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幕間1 5つの手紙と王都の変化

主人公が書いた手紙と、第三者視点によるその後のお話です。

いつもより少し短めです。

 


「フィオへ



 昨日はありがとう。お祭り楽しかったね。フィオのような可愛い友達ができて、私は今とっても幸せです。


 別れ際に私の笑顔を『可愛い』って言ってくれたけど、可愛いのはフィオの方だよ。また会ったら、その笑顔見せてね。


 でも、会うのはまだ先の話。私には帰る場所があって、今はフィオのそばにはいられないの。ごめんね。きっとまた会えるから、それまで待っていてほしい。


 聖女という立場で、大変な事も多いと思うけど、フィオにはたくさんの味方がいるはず。それを忘れちゃダメだよ。もちろん、私もフィオの味方だからね!


 また会う日まで、お互い頑張ろうね。フィオの幸せを祈っています。体には気をつけて。またね。



 リリアより」




「テオへ



 昨日はありがとう。お祭り楽しかったね。テオと友達になれて、私は幸せ者です。


 きっとお父さんとも仲良くなれるよ。だって優しいテオだもの。大丈夫。応援してるね。


 せっかく友達になれたのだし、まだまだ話し足りないけど、しばらくはお別れです。私には帰る場所があるから。ごめんね。


 宰相の息子で、貴族で、大変な事も多いと思うけど、テオのそばにはちゃんと家族や友達がいるってこと、忘れちゃダメだよ。私もそばにはいられないけど、友達であることに変わりはないから。


 また会う日まで、お互い頑張ろうね。テオの幸せを祈っています。体には気をつけて。またね。



 リリアより」




「ゼフへ



 昨日はありがとう。お祭り楽しかったね。ゼフと友達になれてすごく嬉しい。


 急な事だったのに、受けてくれてありがとう。ゼフがいてくれて心強かったし、おかげで楽しかった。ぬいぐるみ、大事にするね。


 もっと仲良くなりたかったけど、私は帰ります。王都には戻りません。ごめんね。


 何か大変な事があったら、ちゃんと周りを頼ってね。ケイルさんっていうお兄さんもいるし、友達もいるんだから。私もずっとゼフの友達だから。


 また会う日まで、お互い頑張ろうね。ゼフの幸せを祈っています。体には気をつけて。またね。



 リリアより」




「ケイルさんへ



 手紙で別れの挨拶をすること、お許しください。私は急ですが、家に帰ることにしました。王都には戻りません。ちゃんとお別れもできないまま帰ってしまい、申し訳ないです。ごめんなさい。


 ケイルさんには、とてもお世話になりました。初めての街で緊張しているところを、優しくしていただき、ポーションを売っただけの縁で、王都まで乗せていってくださり、本当に感謝しています。この恩は一生かかってでもお返しします。


 恩を返す事もなく帰ってしまい、ごめんなさい。ケイルさんの家にも、結局行けませんでしたね。また次の機会にお願いします。


 しばらく会う事はないと思いますが、きっとまた会えます。会いに行きます。だから、待っていてください。それまでに私にしてもらいたいこと、考えておいてくださいね。恩を返しますから。


 近衛兵は大変なお仕事かと思いますが、どうか体にはお気をつけて。ケイルさんの幸せを祈っています。またお会いしましょう。



 リリアローズより」




「宰相様へ



 突然のお手紙、お許しください。この度私は、急ですが家に帰ることにしました。どうか捜索はしないでください。


 王都に戻る気はありません。友達のそばにいたい気持ちはありますが、私にはそれ以上にやるべき事があります。なので、今後の事はそちらにお任せしたいと思います。身勝手で申し訳ありません。


