15話 決戦
足音の元へと近づくと、ハイオークと呼ばれていたやつらよりも、さらにでかくて異様な雰囲気を纏う魔物がいた。
他のオークとは違い赤黒い。
ここまでくれば、もやは別の生物なのではなかろうか。
だが、こいつが親玉で間違いない。
こいつが現れた瞬間、さっきまでこそこそと動いていたオーク達が姿を見せなくなった。
仲間にも恐れられているようだ。
「グガァァァァアア!!!」
自分の棲みかを荒らされて、相当怒っているようだ。
それにしても、こいつといい、ハイオークといい、何でこんな化け物染みたやつがこの森には多いのだ。
巨大オークは、ハイオークと同じように周囲にオーラを纏った。しかし、ハイオーク達とは違って、そのオーラは本体と同じように赤黒い。
そして、巨大オークは、そのオーラを纏った拳をこちらに向けて、急加速し迫ってきた。
あつい。やつが近づく度にチリチリと熱気が伝わってくる。踏み込んだ地面も溶けている。
あの見た目や、この温度から考えるのであれば、これが火属性というものかも知れない。
「エルギアス!」
すかさず、こちらも槍を構え、エルギアスを伸ばして応戦する。
だが、相変わらず巨体に似合わない速度で動くそいつには、容易く交わされ、当たったとしてもオーラに弾き返された。
その間にも距離を縮められ、ヤツの拳の間合いに入ったと思われる所で、もう一方の槍を構える。
「ルカギアス!」
やつの目の前に槍を振り下ろす。当たらないことを分かっていたのか、避けもしなかったそいつのオーラに切れ目が入る。
やつは、一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにこちらに向き直った。そのときには、もうオーラは再生していた。
なるほど、一度無効化したからといっても、オーラを出すもとを潰さなければ完全に使用不可には出来ないようだ。
再度纏ったオーラを拳に集中させ、振り下ろしてきた。
今から避けるのは間に合わない。ルカギアスを切り返しても手遅れだろう。
なら、選択肢は一つだ。受けきる。
「エルギアス《形状変化「四面扇」》」
エルギアスの4又に別れている先端の根本を、それぞれ扇の様に展開させる。
それらを合わせて円形の盾を作り、巨大オークの受ける。
数メートルほど後ろに押されたし、盾の隙間から入ってくる熱気が暑い。肺が焼けそうだ。
多少のダメージは受けたが、致命傷とまではいかない。
これは、相手にも言えることだが。
とりあえず、すぐにでも飛びかかって来そうなやつを牽制するため、「ランス・フォルテ」を飛ばしておく。
不可視の衝撃波であるはずのフォルテが何故かかわされるし、「エア・フォルテ」を打ち込んでやっても、オーラのせいで弾かれる。
そして、お返しと言わんばかりに、やつから拳サイズのオーラがこちらに飛ばされてくる。
避けられるものは避けて、厳しいやつはルカギアスで打ち消す。
エルギアスを全力で伸ばして、少しでもやつの動きを妨害することも忘れない。
やつの拳を直にくらいたくはない。だから、出来るだけ距離を離して戦いたい。
たが、そうすればお互いに決定打にかける。一気に仕掛けれるほどの実力差がないのでそうするしかないが。
中々に、長引きそうだ。
だいぶ、日も傾いてきた。
あれから、どのくらいやり合ったのか。
息切れして、呼吸が苦しい。
息を吸う度に肺が痛む。かなり、焼かれたようだ。
血を流しすぎたのか足音がふらつくし、目に入ってきて視界が霞む。
だか、俺ばかりが攻撃を貰っているわけではない。
先ほど、身体中から絞りきった魔力を込めたルカギアスを叩きこんでやり、右手を落としてやった。
魔力切れによる疲労でふらつくが、それはやつも同じようだ。
オーラに群れが目立つし、所々で消えかけている。
「グガァァアア!」
やつは、不安定であったオーラを拳にすべて集めた。
どうやら、次の一撃で戦いを終わらせるつもりのようだ。
お互いにこれ以上の戦闘継続は困難だ。
いいだろう次で終わらせてやる。
痛む体を無視して、槍をいつもの形で構える。
鋭い目付きを向け続けてきているそいつと目が合う。
覚悟は決まった。
同時に踏み込み、一気に距離を詰める。
俺の槍とヤツの拳が合わさる瞬間、ここまで温存してきた切り札を発動させた。
「《フル》バースト!!!」
バーストよりも大幅に能力が上昇する代わりに強化は一瞬、さらに使用後は体が耐えきれずに、どうなるか分からない正真正銘の切り札だ。
たった一瞬ではあるが、超強化された槍をオークに向けて振り切る。
森の中に爆音が響き、その後は今までの騒ぎが嘘であったかのような静寂に包まれる。
多くのオークがいたその場所に立っているのは、今ではたった一人であった。
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