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第10話 人さらいとフラグ折り

前話のあらすじ

秘伝の調味料を披露しました。ライが蛇の魔物を倒しました。王都に着き、ケイルさん達とお別れしました。


王都を散策します。

 


 ケイルさん達と別れ、いざ、王都の中心地へ。やはり人が多く、レーベルの街とは比べものにならない。だが、都会といっても、東京のビル街とは違うし、人気テーマパークほど混雑してもいない。だから、人の間を縫って通るくらい簡単だ。


 レーベルよりもっといろんな髪色の人がいる。平民は茶色系統が多く、貴族や大商人などはもっとカラフルだったりするのだ。綺麗な髪色の方がモテるからね。目の色も同じである。それに対して、黒や白は非常に珍しい色だ。遺伝とは関係なく現れるもので、珍しいがゆえに、忌子として扱われる場合もある。私の黒い瞳も珍しいのだが、髪色は普通なので、そこまで目立たない。レーベルでも、特に言われることはなかった。



 歩いていくと、市場に出た。様々な食品や雑貨が売られている。すごく気になるが、見るのは後だ。その通りを抜けると、広場に出る。このあたりが、祭りの中心となる場所だ。祭りでフィオが通りそうな所を見て回り、頭の中に地図を描いて、人さらいに遭いやすそうな場所を確認する。


 確認を終える頃には、もう日が暮れる時間だった。祭りは3日後なので、まだまだ時間はある。焦らずいこう。そう思い、宿を探すことにする。




 宿を探すべく、街を歩いていると、急に腕を引っ張られ、細い路地に引きずり込まれた。そして、甘い匂いのする布を、鼻と口を覆うように押し当てられた。




 人さらいじゃん!私が先に遭っちゃってるし!




 驚いたが、瞬時に状況を理解し、睡眠剤と思われる吸い込んだものを魔法で分解して、眠ったふりをした。



「よし。眠ったぞ。」

「なかなかの上玉じゃねえか。良いのが手に入ったな。こりゃ、高く売れるぞ。」

「さっさと行くぞ。ボスを待たせちまう。」



 やはり人さらいだ。アジトへと連れて行ってくれるらしいし、このまま眠ったふりをしておこう。ボスにも会えるかな。


 そう冷静に判断し、私は拐われた。運ばれながら、必死に道順を覚え、アジトの位置を大まかに確認した。




 それから5分ほど経っただろうか。アジトに着いたようで、建物の中に入り、地下へと運ばれた。犯人達が出て行ってしばらくしてから、目を開けて、周りを見渡した。


 そこそこ広い地下牢で、10人ほど子供がいる。彼らも被害者だろう。怯えた様子で私を見ている。そして、フィオの回想の中であった、水色の髪を持った女の子も見つけた。挿絵で見たから間違いない。私はフィオを拐う犯人に、早くも会うことができたようだ。



 つい嬉しくなって、口角が上がってしまった。そのせいで、周りをより怯えさせてしまった。まあ、こんな状況で笑うとか、ヤバイ奴だもんね。


 だが、本当にラッキーだ。これなら、今日の夜にでも終わらせられるだろう。そうすれば、これ以上被害が増えることもない。最高の形だろう。



 早速、探知魔法でアジトを探った。この建物の構造、犯人達の居場所と人数、他の被害者はいないかどうかなどを、確認していった。建物の中には、犯人達が15人程度。被害者はここにいる10人ほどだけのようだ。


 まだ外で人さらいをしている人もいるかもしれないが、早く宿を見つけて休みたい。




 ということで、魔法で全員眠らせた。ついでに、15分間ほどの記憶を混濁させる。これで私の存在は忘れる。


 魔法で地下牢の鍵を開け、脱走がバレないように再び閉めた。鍵はなんとすぐ側の机に置かれていたのだ。物理的には届かないが、さすがに不用心だろ。



 それから、建物の上階へと行き、ボス部屋らしき所で紙を漁る。構成人数を把握するためだ。見たところ、全員このアジトにいたようだ。つまり、私の仕事は終わり。あとは警察、ではなくて騎士団に任せよう。