 宰相様には王都でずいぶんとお世話になりました。おかげさまで、充実した時を過ごせました。私に素敵な友達ができたのも、宰相様のおかげです。ありがとうございます。


 祭りでは、勝手ながら邪魔だと判断した方々には眠っていただきました。別働隊の方で回収していただいたと思います。お手数おかけしました。


 おそらく私は、宮廷魔術師に任命されうる技能は持ち合わせているかと思います。ですが、私は国に仕える気はありません。それほど高尚な人間でもありませんので、国より自分の意思を優先させていただきます。


 ですが、もちろんこの国と敵対することはありません。友達がいるこの国を、私も大切に思っておりますので。


 聖女様の事は、決して口外しません。契約も交わしましたしね。宰相様にとって不利益となる行動は取らないつもりです。


 さて、前置きが長くなりましたが、宰相様に手紙を書きましたのは、ある情報を提供させていただこうと考えたからです。以下のことは、私と私の家族のみが知り得る情報です。実物は、私と共に王都へ来た騎士の皆様がお持ちです。どうか国のためにお役立てください。




 〜秘伝の調味料 レシピ〜


 ①塩100gにポーション1本をかけて、全体に馴染むように混ぜる。

 ②常温、日陰で1日置いておく。


 ※ポーションの質、種類、等級問わず、同様の分量で生産可能です。美味しさに違いは出ますので、ぜひいろいろお試しください。




 それでは、ごきげんよう。宰相様のますますのご活躍をお祈りしております。



 リリアローズ」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 祭りが終わり、王都ではいくつかの変化が起きていた。



 1つは、供給過多になっていたポーションが、ポーション塩の生産に利用されるようになった事。ポーション塩は瞬く間に王都の民を魅了した。初めは国が主導となって生産が行われたが、その後生産方法が明かされ、ポーション塩は国境を越えて広まり、食卓に欠かせない調味料となった。



 次に、あるイケメン近衛兵が失恋した、という噂が流れた。その近衛兵は、仕事が終わるたびに食堂へ赴き、手紙を読みながら沈んでいるのだとか。それを周りが慰め、事情を聞き、失恋、という形で広まることとなった。1ヶ月にもわたって、彼は沈み続けたらしい。彼は男女問わず人気者だったため、噂は王都全体にまで広がった。



 そして、城の一室でも、ある変化があった。いつもなら3人の子供が仲良く過ごしていた部屋に、子供が2人増えた。そして、笑い声も増えた。一時期は涙に沈んでいたが、今では楽しそうな声が、その部屋から漏れ出ているのだとか。




「今頃リリアはどうしてるかなー?」

「僕も気になります。リリアの家ってどこなんですかね?」

「王都から1週間かかるレーベルって街の近くだろう、って兄ちゃんは言ってたけど。どこなんだろうな。」

「またリリアの話か?相変わらず大好きだな。」

「また会える、って言ってるけど、相手は平民。普通に考えて、無理だろ。」

「もう!なんでアレクはそうやって意地悪言うの!?リリアがまた会える、って言ってたから、また会えるんだもん!」

「そうです!絶対また会えます!」

「ああ、そうだよな!リリアは嘘つかねえよ!」

「1日しか一緒にいてないのに、なんでわかるんだよ。バカだろ。」

「ひどい!バカじゃないもん!わかるんだもん!」

「フィオ、落ち着け。アレクも言い過ぎだ。」




 小説では無かった変化。聖女様の部屋へと遊びに来るのは、第二王子と公爵子息だけではない。新たな友達、侯爵子息と騎士団長の息子もだ。そして、もう1人の友達の話をする。3人が2人に対して、自慢の友達について語り、きっと会えるのだと目を輝かせて言う。1人はあまり興味なさげに、1人はあきれた様子で、3人の話を聞く。


 4年後、この5人が共に旅に出ることになるとは、まだ誰も知らない。



 ここにいない、自慢の友達以外、誰も。



エピローグ的な感じでした。

オズ様とアレク様、少しだけ登場。


人物紹介を挟んで、第2章が始まります。

ついに小説の時間軸となります。

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