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第5話 聖女様のトラウマと街デビュー

前話のあらすじ

「魔女ティア」について、書き出しました。楽しい人生のために、世界を救うことにしました。


ついに新しいキャラ(モブ)登場!

 


 思い出せる範囲で小説の内容を書き出した。6巻まで全てなので、気づけばもう夕方だった。お昼を抜いてしまった。お腹すいた。


 だが、その分しっかり記憶を整理できた。とりあえず、先のことを考える前に夕食にしよう。




 夕食は、いつも魔物を狩ってきて、さばいて調理する。解体は父に教わった。日本では血は苦手だったはずが、こっちの世界では毎日見てきた。もう躊躇いは無い。


 空を飛ぶトンビのような鳥に向かって、魔法で小石を飛ばす。小石は見事頭を突き抜けた。魔法で風を起こして、落ちてくる鳥を受け止め、そのまま切り裂いて解体していく。血抜きも魔法で行う。一口大に切るのも魔法で。普通は、魔力を温存するために手で行うものだが、今日は早く食べたいし、いいだろう。


 魔道具のコンロに火をつけ、鳥を焼き、味付けをしたら完成。庭から野菜を取ってきて、サラダにする。前に作ったパンも食料庫から取ってくる。




 いただきます。




 この世界に「いただきます」は無いはずだが、幼い頃から私が自然としていたので、両親も一緒にしてくれていた。前世の記憶は取り戻したばかりだが、習慣は体に染み付いていたらしい。昔はよくこの世界に違和感を覚えたものだ。まさか前世と今世で、世界が違ったからだったとは。




 夕食を食べ終わり、ライを構って、再び書斎へ。さて、これからどうしたものか。



 正直言って、どれだけ早く世界を救いたくても、私にできるのは、聖女のサポートだけだ。しかも、シナリオが変われば、できることもなくなる。となると、16歳までここで待つしかないのか。




 待てない!早くフィオに会いたい!12歳のフィオとか、絶対可愛い!愛でたい!


 オズ様も絶対可愛い!というか、さっさとフィオとオズ様をくっつけたい!元々私はフィオ派だったのだ!




 生で小説の登場人物に会えるとか、こんなに嬉しいことはない。待ちきれない。しかし、今会えば、シナリオが変わってしまう。それではダメなのだ。諦めて、あと4年待つしかない。



 そこで、私はふと気づいた。慌てて先ほど書いた小説の内容を見返す。




 愕然とした。なんと、フィオのトラウマともなる事件が、12歳の夏に起こるのだ。




 小説の内容を書き出すのは、作業でしかなかったので気づかなかった。旅が始まるのは4年後だが、既に登場人物は生きており、事件に遭ったりもするのだ。




 フィオは、まだ聖女であることを公にされておらず、命は狙われていない。しかし、隠されているため、城から出ることができず、友達はオズ様とアレク様だけ。両親は城に勤めていて忙しいため、なかなか会えない。


 そんな中、祭りの時期になり、どうしても祭りの空気を味わいたくて、フィオは城を抜け出してしまう。そこで、人さらいに遭うのだ。次の日には事件は解決し、無事城に戻ってこれるのだが、その時の恐怖から立ち直れず、塞ぎ込んでしまう。そこで元気付けるのがオズ様。そこからフィオはオズ様に恋するのだ。



 恋をするのはいい。しかし、その事件以来、犯人達に姿や声が似ている者を、ひどく怖がるようになる。旅の途中でも、それによってトラブルが起きたりするのだ。


 フィオのトラウマ。恋愛イベントとしては大切かもしれないが、そんなことを言ってはいられない。フィオの心を傷つける訳にはいかない。




 フィオは私が守ってみせる!




 幸いにも、祭りまであと10日ほどあったはず。ここから王都までは馬車で1週間ほどだから、なんとか間に合うだろう。



 となれば、準備しなければ。いるものは、お金と食料と服。馬車に乗ったり、宿に泊まったりする分のお金がいる。これは、ポーションを売れば大丈夫だろう。食料は、狩りの必要が無いようにしたい。あとは服だが、私は黒無地のワンピースしか持っていない。これが見習い魔女の正装だ、と母は言っていたが、今回は王都へ行くのだから、この格好では浮いてしまうだろう。


 これらの準備となると、街に出る必要がある。ついに街に出るのだ。初めての街。緊張するが、急がなければ。フィオを助けるためにも、王都の地理を把握しておく必要がある。王都に着くのは、早ければ早いほどいい。



