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4話 魔物の群


「ああ、くそっ」


「キィキィ」


「グガァ」



あれから集落を通りすぎて少し行ったくらいのこの場所で俺は囲まれてる。

もちろん可愛い女の子に囲まれてなんてことはない。

そもそもここは森で、人にすら俺はまだ出会えていないのだ。



この世界に来てからは珍しく順調に進めていた。

30匹くらいいるだろう推定ゴブリンたちと、それを率いる5匹の化け物にさえ囲まれるまでのことだが。





きっかけは一匹のゴブリンであった。

ゴブリンは、この世界に来てから一度倒しているし、それもおそらくオーバーキルだったはずだ。

魔力押さえ目でも大丈夫だろうと思い、右手をゴブリンに向ける。



「キィイイイ、、、」



叫ばれて耳が痛かったが、いつもの様にフォルテを放ち問題なく倒すことが出た。

一応確認してみるが、レベルは上がっていない。

こんな呑気にたたずむ暇があったら、その場を離れるべきだったのだ。



正直このときの俺は油断していたのだと思う。前は歯が立たなかった化け物を倒すことができて、気が緩んでいたのだろう。



やつらの叫び声に意味があるとなど考えもしなかった。




それからは早かった。

先ほど倒したゴブリンの親玉なのか、例の化け物たちがゴブリンを引き連れてあつまってきて、気がつくと囲まれていたのだ。




ピキィ



ふと音がなった足元を見ると、史也がさっき来た方向を向いて転がっているなぜか見覚えのある気の棒を見つけた。

ゴブリンたちに注意しながら、周りを見渡してみればこちらも見覚えのある風景だ。



「これは。

 あのとき、てきとうに転がした木の棒じゃねーか!」



どうやら、正解のルートをおもいっきり反対に進んでしまっていたようだ。

木の棒なんかに頼った自分が悪いのだが、もし反対に進んでいれば今頃森から抜けれていたと思えば、少し腹が立つ。



「くそっ!」


「ギィ!」



イライラして、てきとうに周りにいたゴブリンのうちの一匹に投げつける。

そのとき、なぜか木の棒が手にしっくりときて、ゴブリンの頭の中央めがけて飛んでいった。


そのままゴブリンに突き刺さり、棒は折れたがゴブリンも倒れた。



「なんだ?いまの、」



今まであのようなことは出来なかったので、スキルが発動したのだろう。

おそらく槍術補助が、棒を投げることにも適応されるのだと思う。



「ガァァァア!」


「「ギィ!ギィ!」」



仲間を倒されたことでキレたのか、化け物の号令でゴブリンたちが一斉に襲いかかってくる。


最初の頃は何とか避けるとこが出来ていたが、攻撃に参加するゴブリンの数が増えるにつれて厳しくなっていく。そもそも、反撃が出来ないのでこのままではまずいだろう。


そんななか、一匹のゴブリンが石器製だと思われる粗末なナイフを向けて近づいてくる。

今からでは、避けるのは間に合わない。



「くっ!フォルテ!!」



この状況で生き残る方法は今の俺には2つしかない。

一瞬、さっきのように棒を投げまくろうかと思ったが、周りに都合よく大量の棒があるわけもないし、そもそも全方位から襲ってくるのに間に合わないだろう。



バーストの方は全力で駆け抜ければ森を抜けれるかもしれないが、その後は疲労感でしばらく動けなくなる。

森の外が安全とは限らないのでこちらは出来れば使いたくない。


なので、フォルテの大技を使うことにした。

魔力はなくなるが、バーストを使って動けなくなるよりはマシだろう。



いつものように右手に意識を向けるのではなく、自分の周囲に向ける。

ありったけの魔力を込めて、自信を中心に円形に衝撃波が伝わっていくのをイメージする。

自分の体を基点にするのではなく、周囲の空間を基点にする。これが、フォルテのもう一つの技だ。


これなら、一方向ではなく全方向に向けて衝撃波を放つことができる。その分魔力の消費が激しいが、これはもっと色々と応用出来そうな気がする。



「ギギァア」



近くにいたゴブリン達から吹き飛ばされていく。

こいつらは問題ないだろう。

なんせ、この空間を基点にした「エアフォルテ」は、大量の魔力を使っている分、通常のフォルテより威力は高い。



さて、親玉たちのほうはどうだ。


化け物のほうも問題なく吹き飛ばされていってくれた。

多少踏ん張り留まるものもいたが、ダメ押しで魔力を込めると吹き飛び木に打ち付けられて倒れた。



「魔力がすっからかんなのもキツいんだな。」



バースト発動後よりはマシだが、それでも中々にキツい疲労感を覚えた。それでも自然回復のおかげか、徐々に楽になっていく感覚がある。


なので、ふらつきながらも、史也は森を抜けようと平地の方へ足を進めようとした。




その直後、後頭部に鈍い痛みが加わり、史也はその場に倒れた。



意識がもうろうとするなか、かろうじて見えたのが、俺の血で濡れている巨大な棍棒を持った化け物の赤色バージョンと、そいつに向けて剣を振るおうとしている軽めの鎧を身につけた金髪の男の姿だった。

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