表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

第15話 赤面少年との出会い

前話のあらすじ

フィオのストーカーになることにしました。でも、フィオの護衛に任命されました。テオ様フラグ立ちました。ゼフ様登場しました。


ついにゼフ様とご対面です。

 


「兄ちゃん!やっと追いついた!忘れ、も、の…。」



 少年が、お弁当らしき包みを抱えて、こちらへ走ってきていた。だが、私に気づいて、驚いたように足を止めた。



「おう!ゼフ!届けてくれたのか!ありがとな!」



 そんな少年の様子に構うことなく、ケイルさんは少年へと駆け寄り、声をかける。だが、少年の目は私から離れない。



 ゼフ様、だよね。面影はあるが、幼くて可愛い!今13歳のはずだけど、身長とかはまだまだかな。これから成長して、あの皆のイケメンお兄ちゃんになるのか。将来が楽しみである。



 しかし、何故そんなに私を見る?初めまして、だよね?驚いた表情のまま固まってるけど、どうしよう。



「どうした、ゼフ?ん?嬢ちゃんに一目惚れでもしたか?」

「…え、いや、え!?っ違う!そうじゃなくて!えっと、その、あの。」



 ケイルさんはやっとゼフ様の様子がおかしい事に気づいたようで、こちらを見て変なことを言っている。いや、そんな設定無いから。まあ、ケイルさんは小説の設定なんて知らないんだけど。


 何故かゼフ様は焦った様子で、真っ赤になって俯いてしまった。さっぱり意味がわからない。



「っとにかく!これ!渡したから!じゃあ!」

「おい、ゼフ!?」



 真っ赤な顔のまま、ゼフ様はケイルさんにお弁当を押し付けて、走り去っていく。



「待って!」



 つい、引き止めてしまった。私の声に反応して、ゼフ様が止まる。振り向きはしない。


 せっかく会えたのに、なんだかもったいない気がした。次いつ会えるかわからない。なら、話したい。仲良くなりたい。


 そう思って、ゼフ様の元へと駆け寄る。ゼフ様はそれに気づいて、肩をびくりと動かした。ガチガチに固まっている。何故だ?



「あの、ケイルさんの弟さん、ですか?」

「…はい。」

「えと、初めまして。私はリリアローズです。その、よろしくお願いします。」



 ゼフ様はこちらを見ないが、そのまま声をかけた。そして、挨拶をして、握手を求めた。


 しばらく沈黙が続いたが、ゼフ様は恐る恐る私の手を取った。私はすぐに握って、笑顔でしっかりと振る。ゼフ様に触れてしまった!とか思いながら。



「良かったな、ゼフ!嬢ちゃんと友達になれて!」

「っ!友達って!」

「ケイルさん。せっかく今から距離を縮めていこうと思っていますのに。ゼフ様が緊張してしまうではありませんか。」

「そうか!悪い悪い!」

「え!距離を…!」

「はい。仲良くしていただけますか?」

「えと、はい!あの、こちらこそ、よろしくお願いします!」



 ケイルさんが余計な事を言うから、ゼフ様がより固まってしまったが、なんとか仲良くできそうだ。まだ顔は赤いし、ガチガチだが。


 なんか小説と印象が違うな。年齢の問題か?なんだか調子が狂う。


 というか。




 今あのゼフ様が目の前に!超絶イケメン、皆のお兄ちゃんの、ゼフ様が!「魔女ティア」ファンの皆さんに大声で自慢したいよー!




 つい興奮して、ゼフ様を見つめていると、みるみるうちに顔が真っ赤に。何故?ゼフ様って、割とキザなところもあったし、フィオにもリリアローズにも全く赤面する事は無かったはずだけど。


 赤面シーンは、実は料理が下手、という意外な一面がバレた時くらいかな。あれは本当に可愛かった。挿絵あったらもっと良かったのに。



「ははは!顔真っ赤だな!嬢ちゃん可愛いし、仕方ないか!」

「っ!そんなんじゃねーよ!」



 ゼフ様って、旅の時は物腰柔らかな雰囲気だったけど、今は普通の中学生男子って感じだな。元高校生からすると、微笑ましく思ってしまう。


 ゼフ様は怒り気味に返しているが、本気でない事は見ていてわかる。軽い兄弟喧嘩みたいな。


 前世も今世も一人っ子なので、少し羨ましい。兄や姉がいたら、甘えさせてもらえたかな。弟や妹だったら、逆に甘やかしちゃいそう。




 そんな事を考えながら2人を見ていると、城の方から馬車がやってきた。門で手続きを終えて出てきた馬車が、私達の前に止まる。



「おやおや、お嬢さん。お一人ではないようで。」

「あ!あんた、宰相様じゃないですか!お勤めご苦労様です。」



 馬車から出てきた腹黒が、私に声をかける。それに対して、私より先にケイルさんが反応した。一応敬語だし、敬礼してるけど、宰相相手に「あんた」って。


 宰相様は特に気にしていなさそうだ。ただ、私と一緒にいた事に、単純に驚いている様子。別に私にだって、友人の1人や2人いるし!いや、友人と呼べるのは、まだケイルさんだけか?



