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第32話 瘴気よりドアップ

前話のあらすじ

旅支度を終えました。家に魔法をかけました。浄化魔法の話をしました。嫌な空気になりました。魔物の気配に気づきました。


主人公の謎に少し迫ります。



修正しました。失礼しました。

(誤)5年前 →(正)3年前

 


 魔物が現れた。



 無詠唱で魔法を放った。



 魔物に当たった。



 魔物が消滅した。



「「「「「…は?」」」」」



 …皆が唖然とした。




 いやあ、やっちゃった?自重しろと言われたばかりなのに。でも、こんな雑魚にかける労力もないと思うし。



「さ、さあ!先に進もう!」

「ちょっと待ていろいろおかしいだろ一回止まれ!」



 うやむやにしたかったんだけど、アレクに止められてしまった。といっても、おかしな事なんて無いはずだけどなあ。早く進みません?


 と思ってたけど、オズが話を続けてしまった。早く街に行きたいのになあ。



「…ここはアレクに賛成だ。まず一つ一つ整理するべきだ。…リリア、今の魔法は?」

「今のは〔ブラックホール〕です。」

「…〔ブラックホール〕は、闇属性の中級魔法。直径1mくらいだったと思うのですが。」

「魔力を込めれば、あのくらいの大きさにはなるよ?あんな大きい魔物、邪魔だし消しちゃってよかったよね?」



 この魔法はかなり重宝している。魔物って死体が残るから、処理が面倒なんだよね。食料にするときは別だけど、それ以外では〔ブラックホール〕で消しちゃう方が早くていいんだよね。


 皆は、またか、って顔してるけど。ただの〔ブラックホール〕だよ?3mの熊っぽい魔物は、余裕で飲み込む大きさではあったけど。



「…次だ。何故魔物の接近に気づけた?あの魔物は気配を消していたはず。」

「何年この森に住んでると思ってるの。魔物の気配くらいわかるよ。」



 子供の頃から、魔物の狩りは両親とやってきた。魔物の気配というより、魔物の殺気に敏感になった、という感じだ。


 皆は諦めの顔。皆の中での私の評価が心配。



「…最後に。3年前からこの森の瘴気が見えていたのか?」

「…うん。黒っぽい霧みたいなの。年々濃くなってたから心配だったんだ。」

「本当に見えていたのか…。いや、それなら、そんな中、この森に住んでいたのか?瘴気を避ける術はないはず。お前は瘴気の影響を受けていないのか?」



 …そういえば。瘴気を浴びすぎると、悪感情が煽られるはず。瘴気に対抗できるのは、聖女様の浄化魔法のみ。あとは、瘴気の少ない地域へ逃げることしかできない。まあ住んでる所を捨てるなんて、そう簡単にできないけどね。


 私の家にかかっている結界には、瘴気を防ぐ力なんてないはず。私は生まれてきてからずっと、瘴気を浴び続けてきた。なのに、悪感情なんて特に煽られた記憶はない。




 まさか、小説内のリリアローズは、そのせいで両親が死んでから鬱になってた…?



「わ、わからない。けど、そんな、困った事は、無かった、し。」



 なんだか、怖い。確かにおかしい。私は浄化魔法をかけられてもいないのに、今までこの瘴気まみれの森で、平然と生活してきた。どうして私は…。


 肩に乗っているライを見る。ライのおかげ…?ライはそっと首を横に振る。ライは関係ないらしい。


 ならば、両親が何かしてくれたのだろうか?だが、ライは再び首を横に振る。




 私が、転生者だから?この小説の事を知っているから?瘴気の事を知っているから?フィオと会った事があるから?


 ライは私の考えを察したように、順番に首を振っていく。全て違う。ならどうして?




 怖い。怖い。怖い。


 私は、何者なの?



「リリアっ!」



 焦りを含んだ声によって我に返ると、オズ様に両肩を揺すられていた。あれ。なんか、オズ様の顔、近くない…!?



「〜〜〜っ!」



 声にならない声を発して、私はその場にぺたんと座り込み、手で顔を覆って俯く。




 オズ様が。あのオズ様の顔が。私の。目の前に!




 湧き上がるこの気持ちは、いったい何なのか?とにかく、叫び出しそうな口を必死で抑える。




 周りで皆が何か言っている気もするが、そんなの耳に入らない。




 〜〜〜っオズ様のドアップ、いただきましたー!




