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黎明を忘れた街  作者: 水木草明
序章
2/2

すべてのはじまりin江戸?


 俺は、鏡宮誠一(かがみやせいいち)という。ちなみにまだ24歳だ。さらに言えばきちんと国立大学も出ている。……自慢ではない、断じて。

 今はフリーのカメラマンとして全国津々浦々を旅している。特に家も持たず、その日暮らしで気ままな生活だ。幸いにも、両親が遺してくれた金も仕事で入ってくる給金もそれなりにあるために、贅沢を望ま無い限り生活に困るようなことはない。

 彼女なんていはしないし、兄弟もいない。父親は交通事故で、母親は自殺ですでに他界しているし、その後俺を育ててくれた祖父母もついこの間天寿を全うした。つまりは完全な独り身である。

 よって、今日も今日とてカメラとわずかばかりの荷物(基本的には現地調達派だ)を片手に絶景目指して電車に乗り

 ―冒頭に至る。


                       ✛✛✛                       


 仕方がないので、ボロボロの機械で何とか乗り越し精算をし、たった1つだけあった改札を通って木々に飲まれつつある一本道を行く。はじめこそ獣道の歩きにくさに辟易としたが、慣れてみると山の空気というのはそれなりに美味いものだ。

  …にしても、この深い山にしろ謎の駅にしろ、まるで突然異世界にでも飛ばされたような気分だ。

 子供の頃に見たアニメがふと頭をよぎる。

 ここを抜けたら大きくてもっふもふのあの大きな動物がぐっすりと眠っているんじゃなかろうか。

 そんな妄想を繰り広げながら、半ば本気でワクワクしながら木々の途切れているところへと出たのだが。


  先程も感じたように、現実とはそう優しくはないのだ


 「…………」


  俺の目の前には


  優に200段を超えるであろう石階段が待ち受けていた。




 俺が必死に階段を登る姿なんて見苦しいだけだろうから割愛させていただく。

 とにかく登ったのだ、俺は、273段を。

 もう勘弁してほしい。現実が厳しいことはよくわかった。ほんともうお願いします。


 しかし、やはり俺の望みは尽く打ち破られる運命にあるようだった。


 しかも、今度こそ受け入れられそうにない。


 俺の目の前には、真っ赤な鳥居。それだけならばまだ良かった。

 問題は、その鳥居の向こう―

 

  ―そこには、本物の『異世界』が広がっていた




 「……………………は、ぁ?」

 なんだこれは。

 俺の目が正しいのなら、目の前にある風景は、『江戸時代』と呼ばれる時代の景色そのもので。

   

   着物姿の人々が行き交い

     

    飛脚が走り

       

     瓦版が宙を飛ぶ

 

 はじめに俺の脳内によぎったのは、『タイムスリップ』という単語だった。

 しかしそれもすぐに否定される。

 すぐ後ろからは、通り過ぎていく電車の音がはっきりと聞こえるし、空模様も何も変わっていない。

 

 次に思ったのは、これは映画のセットか何かではないのかということだ。

 だがこれもすぐに打ち消される。

 カメラも何もないのに飛脚が全力で走ったり、瓦版屋が叫んだりはしないだろう。


 ここまで感覚がはっきりしていると、夢でないということはもはや疑いようがない。

 もうこうなってしまったらひとつしか方法はない。

 即ち、人を捕まえて聞くのである。

 ちょうどいい事に、今こちらの方向へ向いて歩いてきている人がいる。もたもたしているわけにも行かないので、その人が角を曲がってしまう前に声をかけようとした所で、

 その人は予想に反した動きをした。

 俺の姿を認めると、こちらへ一直線に走ってきたのだ。


 「す、すみませぇーんっ!あのッ、こっち、来てくださいませんかぁーッ!」


 叫ぶ声は可憐な女性のもの。これ以上走らせるわけにも行かないと思い、こちらも駆けていく。

 ちょうど鳥居の下で、お互いにぶつかった。


 「ああ、良かった!すみませんいきなり…驚かれたでしょう?」

 出会うなりそう言ってきた彼女は、所謂『巫女』の格好をしていた。しかもかなり可愛らしい。

 「ッえ!?、ああ、えっと、そうですねッ」

 まて、焦るな俺。第一印象が大事なんだ!

 「…まあ、驚いたといえばそうでしょうか。一体ここは?」

 「………長くなりますから、とりあえずついてきてくださいますか?お茶くらいはお出ししますから」

 そう言ってニッコリと微笑む彼女。可愛い。

 …ってそうじゃなかった。ここがどこなのか、と言うよりもむしろ休めるならどこでも良かった俺は、とりあえず彼女の後をついていく。


 「私、あそこの神社で巫女をしております、佐神弥生(さがみやよい)と申します」

 「俺は鏡宮誠一です。やっぱり巫女さんだったんですね」

 

 互いになんとなく自己紹介をしながら、彼女の指差す方向にある神社へと向かう。

 ちなみに佐神さんは独身らしい。

  ……チ、チャンス、到来…ッ………

 などと下心丸出しのことをゆるい頭で考えていると、

  「…っ?」

 ふと、首筋に強烈な視線を感じた。

  「鏡宮さん?」

 思わず後ろを振り返るが、夕闇に飲まれつつある鳥居があるほかは誰もいない。

  「どうかなさいましたか?」

 佐神さんが心配そうに聞いてくる。彼女が何も感じていないということは、きっと俺の思い違いなんだろう。

  「なんか視線が…犬かなんかですかね、あはは」

 そういうことにしておこう。

 若干気味が悪くはあるが、佐神さんも特に追求はして来なかったし、害がないのならば気にすることはない。

  「…まあ、大丈夫だと思いますけれど。あ、着きましたよ、鏡宮さん」

 そうこうしているうちに、俺達は目的の場所へとたどり着いていた。  

お久しぶりです水木です。

前回の話を読んでくださった方、ありがとうございます。お気に入り登録してくださった方もいらっしゃるようで…こんな拙い小説にッと感激の極みでございます。

少しでも楽しんでいただけるようがんばりますので、今後共にどうぞよろしくお願いいたします。

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