5話 冒険者
意識が徐々にはっきりとしてきた。
どうやら、死んだわけではなさそうだ。いや、またあの神様のところに連れていかれたのかもしれないが、それにしては体の感覚がしっかりと残っている。
意識が落ちる前に人を見た気がするがその人が助けてくれたのだろうか。
最悪の場合、あの赤い化け物に捕まえられたとかもありそうだが、前者の方で会ってほしい。
ようやく見つけることが出来た人だ。
町の場所やら、スキルとか聞きたいことは多い。
それにいい加減、安全な町にでも行ってゆっくりと休みたい。
「どうすんのよ!依頼も受けてるのに。
また、変なのを拾ってきて。」
女の人の声が聞こえてくる。未だに若干の頭痛が残る頭に響いてくる。正直、少し静かにしてほしい。
てか、変なのって。
「変なのとは失礼ですよ。ですが、回復魔法が聞かないのは困りましたね。この様子ですとポーションも効かなさそうですし。」
「ほら!私たちに出来ることはないのよ!
その辺に転がしておいて行くわよ。」
「まあまあ、ルークがこうなのは、いつものことだろう。」
うっすらと目を開けると、そこには四人の男女がいた。
さっきから地味に俺を捨てようとする、耳がとがったエルフのような女性。
終焉属性のせいで回復魔法が効かない俺に回復魔法をかけてくれていたらしい、白っぽい服をきて杖をもっている小さめの女の子。
推定エルフの女性をなだめていた、ひょろそうに見える若い男と、ルークと呼ばれた俺を助けてくれただろう金髪の直剣使いだ。
「レッドオークに襲われていたんだ。冒険者のようには、見えないし危なそうだったから助けないわけにはいかないだろ。
それに、案外奴らの住みかを知っているかもしれないぞ。」
あの化け物オークなのか、ムキムキすぎて正直オーガとかかなーって思ってたのに、外したようだ。
俺が目覚めたことに気が付いたのか、ルークがこちらに近づき、水の入った水筒のみたいな筒を渡してきた。
「もう目が覚めたのか。水だ、飲みな。
気分はどうだい?」
「ありがとう。よくはないな。まだ、少し頭がいたい。
あんたが、助けてくれたのか?」
「ああ、危なかったからね。」
「助かった。ありがとう。
迷惑をかけてばかりで悪いんだが、いくつか質問をしてもいいか?」
どうやら、オークに捕まるという最悪の事態は回避出来たようだ。
あのときは、本当に危なかった。レッドオークだったか。エアフォルテに耐えられるやつが隠れているなんて思いもしなかった。
「あんたが、先に答えなさい!
オークたちの住みかを見ていない?オークに追われていたんでしょ。」
ルークが頷こうとしていたのを遮って、エルフが会話に割り込んでいた。相変わらずの声量で、じわじわどダメージを与えてくる。
オークの住みかって巨木の上から見えたあれのことだろうか?
「すまない、気にしないでくれ。
彼女は、エルフのリーラン。根は悪いやつじゃないんだが、少し口が悪い。
それで、あっちの杖をもっている方がルル。もう一人の黒髪の男が、セシルだ。」
やはり、彼女はエルフであったようだ。エルフがいるならドワーフとか他の種族もいるのだろうか。いるなら、一度会ってみたい。
「俺たちは、冒険者でパーティーを組んでいるだ。それで、依頼を受けてこの森に来ていた。そこで君に出会ったと言うわけだ。」
「依頼って、そのオークの住みかを見つけることなのか?
それっぽいのに心当たりはあるのだが。」
「ほんと!」
少しでも彼らに恩返しを出来ればと思い、木の上から見た情報を伝える。
正直、リーランの変わり身の早さには驚いた。
先ほどまでの、鋭い目付きも向けられなくなった。ルークが言う通り悪いやつじゃないようだ。
「予想より少し規模がでかそうだ。」
「これくらいなら、問題ないでしょう。」
「よし、決まりだ。今日中に下見を終わらして、明日攻めよう。」
彼らは、あの集落に攻撃を仕掛けるようだ。俺はもちろん、いても邪魔になるので、町の場所といくつかの質問をしてから別れることにした。
「この街道をまっすぐいけば町につくはずだ。魔物はほとんどでないはずだが、気をつけて行けよ。」
「ああ、何から何までありがとう。今度会ったら何かお礼をさせてくれ。」
「町にあるお店でパフェを奢ってね!」
リーランにパフェを奢ることを約束させられ、ルークたちと別れた。てか、普通に日本の食べ物あるんだ。
別の転生者が広めたのかな。料理が得意でもなく、成績も平均的な俺には真似できそうにはない。
色々と教わることが出来てよかった。お世話なったし、また会ってお礼をしたい。リーランには、パフェで。
依頼が終われば、俺がこれからいく町に戻ってくるそうだ。
なりより、この世界の人生においての目標を見つけることが出来た。
ルークによると、魔物を狩って生活している人々のことを冒険者というらしい。
これは、冒険者という制度の原型を作った英雄的人物が持っていたタレントスキルの「冒険者」から、取ったものと言われているそうだ。
冒険者は、能力に応じてランク分けをされていて、その冒険者のなかでも特に強い人々のことをランカーと呼ぶそうだ。
ここには、冒険者になるためにやってきたのだ。どうせなら、目指してやろうじゃないか、トップランカーを!