 私は建物を出て、街に戻った。そして、パトロール中の騎士2人組を見つけたので、声をかけた。



「すみません…。」

「ん?どうかしたかな?」

「さっき、あっちの方で変な音を聞いて、気になって覗いてみたら、小さい子が怖い顔した人達に連れてかれてて、私怖くて…。」



 精神年齢を低めにして、なんか怖い場面を見てしまった子、って感じで、怯えたように訴えた。騎士達は驚いたように、顔を見合わせた。



「わかったよ。その子は私達が助けるから、安心して。どこで見たか、教えてもらってもいいかな?」

「あっち…。」



 私が拐われた路地を指した。アジトまで騎士達が辿り着けるように、睡眠剤のような甘い匂いを魔法で作っておいた。その匂いを辿れば、犯人達を捕まえて、被害者も保護してくれるだろう。



「わかったよ。ありがとう。君は大丈夫?送って行こうか?」

「あの店にお兄ちゃんがいるから、大丈夫、です。」

「そうかい。じゃあ気をつけてね。」



 騎士達は急いで辺りを探り始めた。もう安心だ。というか…。




 いやいやいや!あっさりすぎじゃない!?もうフラグ折れたの!?王都に入って、まだ1時間も経ってないよ!?




 簡単にフラグが折れてしまった、拍子抜けだ。蛇の方のフラグも、ライのおかげで驚くほどあっさりと折れたし。王都に来た目的が、最速で果たされてしまった。いいのか?逆に不安になる。



 だが、だからといってすることもなく。とりあえず、騎士達に兄がいると言ってしまった店へと向かう。何の店か知らないが。




 その店は、小さな魔道具店だったようだ。興味のある品々がたくさんある。嬉しい誤算だ。


 さっきまでのことは完全に忘れて、必死に興奮を抑えながら魔道具を見る。両親から聞いたもの、馬車で聞いたもの、聞いたことのないもの。面白いものばかりで、テンションは上がりっぱなしだ。だが、今買うと荷物になるので、今日は見るだけ。



 十分に魔道具を堪能した私は、店を出て、改めて宿を探す。もうかなり暗くなってきた。


 宿を見つけた。値段も相場だろう。結界魔法を張れば安心だし。




 夕食を済ませて、部屋のベッドに寝転がる。今日はいろんなことがあった。ありすぎたように思う。さすがの私でも疲れた。


 道中で蛇の魔物をライに倒してもらって、ケイルさん達の死亡フラグを折り、ついに王都に到着して、ケイルさん達とお別れし、フィオのトラウマフラグを折るべく街を散策して、人さらいに遭い、アジト丸々眠らせて、騎士団に通報して…。




 今日一日に詰め込むことじゃないでしょ!いろいろ起こりすぎ!




 フィオのフラグ折りは、明日から頑張っていく予定だったのに、あっさり折れたし。あとは、万が一のために、祭りの間フィオをそっと見守るだけ。それまでの3日間は暇になってしまった。



 今更だけど、私すごくない?有能じゃない?17歳+12歳とはいえ、魔法自体は12年間自力で頑張ってきたからこその今だから、前世は関係ない。


 フラグを折れたのは、前世の知識のおかげだから、少しズルしている気持ちにもなるけど、魔法は私の努力の成果。もし私が普通の12歳として生きていたら、いくら知識があっても、何もできなかった。12年間の努力があったから、フラグを折ることができているのだ。


 そう思うと、今回のフラグ折りに関しては、思いっきり自分を褒めたいし、誰かに褒めてほしくなる。だが、前世の記憶がある、なんて言える訳がない。しかも、この世界は小説の世界だ、なんて。そんなの、私以外の人の運命が既に決まっているかのようで、とても悲しい。


 運命は、自分で切り開くものだ。誰かに決められたものなんてない。そう思いたい。



 まあ、この世界が小説の世界であるにせよ、似ているだけの全く別の世界であるにせよ、私は前世の記憶を持ったイレギュラーだ。私が動けば、小説よりもっと良い未来が描けるかもしれない。


 もちろん、逆に私のせいでバッドエンドにならないか、不安もある。私にシナリオを変えるなんて、できないのかもしれない。



 それでも、やると決めたのだ。私の楽しい人生のために世界を、大切な人達を救う、が私が決めた最優先事項だ。この決意は、決して揺らがない。揺らがせない。


 両親は、大切な所で揺らがない人だったから。私もそうありたい。




 改めて決意を心の中で確かなものにして、今日は眠った。明日は王都を満喫するぞー!



人さらいもあっさり退場。

主人公がチート気味。

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