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第28話 『覇級魔法』の破壊力

前話のあらすじ

謝罪され、感謝しました。旅の同行をお願いしました。許可されました。皆の能力を確認しました。自分の番になりました。


主人公のチートぶりを垣間見ます。

 


 魔法は、必要な技術量によって階級が決められている。




 初級、中級、上級、特級、覇級、神級。




 初級魔法は、誰でも使える魔法。平民の多くが使う生活魔法は、全てこれにあたる。使う魔力が少なく、命令式もとても簡単だ。



 中級魔法は、学園に通う者なら誰でも使える魔法。少し魔法教育を受ければ、すぐに使えるようになる。まだまだ簡単。



 上級魔法は、魔法が得意な者が使える魔法。得意属性のものならともかく、苦手属性の上級魔法は、相応の才能と努力がなければ難しい。全属性の上級魔法を自由自在に操れる者だけが、宮廷魔術師になれるのだ。



 特級魔法は、魔法の天才が使える魔法。1人で使えるというだけで、素晴らしい魔力量と魔法技術を有する事を示す。宮廷魔術師団の隊長クラスでようやく、得意属性の特級魔法が行使できる。複数人で行使することの方が多い魔法だ。



 覇級魔法は、複数人の魔術師が集まって使える魔法。とてつもない量の魔力が必要なため、制御が難しく、命令式も複雑。非常事態でしか行使されない、特別な魔法だ。



 神級魔法は、その名の通り、神が使える魔法。神話の中に登場する、ファンタジーな魔法だ。人に行使は不可能、存在自体ありえない、とされている。


 このファンタジー世界においてのファンタジー。正直、魔法がない世界の人間から見れば、差がわからないのだが。手から火が出る時点でありえないと思うんだけどなあ。




 そして、皆が唖然とした所に戻る。



「…すまない、リリア嬢。もう一度、言ってくれないか。」

「はい。『一応、覇級魔法までは、全属性行使可能です。』と申し上げました。」



 覇級魔法は、1人では行使できない魔法とされてきた。


 まず魔力量が足りない。そんな大量の魔力を1人で制御とか無理。命令式複雑すぎるから、それぞれ分担しないと。


 一番簡単な覇級魔法でも、宮廷魔術師団長が3人は必要だとされている。それほどの難易度。



「…悪いが、もう一度頼む。お前は『覇級魔法』と言ったか?特級魔法ではなく?」

「…はい。」

「…覇級魔法を、1人で行使できるとでも?」

「…はい。」

「「「「「………。」」」」」



 オズ様含め、皆沈黙。口開きっぱだ。なんか、ごめんなさい。



「…私の両親は魔法が大好きで、初級から覇級までの全ての魔法についての資料が、この家にはあるんです。なので、2人が亡くなってから、試してみたことがあって…。」

「…それで、使えたと。」

「…はい。確かに、大変な魔力量と複雑な命令式でしたが、頑張れば、なんとか…。」

「いや、なんとかならんだろ!」



 アレク様からツッコミいただきました!アレク様はツンデレだけど、一番の常識人でツッコミ役なんだよね。フィオとか天然だから、ツッコミ所満載だし。オズ様も地味に天然だし。天然タラシだし。




 つい現実逃避してしまった…。




 いや、わかってた!驚かれる事は!だって階級の事とかはほとんど両親の受け売りで、その情報は6年前のものだけど、6年の間に大きく変わったとか無い限りは、覇級魔法が1人で使える訳がないんだよね。



 でも、11歳の時。特級魔法と覇級魔法についての資料を見つけてしまった。どうしても使いたかった。好奇心を抑えられなかった。


 そして、行使した。特級魔法は頑張れば使えた。魔力量は十分足りていた。元から多かったし、増やすために努力もしてたし。


 だが、覇級魔法はさすがに無理だった。魔力量が足りない。その時点でどうする事もできない。諦めた。




 4年が経った。フィオ達のために頑張っていた。特級魔法は全属性マスターしていた。


 ふと、覇級魔法の資料を思い出した。探し出して、試しに行使してみた。さすがに無理だろうなと思いながら。




 できてしまった。




 バカな事に、森でかるーくやってみちゃって、辺り一面吹き飛びました。家は結界で守られたけど。


 急いであらゆる魔法を駆使して森を再生させ、近くの街の人達から記憶を消して、全ての証拠を隠滅した。



 それからは、覇級魔法を使う時は、人里離れた荒野へ行くようにしている。おかげでその荒野は荒れ放題だけど。


 できちゃった時は驚いたし焦ったけど、その後はどこまでやれるか試したくて、練習しまくってた。その結果、全て()()()使えるようになっていた。



「…まあ!つまりは、リリアは天才って事だな!特級魔法が使えるなら、大抵の魔物は余裕だしな!」



 ゼフが固まっていた空気を変えるように、手を叩いて明るく言い放った。覇級魔法は無かったことにしたいみたい。他の皆もなんとか飲み込めたようで、笑顔が浮かんでいる。若干強張っているが。



