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奮闘するNPC

私達はNPCと呼ばれている仕事をしている。

NPCとは言わずと知れたノンプレイヤーキャラクターだ。

ゲームの世界をプレイする中で勇者達に道やイベントなどの情報を教えたり、役立つアイテムを販売したりして勇者が魔王を倒すまでを陰ながらサポートし円滑にプレイしてもらう大切な仕事だ。


舞台の花形にはなれないが私達NPCがいなかったら世界として成り立たないのである。

想像してみてほしい、人が勇者しかいない世界を。

だからこそ私達はこの仕事に誇りをもっていたのだが、まさか今回来た勇者のせいで屋根の修理をやらされるとは思ってもいなかったのだ。


「・・・なんでこんなことを私がしないといけないんだ。NPCの仕事やってて始めてだぞ!屋根の修理なんぞ。」


誇りあるNPCナンバーAは宿屋の屋根の修理をしている。

なぜこんなことになってるかというと、ことの発端は勇者が移動呪文ラールの発動で屋根に頭をぶつけたからだ。

移動呪文ラールは町から町へ飛べる呪文ではあるが、空を飛んで移動するため屋内で使用すればそりゃ屋根に頭をぶつけるのは当然のことである。

従来の勇者達であれば素直に外に出て呪文を唱えなおして使っていたのである。

「あ、失敗失敗。テヘぺロ☆」

などと、失敗を誤魔化す姿が可愛かったり、失敗して恥ずかしそうにしている勇者画像コレクションは私のお気に入りでスクショをとって保存してあったりもする。


それなのに今回の勇者ときたらあろうことか宿屋の屋根を魔法で吹き飛ばし穴を開け、そこから飛んで行ったのである。

自分の失敗を屋根にぶつけるとはとんでもない勇者あるまじき行為であった。


「まさに開いた口がふさがらないとはこのことか・・・。」


NPCナンバーAが屋根の修理をすませ、宿屋係のNPCに礼を言われ宿の酒場で酒を飲んでいると

仕事仲間のNPCナンバーCが頬に痣をつくってやってきた。


「おう、Cじゃないか

ってどうした?その顔。痣ができてるぞ。」


Cが頬を擦りながら隣に座ってきた。


「ああ、これは勇者に殴られたんだ!」


「はぁ!?あの勇者が俺たちNPCを殴ったのか?」


まさか、俺たちNPCに手を上げたというのか今回の勇者は!

怒りがふつふつとこみ上げてきた。

勇者・・・本来は人類の希望の星として悪の化身魔王を討伐しないといけない者だ。

それがNPCに手を上げるなんぞあってはならないことだ。そもそもNPCがいないとこの世界もなりたたず、勇者も楽しめないではないか。


「そうだよ、あの糞勇者が!

俺は橋の番の仕事もしてるだろ?

工事中だからまだそっち行っちゃいけないよっての。」


ああ、そういえば彼は主に道案内の仕事をしていたな。

NPCにはイベントを円滑に進めたり、まだ勇者のレベルが足りなく全滅を防ぐために

ある一定の所から先へ進めないように道を塞ぐ役目の者も存在する。



「俺はあの時の勇者連中の悔しそうな顔が好きでよ、

それを見るためにやってたんだがな・・・。」


無論この役目に勇者達はいい顔をする者は少なかった、

早く次の町が見たい、次の町でいい武器を買いたい、新しいモンスターを見てみたいなど理由は様々だろが大抵は悔しそうな顔をして去っていくのである。


それが今日は逆に、勇者のしたり顔を見せらたみたいなのである。


「あいつときたら、ニヤッと意地の悪い笑みを浮かべたかと思ったら

俺をおもいっきり殴りやがったんだ。」


その後、勇者は(ケッ工事なんかしてねーじゃねえか大嘘つきが!)

と言う目をして去って行ったようだ。


「・・・今回の勇者は酷いな。今まではこのようなことはなかったのに」


「ああ

それにあの勇者まだこっちの大陸のイベント残してるだろ?」


そうだ、まだ魔王の手下である中ボスモンスターから村を救ってキーアイテムを貰うという重大なイベントが残っているのだ。

キーアイテムがないと先に進めなくなる問題もあるが我々NPCだけの問題ではなく

これはボス役のモンスターにも関わってくる重大な問題ではなかろうか。


なんせくる予定の勇者がいつくるか分からなくなってしまったから、ずっと待っていなくてはならなくなってしまったのだ。


「それにレベルもまだあんなだしまた死ぬぜ?」


そうだ、あの大陸のモンスターは今の勇者のレベルでは太刀打ちできないくらい強い。

いくら逃げ足が速くてもいつかモンスターに囲まれて死んでしまう。


「・・・とりあえず王様に報告に行こう。」


「だな、はぁ

また俺達王様に怒られるんだろうな。」





そもそも本来はこの様な暴虐武人な行為はできないはずではなかったのではないのか?

今回の勇者は今までの勇者とは人柄以前に何かが決定的に違っているように感じる。

この問題は王では対処できないかもしれない。もっと上の者に報告するべきではなかろうか。


肩をおとしたNPC、AとCは酒場を後にし城へ王様に報告へ向かうのであった。


週1のペースで投稿できればと思います。

感想お待ちしております。

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