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第27話 私の自慢の友達

前話のあらすじ

4年前の事を語りました。転移魔法の存在と王都を去った理由を明かしました。謝罪しました。謝罪し返されました。


思いをぶつけ合います。

 


 突然の3人からの謝罪に唖然としていると、3人は頭を上げて苦々しげな表情で話し出した。



「私、初めてできた女の子の友達で、浮かれてた。また会って、一緒に過ごすんだって、信じて疑わなかった。もしそうしていたら、リリアが傷つく事になってたかもしれないのに。」

「僕も、そこまで頭が回っていませんでした。また会える、っていう言葉を信じてはいましたけど、何で直接言いに来てくれなかったんだろう、って心のどこかでずっと思ってました。」

「リリアはちゃんと先の事まで考えてたのに。1人で背負わせて、1人で決断させて、1人で努力させた。俺達の方からも、何かできたかもしれないのに。リリアに全部任せて、何もしなかった。」



 3人は、自分の行動を悔いていた。私の身分を配慮できていなかった事。私の考えを理解して、受け止める事ができていなかった事。私の行動に対して自分達は何もしなかった事。




 なんて純粋で、素直で、優しい人達だろう。




 私の勝手な行動に対して、咎めるどころか謝罪をしてくるなんて。まだ皆若くて、そこまで考えて行動できないのは当たり前だ。なのに。


 ただただ私の事を思いやってくれている。私の行動の意図を知って、私ではなく自分を責めている。




 私にはもったいないくらいに、優しい人達だ。



「…ありがとう。私の思いを受け止めてくれて。私のわがままを聞いてくれて。3人は私の自慢の友達だね。」



 私にはつりあわないと思う。でも、3人が私を求めてくれるなら、つりあう人になりたい。自分を卑下して3人の気持ちから逃げるのではなく、3人の優しさに感謝して努力したい。



「私、フィオの、テオの、ゼフの、力になりたい!お願い!私も皆の旅に連れてって!」



 本当は、オズ様を言葉巧みに説得して、連れて行ってもらうつもりだった。でも、違うね。こんな優しい子達に対して、まっすぐに向き合う以外、ないよね。



 それぞれの目を見て、はっきりとお願いした。頭を下げた。誠意を尽くすしか、私にできる事はない。そう思ったんだ。




 ガタゴトと椅子を動かす音がした。頭を上げると、オズ様とアレク様も立ち上がっていた。



「…危険な旅だ。命を落とす事もあるかもしれない。もし無事に旅が終わったとしても、必ず注目され、この国に縛られる事になる。自由は減るぞ。」

「覚悟の上です。」



 オズ様と見つめ合う。




 ふと、オズ様が目を閉じた。次に開いた目は、とても優しげだった。その優しい眼差しに見惚れる。



「わかった。同行を許可する。」



 目を見開く。フィオと目が合う。同じように、驚きに満ちた目だ。テオもゼフも、驚いた表情でオズ様を見ている。




 ずっと警戒した様子だったのに。


 でも、確かに今、オズ様は言った。



『同行を許可する』



 つまり…。



「あ、ありがとう!ございます!あの、えと、が、頑張ります!よろしく、お願いします!」

「リリアー!」

「リリアも、一緒、ですか!」

「リリアとまだ別れなくていいんだな!」



 興奮して、カタコトになってしまった。嬉しすぎる!オズ様に認めてもらえた!3人も喜んで、私のもとに駆け寄ってきた。皆で抱き合って、喜びを分かち合う。



「…まあ、認めざるを得ないよな。あれだけ話を聞かされて、割とそのまんまの女だった訳だし。」

「アレク…。」

「耳にタコができるくらい聞かされたからな。『リリアは、優しくて素直で可愛くて気遣い上手で大人っぽくて賢くて包容力があってしっかり者でカッコよくて真面目で誠実でまっすぐで、最高に可愛い私達の自慢の友達なの!』毎回一言一句違わず言ってくるから、覚えちまったよ。」

「…そうだな。私達に対しては、終始猫を被っていたが、フィオ達とは、誠実に向き合っていた。私の質問に対しても、嘘はなかったように思う。あれだけフィオ達が大事だと示されて、まっすぐに頼まれたら、断れないだろう。」

「ああ。『自慢の友達』らしいしな。」



 私達4人が盛り上がっている間、オズ様とアレク様は2人で話していた。私達を優しく見守りながら。私達がその視線に気づく事はない。



「なあ、オズ。旅の間は『仲間』だよな。」

「…あいつは身分を意識しすぎている。私達を警戒しているからだろう。」

「正確には『お前を』だろうがな。警戒してくる相手に不敬な行為は命取り、とでも考えたんだろうよ。」

「…私達も、友達になるべき、か。」

「お前は堅いから時間がかかりそうだな。でもまあ、フィオもいるんだ。大丈夫だろ。」

「善処しよう。」



 3人と笑い合っていた所で、ふと思い出す、オズ様の優しい眼差し。というか。




 見つめあってしまった!あのオズ様と!




