1話 異世界へ
「はあぁ」
大きなアクビをした。この炎天下の中、外を出歩いていれば気だるくもなってくる。汗ばんできて最悪だし、近くの工事現場の音もうるさい。
こんな真夏の太陽のもと意味もなく出歩くわけもなく、俺は買い物のに向かっている。今は夏休みだが、高校生にはもちろん宿題があり、それをするのに必要なものがあるからだ。
目的の店まではまだまだあるため、背伸びをして気だるい気持ちを入れ換えた。ちょうど工事現場の真横に来ており、さっきよりもうるさい。
それにしても、この建物はでかいな。何を作ろうとしているのだろう。ビルとかかな。
「おい!危ないぞ!」
誰かの怒鳴り声が聞こえた気がしたが、それを認識する前に俺の意識は途絶えた。
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真っ暗だ。何も見えない。いや、所々に小さな星のような光が見える。
さっきまで何をしていたか思い出せない。まあ、いいか。なるようになるだろう。
することもなく暇なので、周りに散らばる光に触れてみると、霊体のようで感覚をあまり感じなかった体に溶け込んできた。まあ、持って帰って、小さい頃に事故で亡くなった母と父の墓前にでも、供えようかとか考えながら、近くにあるそれらを集めていった。
それから少ししたら、辺り一面が光で覆われた。眩しくて耐えきれずに目をつぶった。
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目を開けると、そこは真っ白な空間であった。そこら中が白で塗りつくされていて、距離感がつかめない。
「初めまして。蓮池史也さん。」
顔をあげると、この世の人とは思てないような整った顔の女の人が立っていた。ここまで情報が出揃えば、ある程度察することができる。
「これが夢じゃないなら、俺は死んだのか?買い物に向かっていたはずなのだが、工事現場が近かったし。鉄筋でもふってきたか。」
目の前のおそらく神様は、笑みを絶やさずにそのきれいな口で言葉を紡ぐ。
「はい、その通りになります。ずいぶんと落ち着いているのですね。」
「自分でも不思議なくらいだ。それで、神様でいいのか?俺がここに呼ばれたのは何かわけがあるのか。」
まあ、俺が落ち着いていられるのは、おいてきたものがほとんどないからだろう。両親も亡くなっており、高校生なので仕事もない。心残りと言えば、友人たちのことだろうか。
「簡単に言えば、そのような存在です。史也さんをここに呼んだのは、お願いがあるからです。」
どうやら、お願いがあるようだ。テンプレで言えば、異世界転移とかかな。
「史也さんが生きていた世界とは別の世界、異世界であるユークリアに行って貰いたいのです。」
当たりだ。
さて、どうしようか。まあ、いいか。楽しそうだし。俺の想像している通りなら、魔法とかあるのかな。そうなら、ぬるりと冒険者でもやってみてもいいかもしれない。
「その前に質問してもいいか。なぜわざわざ異世界から人を送るんだ。」
「はい。詳しくは今から説明しますね。
簡単に言いますと、ユークリアには魔物と呼ばれる生物が存在しています。それらを間引いて欲しいのです。
ユークリアにも、それらに対応することを生業とする人々はいますが、戦闘が得意な人は少なく、定期的に他の世界から素質のある人を送っています。」
「素質か。安全な日本で暮らしていた俺にあるとは思えないが。」
冒険者でもやってみたいと言ったが、運動な特別得意と言うわけでもない。クラスでも平均的である。
「いえ、地球では使われない素質ですので、感じられてないだけでありますよ。
あちらの世界には、スキルと呼ばれるものがあります。魔物に対抗するために、生活を豊かにするために、すべての人々が持っているものです。そのスキルを取得するのに大きく影響を与えるタレントスキルの元となるものを普通の人よりも多く持っています。
例えば、剣士のタレントスキルを、持っていれば剣術のスキルを無条件で得られます。
タレントスキルがなければ、レベルをあげて条件を達成し取得しなくては行けません。」
タレントスキルの元か。もしかしたら、ここに来る前に集めた小さな光が関係しているのか。あのときは不思議に思わなかったけど、体に溶け込んできてたし。
「素質とやらがあるのは分かったが、タレントスキルというのはどうやって決まるんだ。やっぱり、ランダムとか?」
「あちらの世界の一般の人々は1~3個のタレントスキルをランダムで得ます。その構成によって、将来何をするかを決めます。
有名になる魔物を狩ることを生業とするものは、戦闘向きのタレントスキルを5つ程持っていますね。
また、種族や家系で遺伝するものもあります。こちらは、魔物に多くなっています。」
魔物にもスキルはあるのか。人にだけ、都合よくあるわけではないらしい。
魔物と戦うのは危険だろうが、元の世界に戻りたくとも死んでいるのでどうしようもない。記憶をきれいさっぱりリセットされて、赤ちゃんからやり直すのもなんか寂しい。
なら、決まりだ。
「分かった、行こうと思う。ユークリアへ。」
「ありがとうございます!
先程は、タレントスキルはランダムといいましたが、魔物を狩るために行ってもらうのに戦闘系スキルが出ないと意味がありませんので、史也さんには好きなものを選んでもらおうと思います。」
神様がそういうと目の前に、ずらっと文字がかかれたリストが出てきた。かなりの量がある。すべて確認するだけで日が暮れそうだ。
「それで、いくつ選べるんだ?」
「史也さんには、10の枠がありますので、10つ選んでもらうことになります。それとは別に、転移者得点としてタレントスキルが一つと、スキル取得に必要なポイントを渡します。
選び終わったら、転移してもらうので声を書けてくださいね。」
「ああ、分かった。」
10も選べるのか。かなりの量があるし、名前を見ただけではよく分からないのもある。幸い簡単な解説はあるが、確認していたら、さらに時間がかかりそうだ。
まあ、気長にいくか。
初めまして!
閲覧ありがとうございます。
できる限り更新頻度は上げていこうと思います。
一話当たりの文字量は、今の倍くらいを予定しています。




