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第34話 街での治療と戦闘

前話のあらすじ

門番の話を聞きました。街が危機でした。助けることになりました。とても後悔しました。なんとか切り替えました。


街の危機を救います。

 


 突然現れた私。正確には、気配遮断魔法がライによって突然強制解除された、だけどね。


 驚く皆。でも、さすが。立ち直りが早い。呆れたような目で見ているのが大半。ひどいよっ!



「…リリア?今度はどうしたの?」

「今度は、って…。えっと、ですね。」

「ちょっと待って、その血!どうしたの!?」



 フィオが苦笑いで尋ねてきた。その言い方だと、私が何度もやらかしてるみたいなんだけど?まあ、自覚はあります…。


 説明しようとしたんだけど、その前に手の血に気づかれた。フィオはすぐさま私の手を取り、治癒魔法をかけようとする。となると、焦る私。



「ちょ、待って!治癒なら自分でするから!フィオは重傷者のためにも、魔力温存しといて!」

「え、あ、そうだね。その方がいいかな。でも、リリアもいるし…。」

「私は治癒魔法より薬学の方が得意だから。ポーション配りに専念するよ。」



 街での役割を考えると、フィオはもしものためにも魔力を温存しておくべきだ。私は魔力底なしだからいいけど。さっさと治癒魔法で治す。


 街で私は、軽症者のためにポーションを配る予定。マジックバッグじゃないリュックに、売るためのポーションを大量に詰めてきたから!まさか、ここで使う事になるとは…。



 …アレクがジト目で見てる。話がズレちゃったね。ごめんなさい。



「リリア。その手、どうしたの?」

「突然現れた事についても、説明してもらいたいですね。」

「というか、まず、何で隠れてたんだよ。何かあったか?」



 フィオ、テオ、ゼフが、次々と私に質問を投げかけてくる。順番に説明しないと。



「手は、強く握り締めすぎちゃっただけだよ。突然現れたようになったのは、気配遮断魔法を解いたから、かな。隠れてたのは、その、嫌な予感がしたから、もしものために姿消しとこうかなー、って。」



 はぐらかす形にはなっているが、嘘はついてない。質問にそのまま、答えました。でも、皆が納得した様子はない。まあ、そうだよね。



「どうして、血が出ちゃうまで握り締めたりなんかしたの…?

「…感情が高ぶって。怒りを抑えるため、かな。」

「気配遮断魔法を解いたのは、何故ですか?」

「気持ちが落ち着いたし、門番さん達良い人だったから、解いて良いかなって。突然になっちゃったのは、ホントごめん。」

「嫌な予感、ってのは?」

「たぶん、街の事かな。もしかしたら、門番さん達が悪い人だったりするかも、って勘違いで警戒しちゃったんだけどね。」

「…まあ、わかった。だが、もう少し周りの事を考えてくれ。」

「ごめんなさい。」

「ったく、心配させやがって…。」



 皆、なんとか納得してくれた。オズには叱られちゃったけど。でもそれより。




 アレクがデレた!ぼそっとだけど、聞こえたぞ!




 ツンデレだー。私の事、心配してくれたんだなあ。可愛いやつめ!でも、言うと照れて反論してくるだろうから、心のうちに留めておく。あー、録音したかった!




 てな感じで、私のせいでぐだっちゃったけど、改めて街へ!オズとアレクは、領主館に門番と行って、油断させてから叩く。人質の場所を聞き出す。残りは街で負傷者の治療。人質も探す。


 作戦開始だ!




 街に入ったが、メインストリートには全く人がいない。皆家の中だ。まずは冒険者ギルドへと向かう。場所は門番達にあらかじめ聞いてある。


 門番達は、1人は門に残り、1人はオズ達の案内。もし他に人が外から来たら、対応しなければならないから、街の案内には人が割けなかった。自分達で事情を説明し、やるしかない。




 ギルドを見つけた。かなり大きな建物だ。冒険者の街にふさわしいと思うが、中から冒険者達の騒がしい声がする事はない。


 6年前は、冒険者登録に来たな。懐かしい。本当なら今日、皆のパーティーに登録する予定だったのに。



 周りを刺激する事がないように、そして、もしもの時に対応できるように、私が先頭に立って、ギルドの扉を開ける。中は、昼間とは思えない薄暗さ。人はそこそこいるようだ。



 私達に気づき、殺気立つ冒険者達。受付の女性達は震えている。私達を領主側の人間と勘違いしているようだ。



「…誰だ。」

「…ピードとバン。」

「っ!」

「門番のお2人に、この街の事を頼まれました。私はポーションを持っています。彼女は治癒魔法が使えます。怪我人を集めてください。治療します。」

「…本当か?」

「危害を加える気があるなら、すでにしています。早く、バレないよう静かに、お願いします。」

「っわかった!野郎ども!」



 門番達の名前を出して、事情を説明すれば、すぐに信じて動いてくれた。通常ならもっと疑っていたかもしれないが、今はそれより、この希望にすがりたかったのだろう。反論する者など、誰もいない。