「ギムルハート殿、でしたね。この前、近衛兵に任命された。そういえば、1番隊はこれから建国祭のパトロールでしたね。」

「はい。ここで集合なのですが、早めに着きました所を、この、えっと、そう!リリアローズ!に、会いまして。」

「宰相様。前にお話ししました、王都へ来る際にご一緒させていただいた方の1人です。偶然お会いしたものですから、少しお話していたのです。」

「そうでしたか。まさかギムルハート殿とお嬢さんがお知り合いだったとは。いえ、リリアローズ嬢、とお呼びした方がよろしいかな?」

「お好きにどうぞ、宰相様。」



 ケイルさんって近衛兵になったんだ。すごいよね、まだ若いのに。エリートかな。まあ騎士団長の息子だし、スペックは高いか。


 さらっと名前を明かされてしまったが、まあ聖女様に挨拶する時にはバレただろうし、いっか。というかケイルさん、私の名前忘れてたな?


 名前を知られた代わりに、私は「宰相」という腹黒の情報を得た。これで呼びやすい。まあ、小説知識で知ってたけど。



「そちらの方は、確かギムルハート家の末のご子息様ですね。」

「はい。えと、俺はもう用事済んだんで。失礼します。」



 腹黒がゼフ様の方へ目を向ける。ゼフ様は緊張気味で、会釈をして走り去ろうとする。しかし、そこで腹黒の目がキラリと光った。背筋がゾクっとする。



「いえ、お待ちください。もしよろしければ、お時間をいただけませんか?今日一日。」

「え、はい?」



 あー。やっぱり。いや、私はいいんだけど、そんなあっさり聖女様の存在バラしちゃっていいのかな。いや、まだバラしてないけど。もしかして、バラさずどうにかするとか?



「ではギムルハート殿。弟君はこちらでお預かりしますね。任務、よろしくお願いしますね。」

「はい。ありがとうございます。弟をお願いします。じゃあな。ゼフも嬢ちゃんも気をつけてな。」



 ゼフ様はまだ了承していなかったが、もう決定事項になっていた。さすが腹黒。ケイルさんもサラッと流して、いつもの笑顔で別れを告げて立ち去る。少し離れた所に同じ隊の人達がいたようだ。




 そして、次に腹黒の目は私に向けられる。



「それでは、今日の予定を確認しましょうか、リリアローズ嬢。」

「はい、そうですね、宰相様。」



 お互いにっこり。新たに得た情報を強調して。ゼフ様は完全無視されて、状況がわからずオロオロしている。悪いことしたな。


 早速私達は、馬車の中へと案内された。私が王都へ来た時の馬車より大きいから、6人乗りとかかな?


 腹黒の手を借りて馬車の中へ入ると、そこには真っ黒のローブで顔まで隠した人が2人、並んで座っている。フィオ様とテオ様かな。私に続いて、ゼフ様と腹黒も入ってくる。そして、馬車が動き出す。



「まずは、ゼフナートス・ギムルハート殿。今から得た情報は一切他言しないことを、今ここで契約していただきたいのですが、よろしいですか?」

「え!?えと、あの、どういうことですか?」



 ゼフ様はまだ状況が飲み込めていない様子。そりゃ勝手に腹黒が決めちゃったからね。ここは私が。



「ゼフナートス様。私は今日一日、こちらのお二人と建国祭へ行く予定なのです。ですが、お忍びなので、ここだけの秘密にしないといけなくて。もちろん、用事があるのでしたら、降りられても構いませんよ。」

「…えっと、つまり。今日の事を誰にも言わないって契約したら、俺も一緒に祭りに行ける、ってことですか?」

「ええ。そういうことです。」



 ケイルさんとのやりとりでは、子供っぽく感じたが、冷静に物事を見て考える姿は、小説内のゼフ様を思い出すな。真剣に迷って考えている横顔は、誰もが見惚れてしまうカッコよさだ。



「やります。契約。俺もご一緒していいですか?」

「私は構いませんよ。宰相様、そういうことでよろしいですか?」

「はい。ご説明ありがとうございます、リリアローズ嬢。では、こちらにサインを。」



 腹黒はすでに契約書を用意済みだ。いつのまに。さすが腹黒。ゼフ様がサインして、契約完了。



 これで、今回の祭りのメンバーは4人になった。


 私、フィオ、テオ様、ゼフ様。




 いやいやいや!どうしてこうなった!?あと2人で旅のメンバー揃っちゃうよ!




 改めて見ると、ありえない光景。会うのは4年後のはずだったのに。私、王都に何しに来たんだっけ?



 フィオを守りに来たはずが、何故か4人で仲良くお祭りへ。こんな展開、聞いてないよー!誰かこの先のシナリオ教えてー!



赤面ゼフ様、可愛い。

主要キャラが次々登場。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