プロローグ
とある町の一角、小さな家の屋根の上に座っている少女は空を見上げていた、空には無数の宇宙船が光を発して飛び交っていて幻想的な光景を生み出していたがその少女はさらに上を見ていた。
そこにあるのは様々な色に光り輝いている空一面に広がる星達だ。
しばらくすると
「おーい!ご飯だぞー!どこに居るんだー?」
と自分を探す声が近づいてくる
「ここだなっ!」
「もー!邪魔しないでよ!」
と少女は屋根へと上がってきた自分の父の顔を見ながら頬をふくらませる
「また星を見てたのか?」
「うん!あの何処かにお母さんはいるんだよね?」
少女は目を輝かして尋ねる、それに対し父親は少し複雑な顔をしたがすぐにその顔に笑みを浮かべ
「そうだな、たぶん今頃お母さんもご飯を食べている頃だろう、さっ早く降りるぞっ」
「うん!」
娘が先に屋根から降りて行くのを見送り
「もう二年か……」
と呟いたあと父親も屋根から降りて部屋へと戻る、
部屋へ入ると
「うわ〜!美味しそう!!今日はいつもより豪華だねお父さん!!」
娘の満面の笑みを見つつ父親は親友の言葉を思い出していた
(誰かが笑顔で居てくれる、幸せだよな)
その言葉を思い出しその幸せを噛みしめながら父親も笑う
そして2人は席に着き食事を始める
「おいしいね!このお肉!野菜も!」
と無邪気にはしゃぎつつ父親の顔を見る、すると何故か父親の顔が少し強張っていた
「おとう…さん…?」
と父の見慣れない顔を不安に思い出したところで不意に小さな揺れを感じる
「あれ…?」
食卓の上に置かれているグラスをみると中の水が少し波打っているのが分かる。
父親は立ち上がり部屋の窓を開け外の様子を確認している、これくらいの揺れなら少女は恐くも何ともないが父親の顔がどこか不安感を煽っていた。
「ねぇお父さん!どうしたの、そんな怖いか…」
少女が言い終わるよりも前に父親は叫ぶようにして
「今すぐ部屋に戻って荷物をまとめなさい!!!」
「え…?どうしたの」
「いいからすぐに…っ!?」
父親が叫んだのと同時に大きな揺れが来た
ゴゴゴゴッオオオオオ ドドドドドッ
星全体が揺れる様な感覚に襲われると家の外から悲鳴が聞こえてくる。
「なんだあぁあ!」
「キャアアアー!!!」
「くそっ!倒れるぞー!!逃げろー!」
外では混乱が起きているのが一瞬で分かった、
「はやく緊急避難場所へ行くぞ!」
と父は昔から使っている鞄を背負いそのまま娘をかかえて家を飛び出る、そして家のそばに停めてあるエアバイクに乗り込みヘルメットを被せてくる、
普段の父からは想像もつかない身のこなしに驚きつつも
「お父さん!お母さんの!!」
と言うとそれが何か気がついた父親は家へと戻っていく、そしてすぐにそれを鞄に詰めエアバイクへと戻ってくると
「行くぞ!!」
とエアバイクを起動させる
シュルルルルルル とエンジン音が響き出すと地面から少しエアバイクが浮いてくる、そして
ドオッ!!
と言う音と共にエアバイクがフルスピードで避難場所へと向かう、その時に逃げ出した人々が放り出した荷物や今も続く揺れで崩れた瓦礫などがあったがそれをなんなく回避して行く
(凄い…お父さんこんな運転できたんだ…)
と少女が考えている内に避難場所が見えてくる、そこには避難艇が何隻か見えたがすでに飛び立っているものもあり、そこには我先にと避難艇へ急ぐ人の塊が何かの生き物の様に動いて見え、怒声や悲鳴も聞こえてくる。
「どけええ!俺を乗せろおお!!」
「私が先よ!!」
「このままじゃみんな死んじまう、早く出せええ!」
そんな光景を見て父親は舌打ちをしそのまま弧を描きながらカーブする
「お父さん!!乗らないの?」
「あそこじゃ駄目だ!もう1つの避難場所に向かうからしっかり掴まってろ!」
とそのまま町から少し離れた避難場所へと向かう
猛スピードで避難場所へと向かっていると避難艇の何機かがすでに離陸しているのが見えてくる、それを見て
「こっちはさっきよりマシか?!」
と父親が叫ぶ、街のはずれである事からか、先ほどの様に怒声や罵声は聞こえてはこないがエアバイクの上から見えたのは、もう間に合わない、と言った表情でその場にしゃがんでいる人たちや、必死に走って避難艇へと急ぐ者、中には自分達の乗っているエアバイクを奪おうと飛びかかってくる者がいたがそんな人達を避けながら避難場所へと向かうとそこでは最後の避難艇が飛び立とうとしていた、あまりにも揺れが大きく地割れが起こったりしているので巻き込まれない様にと出発を急いだのだ
「待ってくれえええ!この子を乗せてくれえぇ!」
と父が叫ぶと避難艇の甲板に乗っている1人の男が気が付き手を大きく降り避難艇の船首の辺りの地面を指さす
「あそこまで行って飛び乗れえええ!」
と男が叫んだその場所は地面が盛り上がりジャンプ台の様になって居て今の船の位置より少し高い、エアバイクで助走を付けたら飛び乗れそうであった
それを見て父は急ぐが避難艇は少しずつ浮き上がりこの星を離れようとしている
「これじゃあ間に合わないか…!」
と父親は娘に自分のバッグを背負わせつつジャンプ台の様になっている地面の盛り上がりの上でエアバイクを止めるこのまま飛んでいたら避難艇とエアバイクがぶつかりそのまま地面へと落ちていただろう
「いいか?鞄の中にじいちゃんの居る星までの行き方が書いた紙がある……おい!!掴んでくれええ!!」
「えっ?」
と急に叫んだ父の顔を見ようとした所で少女の身体は宙に浮かぶ
そのままスローモーションの様に感じながら宙を舞っていると避難艇から手を伸ばした男に背負っていたバッグを掴まれそのまま避難艇へと引き上げられる
少女は甲板へと引き上げられた後すぐに船から下を見下ろすと、そこにあったのはいつもと変わらぬ父の笑顔だけであった
徐々に父のいる場所へと地面がひび割れて行きそのまま父は地割れに飲み込まれていく…
「おとっ…おとうさあああぁぁぁん!!!」
こうして第2惑星ネビュラスタは死の星となった。