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第26話 レア顔&謝罪祭り

前話のあらすじ

料理でおもてなししました。いろいろな話を聞きました。私の過去を話しました。両親の職業ははぐらかしました。


4年前の事を語ります。

 


「王都へは、知り合いに会うために、建国祭の時期に合わせて参りました。建国祭の数日前、王都を散策していた所、小さなお店を見かけまして、どことなく惹かれて入ると、宰相様がいらっしゃいました。その時点では、宰相様だとは知らず、侯爵様だとだけお伺いしました。」



 今更だけど、なんであの腹黒はあんな所にいたのかな?『何でも屋』『相談屋』なんて言ってたけど。『OPEN』って書かれた看板があったから、何かのお店だと思って、入っちゃったんだよね。今思うと、あれが運命の分かれ目だったな。



「宰相様から、王城の庭の観光を勧められて、翌日参りました所、宰相様に偶然お会いしまして、ご一緒させていただきました。そして、庭を見終わり、帰路につこうとしていた所、フィオと出会いました。といっても、言葉を交わすことはなく、その場で宰相様と『他者に聖女様の存在を明かさない』という契約をしました。」

「…フィオ?」

「ご、ごめんなさい!どうしてもお庭に行きたくなって。」



 フィオはしゅんとしていた。オズ様は怒り気味だが、それ以上追求するつもりはないらしい。アレク達は呆れた様子だったが、すぐに続きを促すようにこちらに視線を向けた。



「それが、建国祭前日の話です。その翌日、宰相様が私の泊まっている宿にいらっしゃって、フィオの護衛を頼まれました。私の魔法の腕を見抜いていたのと、契約に応じたのが好印象だったようで。私も特に用事はありませんでしたし、恩を売るのも悪くないと思い、お受けしました。また、宰相様がテオとゼフをお誘いになり、4人で建国祭を回る事になりました。以上が、王都にいた理由と、フィオ達と関わる事になった経緯です。」



 ほとんど嘘はついていない。誤魔化したり隠してたりはするけど。


 というか、今までの私の話をまとめると、『宰相様のせい』って事だな。まあ、明らかに元凶は腹黒だし。そのおかげでフィオ達と友達になれたんだけどね。感謝はしたくないなあ。



「…そうか。王都にいる知り合いとは会えたのか?」

「ええ。本当は建国祭で会う予定だったのですが、相手側の都合により、予定を変更して会いました。」



 この知り合いは架空の人物だが、今の会話ではフィオを思い浮かべている。小説ファンとしては知り合い、的な?予定を変更して、尾行ではなく護衛として会ってるし。



「では、何故王都を去った?別れも告げず、手紙だけ残して去ったと聞いたが。しかも、門を通っていないよな?お前が王都を出た記録は、どの門にも残っていなかった。説明してもらおうか。」



 そりゃ聞いてくるよね。王都を出た理由は、手紙にもぼかしてしか書いてないし。フィオ達3人も気になるようで、じっと私を見ている。


 そして、門での出入者記録。すっかり忘れてたやつ。帰ってきてから気づいたんだよね。王都から出た記録がないのに、私はこうして王都外にいる。軽く犯罪だ。



「…門を通らなかった事は謝罪いたします。大変申し訳ございませんでした。決して罪を犯すつもりはありませんでした。気が急いてしまっただけなのです。」



 といっても、気づかずにしてしまったのは、その時だけ。隣町への出入りは、故意に門を通っていない。私の名前の記録があれば、腹黒に絶対捕まる。だから、魔法で気配を消し、空から出入りしてきた。


 いつかこの事も吐かされて、オズ様達に怒られるかな。怒られるだけで済めばいいけど。



「…私は、2つの魔法陣による転移魔法を開発しました。それにより、王都から自分の家へと、転移したのです。」



 いつも無表情のオズ様を含め、全員が驚愕の表情を浮かべた。目が点になっている。口が開いている人もチラホラ。レア顔拝めました、あざーす。


 一番初めに我に返ったのはオズ様だ。



「…転移魔法が、使えるというのか?そして、4年前に使用したと。」

「はい。転移魔法で、家の中にセットしていた魔法陣へと転移しました。」

「…その魔法を知る者は?」

「私だけかと。私が口外した事はありませんから。」

「…リリア嬢が、4年前に開発したのか?」

「正確には、5年前に完成しました。3年程研究を重ねた結果です。」



 ちなみに、今では座標と明確な風景が分かれば、何処へだって転移できる。魔法陣の補助と莫大な魔力は必要だが。今の私の魔力の1割くらいなんだけど、他の人にも使えるだろうか?私の魔力量は、4年前と比べてもかなり多いからな。



