お? あのリリーナさんが押し負けてる?

 わずかでも、悔しそうに頬を歪ませてるなんて貴重な光景だ。

 とは言っても、なんだかんだでこの二人、実は気が合うんじゃないだろうか。

 変態だし、セクハラするし、女装に寛容(かんよう)だし。


「そういうあなたは、彼女のなんなの? 私と彼女がいい雰囲気になっていたのに、無粋ぶずいにも邪魔をしてくるなんて」


 いやどこが!?

 どこら辺がいい雰囲気だと思ったの!?

 全然空気が読めてないじゃない!

 独特な雰囲気を持つ人だとは思っていたけど、いよいよ理解不能だ。


 すると、リリーナは勝ち誇ったように胸を張って堂々と告げる。


「彼女、ルノ・カーストのご主人様だ!」

 

「そう、そちらのお嬢さんはルノちゃんと言うのね。では、交渉といきましょう。おいくらでそのご主人様の座を譲って頂けるのかしら?」


 とうとう金銭的な交渉に発展したぞ。

 僕はあわあわと視線を右往左往しながら見守るしかできない。


「まさか君、イケナイご主人様になるつもりか?」


「……ニヤリ。理解が早くて助かる」


「ふんっ、ルノは売り物じゃないのでな。おととい出直して来なさい」


「前言撤回。このわからずや。変態ご主人様」


 あっ、それには全面的に同意します。


「なにぃ!?」


 二人はバチバチと火花を散らす。

 いつの間にか通行人たちの注目を集めており、絵画売りの少女も、僕もオロオロするしかできない。


「「ふんっ!!」」


「今日のところは退いてあげるわ。私はアリエス・コリン。ルノちゃんのご主人様、あなたのお名前は?」


「リリーナ・クイント」


「ではリリーナさん、次会ったときは、ルノちゃんの脱ぎたてパンツを用意しておくことね」


 まるで「首を洗って待っていることね」とでも言うかのような挑発的な言い方だが、変態でしかない。


「うちのルノには、二度と近寄らないでもらおうか」


「お断りするわ。それじゃあルノちゃん、ご機嫌よう」


 アリエスは丁寧におじぎをして、優雅に去って行く。

 う~ん、口さえ開かなければ、相当な美少女なんだけどなぁ……


「はぁぁぁ……」


 僕はなにもしていないにも関わらず、どっと疲れた。


 来た道を引き返し、屋敷へと歩きながら、リリーナが頭を押さえてやれやれとため息を吐く。

 

「まったく、とんでもない変態に出会ってしまったな」


「いや、あなたがそれを言いますか」


「なにか言ったか?」 


「さぁ? ご自身の胸に手を当てて聞いてください」


 僕はつーんと口を尖らせてそっぽを向く。

 すると頬を彼女の細い指が突っついてきた。

 なんだかんだ言って、僕を守ってくれたのはちょっぴり嬉しかったので、しばらく好きなだけ突つかせる。


 ようやく満足して手を下ろすと、リリーナは難しい顔で呟いた。


「それにしても、まさか彼女がアリエス・コリンだったとは」


「あの方のこと、ご存知なのですか?」


「芸術界では少し有名だからな」


 芸術界?

 ゴスロリのデザイン繋がりだろうか?


「もしかして、貴族のご令嬢だったり?」


「確かに上品な装いだったけど、彼女は商人の娘だよ。と言っても、ルビー商会という規模の大きい宝石商の会長令嬢だから、それなりに裕福だろうけど」

 

「そうなんですね。ずいぶん熱心に絵を見てらっしゃいましたけど……」


 こう言っては失礼だが、裕福なお嬢様がああいう貧しい()の描いた絵に興味を持っていたのは意外だ。

 貴族御用達(ごようたし)の大きなアートギャラリーのほうが似合う。


「彼女が芸術界で有名だと言った理由はそれだ」


「と申しますと?」


「天才的な目利きを持つ、アートコレクターなんだよ」


「あぁそれで、熱心に絵を見られてたんですね」


「彼女は集めるだけじゃない。その絵と画家の素質を見出すことに長けているんだ。なんでも、将来的に価値が高騰する絵を見極め、オークションなどで売買し、莫大な利益を稼いできたのだとか」


「す、凄い……」


 驚いた。

 天才には変人奇人も多いと聞くけど、まさか彼女がその典型だったなんて。

 確かに、絵を見ていた彼女の雰囲気は不思議で近寄りがたいものがあった。


「金銭的な交渉を持ちかけてきたのも、財力があるからだろうね。それでも君を手放しはしないけど」


「はい、頼もしいです」


 アリエスに正体がバレるのはまずいが、美術における天才的な目利きというのは興味深い。 

 そんな女の子に見初(みそ)められたというのなら、僕だって悪い気はしないのだから。


 まあ、変態に違いはないけど。


もし「おもしろかった!」「続きが気になる!」と思って頂けましたら、この下にある☆☆☆☆☆から作品への評価をお願いしますm(__)m

ブックマーク追加も一緒にして頂けると嬉しいです!

ランキング1位を目指しますので、どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