5話
「くっ……!」
犬に噛み千切られてからどれ程の時間が経っただろうか。俺は目が覚めた。
攻撃された場所に痛みはあるが、回復しており動くこともできるだろう。
「日が暮れたのか……。」
空はもう暗く、明かりは月光のみ。こんな場所でなければ満天の星空に感動していたことだろう。
しかし、ここは野犬や魔物が出没する危険な場所。感動するよりもまず、安全を確保する必要がある。
「街に戻らなくちゃ!」
俺は急いで立ち上がり、街に向けて走り出した。
向かうのに必死で、足元を見ていなかった。
ブニュっと足元から音がして、転んでしまった。
「うぐっ……!」
胸を強打し、呻き声が出る。何があったのか確かめるために振り向いた。
するとそこには透明で中心に赤い球体が浮かぶ奇怪な生物がいた。
「魔物……!」
俺はすぐに逃げ出した。
(野犬に負ける程度の力じゃ魔物には勝てない……!)
幸いにも奇怪な生物は動きは遅く、走っているだけで振りまくことができた。
ぜぇ…ぜぇ…と呼吸をしつつ、気付いてしまった。
街が遠ざかっていたのだ。
必死で逃げたためだろう、街とは違う方向に来てしまったのだ。
「なんでだよ……!!」
俺は自分に怒りが湧いてきた。
体力はもう限界、足も疲れで重くなっている。
もう街に行く程の力は残っていないのだ。
絶望でヘナヘナと座り込む。
座って何分かすると、周囲に野犬や魔物が集まってきた。
いつの間にか囲まれており、実力的に抜け出すことは出来ない。
もう駄目だと思い、目を瞑る。
その時、パンッ!と破裂音がした。
「ムッスルさぁんここですよぉ~」
甘ったるくで人を呼ぶ声がして、俺は目を開けた。
そこには目が痛く等程のピンクの髪色をした変な女がいた。
「相変わらずベリィは速いなぁ!」
数十秒後、古傷だらけのガタイの良い男が目の前まで近づいてきた。
「武闘家ですからぁ~」
「たしかになぁ!」
二人は楽しそうに話している。
「ありがとうございます……。」
俺はハッとし、助けられたことに対する言葉を話した。
「あらぁ、礼をするのが遅いんじゃな~い?」
ピンク髪の女はくすくすと笑いつつ、責めるような言葉を放つ。
「すみません……。」
俺は謝罪をし、自分の足で立ち上がる。
「謝る必要はないぞ!」
ガタイの良い男はガハハと笑い、俺の背を叩きつつ言った。
「さて、街に帰るか!」
男はそう言って俺を肩に担ぎ、街に向けて歩き出した。
「ムッスルさぁん待ってぇ~」
女の方も男を追いかけて小走りした。
「グギャァ!」
帰り道で野犬や二足歩行の犬に襲われたが、男と女が全て一撃で屠り、何のトラブルもなく街まで行くことができた。
「街に着いたぞ!自分の足で歩けるか?」
男は優しく俺を降ろしつつ、心配までしてくれた。
「本当にありがとうございます!」
俺は面接の時並みのお辞儀をし、感謝の言葉を言う。
「礼など要らん!たまたま見かけただけだからな!なぁベリィ!」
男はそう言い、女を見た。
「そうですけどぉ……。」
女は溜息をしつつ、男の言葉に同意した。
「では我々は宿屋に行くぞ!」
数分間二人と話すと、男は宿屋に行くことを言い去っていった。
一応これで他の作品の序章に当たる部分は終了しました。
次回からは主人公をギルドに所属させていきたいと思います。