7話 ゴブリン狩り
ギルドの2階にある軽食屋を出て、3階にある武器屋に向かう。
受付でもらった本にギルド内の武器屋は、量産品だか安く武器を買うことができると書いていた。
オーダーメイドをしたかったり、業物が欲しければ町にある専門の店にいくのがいいらしい。
俺の場合二本買っておきたいし、今は借金生活なので、少しでも節約だ。
初心者解説本には軽く目を通したが、色々と役に立ちそうなことが書いてあって助かった。
先人の知恵は偉大だ。
まず、レベルやスキルには上限がある。この上限は個人差があり、またタレントスキルでも変わってくるのだ。
つまり、魔法使い系のタレントスキルを持つ人が苦労して剣術のスキルを得ても、レベル1で最大になることもあるということだ。
上限解放系のタレントスキルである「無限回廊」を取っておいて本当に良かった。それなりにデメリットもあるが、スキルにも上限があるとは考えていなかった。
また、レベルを上げることで基礎的な能力も上がるようだ。最初の方は感じにくいが、高レベルになれば恩恵も大きい。
補正系スキルは、掛け算のような形で能力を上昇させるのでベースが高ければ補正量も大きくなる。
あとは、スキルの違いについても知ることが出来た。
タレントスキルは、なんとなく分かる。その人の才能みたいなものを表しているのだろう。
自分が何に適しているのかを事前に知れるなんて、親切なものだ。まあ、逆に言えば生まれたときから人生を決められているので、一概にいいとは言えないが。
パッシブスキルも、分かりやすい。補正系で常時発動されている。
分かりにくいのが、アクションスキルとアクティブスキルだ。任意で発動するスキルであると言う所は共通しており、何が違いなのかと言うと、スキルの性質によって分けられている。
例えば、アクションスキルは、魔法とか武術とかそんな感じの攻撃的なものや激しい行動を伴うものが分類され、アクティブスキルは、料理や伐採、罠解除みたいな生活的なものや、補助的な技能が含まれている。
ユニークスキルは、通常のスキルより特殊で珍しいものが多いそうだ。
メンタルスキルの場合は、その人に深く根差したスキルでユニークスキルよりも貴重だ。俺の場合も、属性スキルや誓約などで、なんとなく理解できる。
本で分かったことを短くまとめるとこんな感じだ。
「いらっしゃい!」
武器屋のなかに入ると、職人着を来た背の小さな男の人が出迎えてくれた。もしかしたら、ドワーフなのかもしれない。立派な髭を持っていて子供には見えないし。
「槍が欲しいんだがあるか?出来れば安くて頑丈なやつで。」
「槍か。なら、こいつでどうだ?」
そういって渡された槍を持ってみる。軽く動かしてみてさらに、片手でも持つ。
いい感じだ。こんなものだろう。
「これと同じのやつもう一本買おう。いくらになる?」
「まいど!二つあわせて、20000シールだ。」
お金を払って武器を受け取り、ギルドを出た。
日が暮れるまでまだ、4時間くらいはありそうだ。
宿はギルドに併設されている、カプセルホテルのような格安宿を利用しようと思っているが、向かうのはまだ早いだろう。
槍も試したいし、そもそも全くの初心者の俺がどれくらい扱えるのかも気になる。そう思い、南門の方へ足を進めた。
南門を出てから、歩いて20分くらいの所にある雑木林に俺は来ていた。
魔物も冒険者と同じようにランク分けされていて、どうランクの一級冒険者が問題なく倒せることを基準としている。
その中でも、ここはFランクの魔物であるゴブリンの住みかだ。
槍の感覚をつかむには、ちょうどいい相手だろう。
「ギギィ」
聞き覚えのある声、ゴブリンだ。この雑木林には、たくさんのゴブリンがいて、繁殖速度も早いので新人を鍛えるのにちょうどいい場所となっている。
今のように、すぐゴブリンを見つけることができるのだ。
持ってきた二本の槍を構える。
すると、自然としっくりくる。ゴブリンがこちらに飛びかかってくるが、どうすれば当たるのかがわかった。
スキルによる補正は想像以上のようだ。補正はあくまで補正なので、元の能力を鍛えるのももちろん必要だが。
両手に持った槍の内、右手にもっている方をゴブリン目掛けて、素早く突き刺す。槍は、ゴブリンを容易く貫通し、動きを止めた。
槍を引き抜き、血を振り払う。
「すごいな。スキルを得るだけでこうも違うのか。」
これならあのときのように、オークやゴブリンに囲まれても何とか切り抜けれそうだ。
それに、面白いことを思い付いた。
あと、ゴブリンの死体から魔石を取り出すのを忘れない。小さなかけらなので探すのに苦労した。取り出すのには、ギルドの武器屋でついでに買っておいたナイフを使う。
ゴブリンの魔石は、ギルドの常時依頼にあるゴブリン討伐の討伐証明になる。
安いので全然儲からないが、ランクを上げるための点数にはあるので、しっかりと回収しておく。
少し歩けば、すぐに別のゴブリンを見つけることが出来た。
まだ、こちらに気づいていない。
ちょうどいい、さっき思い付いたことを試してやろう。
いつもと同じ感覚で魔力を集めフォルテを発動させる。
ただし集めるのは、手のひらではなく槍の先端部分だ。
「ランス・フォルテ!」
槍の先端から、槍の形状を保ったまま衝撃波が飛ぶ。
そのままゴブリンにぶつかり、ゴブリンに穴が開いた。
「いつものより、貫通力がありそうだな。」
しかも、使用魔力は手のひらから打つ通常フォルテと同じだ。
だが、こっちの方が色々と便利そうだ。
本当にフォルテは、応用が聞く便利なスキルだ。
希少なメンタルスキルなだけある。
時間はまだあるし、色々と試してみよう。そう思いながら、史也は新たなゴブリンを探して、雑木林の中を進んでいった。