「…わかった。仮に転移魔法で門を通らずに王都を出たのだとしよう。ならば、そのように急いで王都を出た理由は?」



 仮に、って。まあ、信じてもらえなくてもしょうがないか。転移魔法は神話にしか出てこない魔法だからね。




 そして、王都を出た理由。手紙だけ残して。別れの挨拶もせず。建国祭が終わってすぐ王都を去った、その理由。


 それはズバリ…。



「宰相様に捕まりたくなかったからです!」



 デデンとドヤ顔で言い切った。



 皆、ぽかんとしている。レア顔、可愛い。



「…は?宰相に、捕まりたく、なかった、から?」



 オズ様がカタコトになってる。可愛い。



「はい!あの宰相様に捕まれば、私の自由はなくなります!私はこの家が大好きで、ここでの生活が大好きなんです!友達がいるとはいえ、王都に、国に縛られたくはありません!」



 こういうのは、まっすぐ本音を言うのが一番効果的だ。だらだら理屈をこねると、論破される恐れがあるからね。


 私の気持ちの問題!そういう事にすれば、誰も文句は言えない。私がそうしたいからそうした。ただそれだけ。どこにもそうしなければならなかった高尚な理由など無いのだ。



 一応いろいろ考えた結果であって、あの腹黒だけが理由ではないけどね。いろいろ複雑なんだよ。


 でも、このままだと私がアホの子みたいだから、フォローしておこうかな。



「それに、私はただの平民。王都に留まっても、居心地の悪い思いをする事になるのは、目に見えていました。私のような者が、聖女様方の周りをうろちょろしたり、大人顔負けの魔法を披露したりすれば、嫉妬と羨望の目に晒されるのは必至。結局フィオ達と共にいる事はできません。」



 唖然としていた皆は、私の言葉が理解できてきたようで、私が示した現実に苦しげな様子だった。


 建国祭が特別だっただけ。あのように身分を気にせずに過ごせるのは、身分を隠している時のみだ。たとえ私が王都に残り、宮廷魔術師になったとしても、私がフィオ達と関わるのはほぼ不可能だった。それなら、家で魔法の開発に打ち込む方が、ずっといい。



「…その通りだな。今回のような偶然が起こらない限りは、私達が会う事はまず無かった。だが、それなら何故『また会える』と手紙に書いたんだ?お前は確信していたんだろう?また必ず会えると。」

「はい、確信しておりました。私は宮廷魔術師になるつもりでしたから。」



 宮廷魔術師。おそらく、母はそれだった。父は自分の事を「魔法剣士」といっていたから、騎士の方だったはず。


 宮廷魔術師は、難関な試験に合格したエリートのみがなれる、皆の憧れの職業。上級魔法を当たり前に扱えなければならない、才能と努力の両方を必要とするもの。



「…国に縛られたくないんじゃなかったのか?それに、宮廷魔術師になりたいなら、あのまま王都に残って宰相にかけあえばよかっただろう。」

「いえ、あの時に宮廷魔術師になれば、注目を集めすぎます。ただでさえ、平民が宮廷魔術師団に入る事は少ないのですから。年齢でも注目されるのはごめんです。」



 宮廷魔術師の最年少記録は、16歳だ。それでも若すぎると言われており、その記録を持つ者は天才扱いされて、今では団長にまで上り詰めている。もちろん貴族だ。


 12歳の平民が宮廷魔術師になるわけにはいかない。



「私は20歳くらいに宮廷魔術師になり、功績を残して、フィオ達と会えるだけの地位を得ようと考えていました。真正面からフィオ達に会いたかったんです。友達だと言えるようになりたかったんです。そのためには、その時まで会うべきではないと、判断したのです。」



 あのまま王都に残って注目を浴びるより、再会の時まで、小説が始まるその日まで、会わない方がいいと思ったのだ。そして、自分の腕を磨くべきだと。




 私にとっての『光』を輝かせるためにも。




「勝手な判断で、手紙のみの挨拶になってしまった事、ここに詫びさせていただきます。本当に申し訳ありませんでした。」



 私は立ち上がって、手紙を渡した3人に向かって、深く頭を下げた。


 全ては私のわがまま。私が一方的に関係を断ったのだ。3人の気持ちも考えずに。



「…うん。そっか。そっか。リリアは堂々と友達でいたかったんだね。」

「…護衛も終わったのに、再び直接関わるのは、難しいですもんね。隠れて会う事しかできない。」

「…俺達がよくても、周りが何て言うかわからないからな。手紙を残す事しかできないよな。」



「「「ごめんっ!」」」



 3人がぽつぽつと呟いたと思ったら、突然謝られた。驚いて顔を上げると、3人が立ち上がって頭を下げている。私がしていたように。


 何故謝罪?3人は何も悪くないのに。私が勝手な事をしただけなのに。何の事で誤っているの?



 私は唖然として、間抜けな顔を晒しながら、3人の後頭部を眺めた。



真面目な語りと勢いのある語りで、皆を翻弄。

最後に唖然とするのは主人公。

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