11話 呪い武器
空が雲に覆われており、辺りが薄暗くなっている。今にも降りだしそうだ。
雨に濡れて風邪を引くのも嫌なので、すぐに建物のなかに避難出来るように今日は町の中にいることにした。
既に今後の方針は決めている。
オークの巨木林によって、次の町を目指す。以上だ。
1度殺されかけたこともあり、不安がないわけではないが、スキルも強化され、武器もある。
それに、強くなるためには、強い敵と戦わなければならない。ここら辺で、次のステップに進んでおきたい。
そのためには、前回苦戦を強いられたオークを倒して力をつける。
そして、新しい町に行き、新しい環境でさらに力をつける。
もうすぐ、この町のを出ていくことになるし、旅立つには天気も悪いので、今日は観光がてらセリシアを回ってみることにした。
町の至るところにある露店街、そのなかでも西門付近にあるところに来ている。
ここは、町の職人たちが集まる職人広場に近く、掘り出し物が見つかることがあると聞いてやって来た。
まあ、未だにお金がカツカツなので、それすらも買えるか分からないが。
露店の商品を見ながら歩いていく。
俺のシンプルな量産型の槍とは違い、芸術作品並みの意匠を施された武具や、誰が使得るのか分からない変わった形をしたものもある。
しかし、そのどれもが今の俺の懐からは、出すことの出来ない金額だ。正規の店で買うよりは安いが、それでも俺からしたら中々に高い。
今まで見たなかで俺が買えそうなものといえば、中古の壊れた武器くらいであった。元々は優秀な装備であったのかもしれないが、半ばで折れた槍など買おうとは思わない。
てか、先端の方が折れて失くなっていたら、ただの棒だろ。
商品を見る前に値札を確認するようになり、進むペースが上がってきた頃、俺でも買えそうな値札がずらりと並んだ露店を見つけ足を止める。
また、壊れた中古品かと思いながらも商品を見てみると、普通の武器ばかりであった。
特徴的なのは、どれも全体が真っ黒ということだ。不自然なくらい黒いし、気味の悪いオーラが漂っているようにも感じる。
「どうした、にいちゃん?こいつらが気になるかい?」
「変わった武器だな。異様に安いし。」
「そらそうだ。何せこいつらは、呪い武器なんだからな。
ところで、にいちゃん冒険者だよな?」
「そうだけど、どうして?」
この呪いの武器と同様に怪しげな店主によると、呪い武器は冒険者以外への販売が禁止されているらしい。
危険はあるが、強力ではあるので冒険者のみが一部の呪い武器を使用することが出来る。
呪い武器は二種類にわかれており、まず冒険者に使用が許されているのが、縛り型呪い武器だ。
これは、例えるなら「攻撃力が倍増する!でも、受けるダメージも倍増だー!」見たいな感じで、強力な効果はあるが、その分代償として強力なマイナス要素を受けるわけだ。
俺の「誓約」も、これに似ている。
もうひとつが、代償型呪い武器だ。こっちは「使えば死ぬ!」みたいな感じで、危険なので流通していないそうだ。
この露店にあるのは、もちろん縛り型だが、そのなかでもデバフがキツすぎてまともに扱えないものを安価で売っているようだ。
説明を聞いた俺は気になることがあり、試してみようと店主に声をかけた。
「実際に体験してみたいのだが、いいか?」
「なら、こいつがおすすめだ。
これは、かなり重い金属で作られたハンマーだが、綿のように軽い。これを持っているやつ以外には、その重さが直接伝わる。だが、持っている間触っている手と同じ方の目が見えなくなるんだ。」
「確かに、それは分かりやすいな。」
店主が指をさすそのハンマーを持ってみる。見た目に反して物凄く軽い。投げれば、どこまでも飛んでいきそうだ。
そして、目はいつも通り見えている。
思った通りだ。属性の効果は、武器にも適応されるようだ。
自然回復以外無効で色々と迷惑していたが、初めて役に立ちそうだ。
マイナスの武器の効果を無効にするということは、プラスの効果も無効にされるだろう。この点を考えれば、後々面倒なことになりそうだが、今さらだ。
今回は、利用させてもらおう。
「槍は置いてあるか?呪いの縛りがキツくても気にしない。」
「呪いを気にしないってか。おもしろいな、にいちゃん!
なら、取って置きのを出してやろう。」
そう言って見せられた二本の槍。所持金では足りていなかったが、両方買うといい値切って買った。
持っていたほとんどのお金を使ってしまったが、それだけの価値は十分あるだろう。
その槍は「二槍一対」で作られていた。
ハルバードよりの形をした「ルカギアス」、先端が上から見れば四角形になるように四又にわかれた「エルギアス」。
それぞれに最悪な縛りがついていたが、幸い俺には関係ない。
メリットもバフみたいなのではなく、武器自体の特性のようなものなので、属性の影響を受けない。
早く実戦で試してみたい。戦略の幅も広がるはずだ。
面白い武器を手にいれることができた。オークの巨木林に挑戦する助けになるはずだ。
それにあそこへ行けば、まだ町に帰ってきていないルークたちにも、会えるかもしれない。今日使ってしまったので、お金は返せそうにないが、謝って連絡先みたいなものがあれば聞いておこう。