 オタク魂とでも言うのだろうか。推しキャラの顔ドアップを見て、鼻血でも出そうな勢いだ。破壊力が半端ない!魂が湧きたち、衝動が抑えられない。




 …しばらく悶えてました。皆、ごめんね。



「リリア、大丈夫?」

「うん、ごめんね、フィオ。皆。」

「青ざめた顔して、俺たちが呼んでも反応ないから、心配したんだぞ。やっと気づいたと思ったら、座り込んじまうし。」

「ごめんね、ゼフ。もう大丈夫だから。」

「無理はしないでくださいね。少し休んでもいいんですよ?」

「ううん。もう平気だから。ありがとう、テオ。」



 心配かけてしまった。青ざめてしまったのはともかく、後のは完全に、なあ。申し訳ない。土下座して謝りたい。絶対引かれるからやらないけど。



「で、えっと、何の話だっけ?」

「…お前が瘴気の影響を受けてないのか、って話だ。どうなってんだ?」



 アレクが答えてくれた。そうだった。瘴気は目に見えるくらいに濃くなってたのに、私の心は特に問題なかった気が…。




 あ。




 そういえば、黒い霧っぽいのが、家の中に入ってきて、うっとおしくて、結界内に入り込まないように、何かしたような…。確か、3年前か…。


 ライを見ると、なんだかあきれた様子。だけど、頷いてくれた。



 つまりは、13歳の時に、瘴気を防ぐ術を私は生み出していた、と。




 いやいやいや!小説にそんな魔法無かったよ!?そんな都合のいい魔法あったら、万事解決じゃん!




 …待て待て。落ち着いて考えよう。


 確かに私は、瘴気が結界内に入らないように、魔道具を設置した。しかし、あれだ。あの魔法はなあ。



「おい。そろそろ戻ってこい。」



 アレクが少し怒り気味。そりゃそうだ。いろいろお騒がせして心配かけて、その後勝手に考え込んで皆を放置、だもんね。ごめんなさい。



「えっと、説明に時間がかかるというか…。」

「別にまだ時間はある。さっさと話せ。」

「いやー、信じてもらえないと思うというか…。」

「今さらすぎるだろ。お前が非常識な事は、もうとっくにわかってんだよ。さっさと話せ。」

「でも、その…。」

「いいから話せ!」



 アレクに問い詰められ、ごまかせそうにない状況。困ったなあ。もう腹をくくるしかないかあ。



「…風魔法で、家の外に飛ばしてたなあって。」



 まあ、予想通り。皆、唖然。




 3年前、黒い霧っぽいのが現れて、その時魔法開発が行き詰まっててイライラしてて。



「どっか行けやー!」



 って、風で家から追い出したんだよね。


 スッキリして、ふと窓の外を見たら、窓の外にも黒い霧が漂ってて、風魔法の魔道具作って、家の外に設置して。




 おかげで家には入ってこなくなりました!




 それからしばらくして、街へ向かう際に、森全体に黒い霧っぽいのがあるのがわかって、「まさかこれが瘴気!?」とか思いつつ、自分ではどうにもできないから、放っておいたんだよね。


 今思い出した。




 いやいやいや!瘴気って、風なんかで飛ばせるもんじゃないから!




 …謎でしかない。やっておいてなんだけど、自分が一番訳わかんない。



「…リリア。その魔法、今やってみてくれ。」



 オズが、恐る恐る、といった感じで言ってきた。そう言われても、ただの風魔法なんだけど…。



 〔ウィンド〕



 あの時の魔法は、ただの風属性初級魔法。でも正確には、かなりの怒りを込めて放ったし、威力や消費魔力は初級なんかじゃなかった。ので、それを再現。


 イライラしてたから、あまり覚えてないけど。3年も前の事だし。あのイライラは、瘴気のせいだったのかもなあ。




 のんきにそんな事考えていたら、森がうなった。なんていうか、森全体が獣にでもなったかのような、凄まじい音と揺れ。皆は防御魔法で必死に堪えている。




 …こんな魔法放って、よく私の家無事だったなあ。




 アレクにものすごく叱られました。




 オズが言うには、瘴気は聖女が浄化する以外に手はないとされているが、ここまでの風魔法を試した事があるかはわからないし、街や道のある所では使えないため、今まで知られていなかったのでは、との事だ。


 国に報告して、国の方で研究してみるらしい。もしかしたら協力を求めるかもしれない、と言っていた。



 私もこんな事なら、匿名でもなんでも、伝えて広めておけばよかったな、と反省。すっかり忘れてたからなあ。あと、浄化魔法しかない!って思い込んでた。思い込みって怖いね。




 フィオはどこか嬉しそうだ。聞いてみると、自分の身体はひとつしかないから、自分が浄化を行うまでに少しでも時間稼ぎする方法があるなら、とても嬉しい事だ、と笑顔で言った。眩しい。尊い。



 ちなみに、テオとゼフは、達観したような顔をしていた。なんか、ごめん。



「この魔法で、街に影響が無いか心配だ。行こう。」

「リリアはトラブルメーカーだな。連れてこない方が良かったんじゃないか?」

「アレク!そんなこと言わない!リリアは優しくて素直で可愛くて…。」

「わかった、わかったから!それはもう聞き飽きたんだよ!」

「こんな威力だったなんて、覚えてなくて。ごめんなさい。」

「リリア、そんなに落ち込まないでください。きっと大丈夫ですよ。」

「ああ、とりあえず街に行ってみようぜ。」



 魔物を〔ブラックホール〕で瞬殺しながら、そんな会話をして、私達はレーベルの街へと向かった。



 私の初めての街。そして、ずっと避けていた街。腹黒に捕まりたくなかったからね。


 6年前を思い出して、私は期待に胸を膨らませていた。




 この時私は、すっかり忘れてしまっていた。現実とは、そんなに甘くはないのだ、という事を。



こんな時でも悶える主人公。

瘴気が見える謎は、結局…。

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