 フィオはすぐに重傷者のいる場所へ。もしものためにテオがついていった。私はゼフと一緒に、集まってきた軽症者達にポーションを配る。街の冒険者と共に民家を回る。そして、人質の居場所の情報を集める。



 人質の居場所については、領主館のどこか、としかわからないようで、なかなか有力な情報が得られない。私はある人を探すが、見つからない。



「ゼフ!どう?」

「ダメだ。これは、オズとアレクに任せて待つしかないか…。」

「リリア!重傷者の手当て、終わったよ!」

「まだ街に食料などはあるみたいですし、人質さえ解放できれば…。」



 ギルド前の広場で合流する。重傷を負ったという冒険者はフィオの治癒魔法であっという間に全快したらしい。皆興奮して、声を抑えるのに必死だ。


 乱暴に扱われて怪我を負っていた人達も、ポーションで十分治った。街にあったポーションは、金の代わりに領主に奪われて、困っていたらしい。これでこっちのやる事は終わった。



 あとは、人質が…。あ!



「おい、お前ら!そこで何してる!」



 領主側の人間5人に見つかった。おそらく、例のCランク冒険者パーティーだ。街の人達は怯え、冒険者達は苦々しげに睨みつけている。


 そこで街の人達の前に立ったのは、ゼフ。



「…ん?お前、何だ?」

「…お前らだな、街の人達をこんな傷つけたのは。」

「はあ?何だお前、俺達がこの街の冒険者ブッ刺したの見てなかったのかあ?ガキが粋がりやがって。」

「…お前らは、俺が切る。」

「はっ!やれるもんならやってみろや!」



 ゼフの怒り、敵意に煽られ、冒険者達が戦闘態勢に入る。ゼフも剣を抜く。




 初めに動いたのは、さっきまで話していた男。大剣でゼフに迫る。だが、ゼフはその剣をさらりと受け流し、そのままカウンターで男の胴に一撃を入れる。男は防具をまとっているとはいえ、なかなかに効いたようで、よろめいている。


 続いて、焦ったように魔法を放つ女。水魔法が飛んでくるが、ゼフは避ける事なく全て剣で切る。そして横一閃。斬撃が雷鳥となって、魔法使いの女とその後ろの治癒師の女を貫き、2人は気絶。


 そこに不意をついて放たれた矢。当たるかと思われたが、驚くべきスピードで剣を操り、矢をあっさりと弾く。そして、瞬時に懐まで潜り込み、弓使いの男を切り伏せる。


 息つく間もなく仲間をやられ、焦った槍使いの男が後ろから突きを放つ。だがゼフは、慌てる事なくその槍をいなし、次の横払いで槍を大きく弾き、無防備な体を蹴り飛ばす。


 残った大剣の男が、再び斬りかかるが、ゼフの方が速い。気づけば男の後ろにいて、男は膝から崩れ落ちる。


 軽く剣を払って、鞘にしまう。




 ゼフの完全勝利だ。




 街の人達から、大きな歓声が上がる。泣いて抱き合って喜んでいる。フィオやテオは、どこか自慢げな様子で笑い合って話している。



「さすがゼフ!瞬殺だね!あの雷鳥の斬撃、いつ見てもカッコいいなあ!」

「やっぱりゼフは強いです!どんな攻撃が来ても冷静に対処して、余裕がありますよね!」




 ゼフは、油断なく5人をロープで縛り上げ、武器を回収。いつもの爽やかな笑顔でこちらに戻ってくる。



「これで街の人達も安心だな!」



 その言葉に、射止められた女性多数。目がハート。男達も「よっ!英雄!」なんて声をかけて、ゼフと肩を組んでいる。ゼフは照れくさそうに、ほおをかいている。


 そして、こちらを向いた。心配そうな顔をして駆け寄ってくる。私の目の前で立ち止まって、声をかけてくる。



「リリア?どうかしたか、ってうお!」



 ゼフは話していた途中で驚きの声を上げ、目を白黒させている。周りもざわついている。女性の悲鳴に、男性のからかう口笛。




 私がゼフに、抱きついたからだ。



「リ、リリア!?」



 ぎゅーっとする。ゼフは背が高くて、私の頭はゼフの胸のあたり。私が抱きついても、手が回るのは腰のあたり。身体も細身なのに、こうして触れると筋肉質で、しっかり鍛えられているのがわかる。…これが、強い人の身体なのかな。



 ゼフも周りも困惑しているが、私は今それどころじゃない。周りの声など、耳に入ってこない。


 ゼフが真っ赤になって、口をパクパクさせていたとしても。フィオとテオが赤くなって、でもどこか嬉しそうにこちらを見ていたとしても。周りが私達をはやし立てていたとしても。それを気にする余裕がない。より腕に力を込める。



「…よかったぁ。」

「っ!」



 こぼれた安堵の言葉。その言葉は、意図せず皆の耳に届いたらしく、あたりは一瞬にして静まった。




 ちなみに、私が羞恥に震えるのは、数分後。



普通に強すぎるゼフ。

やっと少し甘い展開に。

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