「じゃあ、リリアは魔法で攻撃、防御、治癒をする感じか?」

「うん、基本的には。あと、ポーションとか薬は作り慣れてるから、何でも言ってね!」

「おお!頼りになるな!料理も美味いし、旅も戦闘もより安心になりそうだな!」

「そ、そうだね!リリア、た、頼りにしてるね!」

「頼りに、してます!はい!」

「あ、ああ。解毒剤とか作れるのは、助かるな。」

「…リリア嬢、これから、頼むな。」

「はい!頑張ります!」



 ゼフが何とか話を進め、『覇級魔法』の破壊力にやられた人達のテンションを上げて、うやむやにする。そうだ。あんまり深く考えない方がいい。うん。




 変な空気になってしまったが、切り替えて遅めの夕食にした。話してたら思ったより時間が経ってたんだよね。



 美味しく楽しくいただいて、自由時間に。順番にお風呂に入り、ゆったりと過ごす。


 のは皆だけ。私は違う。やる事山積み!



 旅の準備が全くできていないのだ。大急ぎで必要なものを揃える。




 ここで問題発生。私が開発した便利魔法を、旅で使うか否か。


 ちなみにその便利魔法は、初級か中級レベルのものばかり。魔道具として付与してあるものもある。




 だがしかし。


 転移魔法を思い出してほしい。2つの魔法陣を利用したものだ。あれは、私の中では初級魔法に位置する。魔力量は中級魔法程度だけど、命令式は魔法陣のおかげで簡単だから、誰でも使えるものなのだ。


 そして、オズ様達の反応を思い出してほしい。転移魔法は、神話にのみ存在する魔法。一般常識からすると、神級魔法なのだ。




 私の便利魔法にはそういった、この世界におけるファンタジーな魔法がたっくさん!




 さあ、どうしようか。




 旅において、私が一番使いたいのは、亜空間を生成する魔法を付与したカバンである。RPGから名前をいただいて、「マジックバッグ」と命名してある。とてつもなく便利。



 でも、マジックバッグは神話にすら出てこない!亜空間、という概念が無いのだ!



 これは由々しき事態である。説明から手間取るし、その有用性がわかれば、誰もが欲しがるだろう。そんなものを、私だけが使ってしまっていいのか。



 フィオ達には言っても構わない。でも、使用している所を街の人とかに見られたら、面倒な事になる。困った。本とか薬とか食料とか、持っていきたいものがたくさんあるのに。




 悩みに悩んで、街で使わない物だけマジックバッグに入れる事にした。すぐ使うかもしれない薬類やお金などは普通のカバンに入れ、本や使う確率の低い武器類はマジックバッグへ。予備の薬などは、多めにマジックバッグに入れておく。薬の材料や食料もだ。



 マジックバッグの良い所として、整理が楽な事と、物が劣化しない事が挙げられる。


 一個体として認識できる物ならば、大きさ問わず、手で触れるだけで入れる事ができ、出す時もその物を思い浮かべるだけ。何が入っているのかも、魔法によって簡単に把握できる。


 そして、マジックバッグの中の亜空間では、時間が止まっている。なので、食料が腐ったり、温かい料理が冷めたり、といった心配がない。それに、中で物同士がぶつかることはないから、傷がつく事もない。




 なんて便利な。


 旅が終わったら、というか、魔道具研究所の偉い人に会う機会があれば、絶対広めてもらう!付与にはコツがいるけど、頑張ればきっとできる!はず!


 革命的な発明だから、国主導でやってもらわないと。混乱が起こりかねない。



 皆には言っておかないと。説明した所で、さっきの『覇級魔法』状態になりかねないけど。でも、秘密にし続ける事はできないだろうしね。




 荷物整理を済ませて、もう寝る時間。フィオには断って、今日は自室で寝る。しばらく帰って来られないだろうから。



 旅はかなり長くなる。人間族の国だけでもかなり広いのに、他種族の国へも行かなければならない。


 浄化が必要なのは、魔物が多い所。情報収集と食料調達のために街に寄りつつ、誰も近寄らない魔境へと足を踏み入れなければならない。


 魔物が多く発生する所へ行き、浄化する。邪魔する魔物を蹴散らして、また浄化。瘴気が暴走した地域の問題を解決して、浄化。



 小説では、6巻の時点で1年半くらいは経ってたかな。3年はかかるだろう、ってフィオ達は言われてるはず。小説でそうだったし。


 3年かかって旅を終えたとして、その後きっと王都に残る事になるだろう。転移魔法があるとはいえ、なかなか帰ってはこれない。




 とりあえず、最後の夜。待ちわびた旅の、前夜。自室で1人、これまでの事と、これからの事に、想いを馳せながら、眠りについた。



好奇心旺盛、魔法開発大好き、な主人公。

これからも主人公の無自覚(?)チートは続く。

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