 だが、すでに暗くなりつつある。街に出るのは明日になるだろう。ならば、今のうちにフィオを救う作戦でも立てておこう。




 フィオが拐われるのは、祭りの日の夕方。道の端を歩いていたフィオを、狭い路地に引きずり込み、薬で眠らせて拐うのだ。


 小説では、フィオが救出される際に、フィオ以外の拐われた子達も発見されるので、フィオを守るだけでなく、犯人を捕まえて、その子達も助けないといけない。


 1番良いのは、祭りの前に解決すること。フィオに会わずに済むため、シナリオも壊れない。しかし、別の事件が起こるとも限らないから、フィオを守る必要はあるだろう。


 祭りまでに見つからなければ、フィオが薬で眠らされた所を尾けて、フィオが起きる前に片をつける。それなら、フィオが傷つくことはない。




 普通の12歳の少女にできることではない。しかし、私は普通ではない。あの両親の娘であり、17年日本で生きた記憶もある。高度な魔法も使えるし、精神年齢は他の子より高いはず。




 絶対フィオを守ってみせる!




 決意を固めて、いつもより少し早めにベッドに入った。明日は街に出るのだから、しっかり眠っておかないとね。




 ----------------------




 目が覚めると、いつもの天井。だが、少し違和感。前世を思い出したせいだろう。朝の日課を済ませて、街に出る準備をする。といっても、ポーションを鞄に詰めるだけだが。


 ライには、手のひらサイズまで小さくなってもらった。1人では不安だから、ライにも一緒に来てもらうのだ。肩に乗って、私の髪の中に隠れてもらう予定だ。


 街までは、歩いて1時間ほど。家には結界を張っているため、大規模な魔法を発動しない限りは、家の存在は気づかれることもない。




 さあ、街へとレッツゴーだ!




 と意気揚々と歩き出したが、続々と魔物が現れる。この森は魔物がかなり多く、たまに討伐して数を減らさないと街に被害が出るため、両親がしていたように、私も討伐をよくしている。狩りとはまた別のものだ。食料としては美味しくないものもけっこういるからね。


 まあ、この程度の魔物、私の敵ではない。水の矢を急所に放って終了だ。今は処理をして時間を取られたくないので、魔法で血抜きだけして、帰りに回収することにした。



 そして、1時間後。ついに街に着いた。小さいが、なかなかに活気ある街のようだ。しかし、出入りするには門を通らなければならない。魔物から街を守るために、周りを塀で囲っているのだ。


 私には身分を証明するものがない。皆プレートのような物を門番に見せているが、そんなもの持っていないのだ。発行できるだろうか。未成年は無理とかだったらどうしよう。しかし、門からしか出入りはできない。とりあえず、行ってみるか。


 列に並ぶと、すぐに自分の番が回ってきた。門番のお兄さんに呼ばれる。



「次の人ー。ん?嬢ちゃん、一人旅か?とんがり帽子って。古い魔女かなんかかい?」



 とんがり帽子は、昔は魔術師の正装として、皆が身につけていたが、いつからかその風習はなくなり、今では身に付けるものなどほとんどいない。らしい。母からの情報だ。



「魔法は得意なので、魔女ですね。街に入っても?」

「いや、身分証を見せてくれ。」

「…すみません。身分証を持ってないんですが。」

「無いのか?失くしたか?なら、新しく発行するか。発行には100ベルかかるが、いいか?」



 発行できるようだ。よかった。しかし、お金がかかるとは。ポーションしかないのだが。



「すみません。今お金無くて…。ポーションを売ってお金にしようと思って、ここに来たのですが。」

「そうか!嬢ちゃん、ポーション売りに来たのか!ポーションだったら、ここで俺が買い取ってお金にすることもできるぞ。100ベルだと、下級回復ポーション5本ってとこか。」



 おお!この人、すごく良い人!換金してくれるなんて。しかも、ちゃんと相場通りだ。若いからって、足下を見たりしない。両親以外で初めて話す人がこの人で良かった。でも…。



「申し訳ないのですが、ポーションは、中級しかないのです。中級を2本ではダメですか?」



 そう。12歳で上級はさすがに驚かれるだろうが、下級では数が必要になるため、中級しか持ってこなかったのだ。家にはあるのだが…。



「中級!?その年で中級か!いや、むしろ助かるよ。もっと売って欲しいくらいだ。」

「10本までなら売れますよ?」

「じゃあ頼む!また買いに行こうと思っていた所だったんだよ。じゃあ、身分証発行するから、ついてきてくれ。」



 よかった。これで街に入れそうだ。門の側の部屋に案内され、椅子を勧められた。



「じゃあ今、必要な物取ってくるから。少し待ってろ。」



 門番さんは、走って行ってしまった。久しぶりの人との会話も大丈夫だったし、街デビューの滑り出しは上々なようだ。



フィオ大好きな主人公。

そしてついに街デビュー。

前世では経験済みだが。

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