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━━対トナル類イノ者━━
━━それは、身動きがとりづらく、とても窮屈な空間にいた。
温かい膜に覆われ、脈打つ鼓動が心地良い。
しかし、頭に強い衝撃を受けてからは、何も感じず、意識が遠くなり、ただの肉塊となった。
やがて、初めての感覚に襲われる。
豊かな香りに木の葉が重なりあう音、眼に光が刺し、草が肌に触れる。
それにとってこの場所は、眩し過ぎる地だった。
すると、目の前に影が現れ、大樹の“花”を一つ摘み取った。
割ってみせると、真っ赤な果肉が露わとなり、濃厚な匂いがそれを誘う。
“花”を差し出して口につけると、それは、一瞬で甘い味覚の虜となった。
本能のままに食すと、気分が満たされ、瞼も重くなり、眠りについた。
“無知は罪”、“知らぬが仏”。
生憎、この世界には、神などというものは実在しない。
何故なら、ここは━━。