 よくできたな私。それだけ必死だった、って事かな。にしても、あのイケメンと素でまっすぐに向かい合うとか、かなり難しいぞ。ポーカーフェイスとは違う訳だから。よくやった私!褒めてつかわそう!



「おい。さっさと準備しろ。次の街へ行くぞ。」



 オズ様から声をかけられた。そこでやっと興奮が落ち着いてくる。アレク様は少し呆れ顔だ。


 フィオ達はニコニコ笑顔。そんなに嬉しそうにしてくれると、こっちもつられて笑顔に…。




 なりそうだけど、それよりも。切り替えないと。



 大事なのはこれからだ。まだスタートラインに立っただけ。オズ様に同行の許可をもらえたからといって、浮かれてる場合じゃない。



「皆様、旅路に戻る前に、私の事を知ってもらいたいのですが、お時間いただけますか?」

「…どういう事だ?」

「殿下。私は殿下とは昨日お会いしたばかり。カーデラン様もです。そして、フィオ、テオ、ゼフとも、建国祭を共に過ごしただけ。お互いの事をまだよく知りません。特に、戦力について。」

「確かに、リリアが魔法上手なのは、ここに来て見せてもらってわかったけど、攻撃魔法とかは知らないしね。私も聖女の力を見せた事はないよね。」

「知っておく必要はあるな。」

「では、もう一泊なさってください。今日の残りの時間を使って、皆様の役割、立ち回りを教えていただきたいです。」



 小説のままとは限らない。想定よりここに来る時期が早かったし、ケイルさんが生きていたり、フィオのトラウマ事件が回避されてたり、シナリオが変わっている部分がある。どう影響しているか、知っておかないと。


 それに、私の力も知っておいてほしい。客観的な評価が知りたいし、どのくらい自重すべきか、教えてもらっとかないと。街でやらかす訳にはいかない。


 なんとなく自分が非常識な存在である気がしてきてるから。不安。




 そして、私の提案は通り、自分の戦闘能力や旅で使えそうな能力を、順番に話していく事に。


 簡単にまとめると…。



 オズ様は、剣術のみでは騎士団の隊長クラスと互角にやりあうほどの実力。魔法も同時に使って戦う。氷魔法が得意。何でも器用にこなすため、教われば大抵の事はできるらしい。さすがオズ様、ハイスペック!



 アレク様は、槍と炎魔法を巧みに操る。手合わせではオズ様と互角みたいだから、かなりの実力の持ち主だ。不器用だしツンデレだけど、公爵子息としては優秀なんだそう。フィオも頼りになるって言ってる!



 そんなフィオは、聖女なので浄化魔法や治癒魔法が得意。浄化魔法は聖女様しか使えない魔法、とされているものだ。運動神経がいいため、回避能力に優れている。守られるだけの令嬢じゃないのさ!



 テオは、土魔法で作った矢を弓で打って戦うようだ。打った矢を風魔法で敵へと誘導する事も可能。かなりの威力と命中率。あの腹黒の教育により、話術に長けているようだ。あんな腹黒にはならないでね!



 ゼフは、雷魔法をまとった剣で戦う。反射神経と勘の良さ、圧倒的な戦闘センスを持ち、父である騎士団長との手合わせを最も長引かせた、国内で5本の指に入る強者らしい。しかも爽やかイケメンだなんて!




 小説とは大差ないかな。皆強いんだよなあ。連携はまだまだみたいだけど。そのせいで、アレク様の負傷につながったようだ。


 ちなみに旅の出発は2週間前で、移動は馬車だが、途中魔物との戦闘もあって、予定より遅れたみたい。怪我は今回が初めてだそうだ。




 皆がハイスペックだからこそ、生まれた油断。




 連携はこれからの課題になりそうだ。個々の力が強くても、上には上がいる。今回のように、治癒魔法が効かない場合もある。気を引き締めないと。




 私が皆の話を聞いて、頭を整理していると、オズ様から声をかけられた。



「次はお前の番だぞ、リリア嬢。」



 私の事、「リリア嬢」って呼ぶ割には、「お前」呼びだし、変な感じ。というか、普通敬称をつけるなら「リリアローズ嬢」だと思うんだけど。フィオ達が「リリア」って呼んでるからかな?




 って、そんなことはおいといて。


 …何から話そう。



「…先ほども申し上げました通り、私は宮廷魔術師団に入る予定ですので、魔法はある程度使えます。」

「ある程度、というと?上級魔法は使えると?得意な属性は?」



 皆興味津々といった様子で、私を見ている。フィオなんて目がキラキラだ。


 でも、申し訳ない事に、皆の表情には大いなる変化がもたらされる事だろう。



「…一応、覇級魔法までは、全属性行使可能です。」



「「「「「…えっ?」」」」」



 予想通り、皆の表情は唖然としたものへと変化する事になった。



オズ様とアレク様のコンビ、好き。

驚愕、というより、理解できずに唖然。

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