第五章 王子は、最強を値踏みした
王都へ戻った翌日、
ギルドに
王城からの使者が来た。
金縁の外套。
紋章入りの封書。
周囲が
一斉に息を呑む。
「Sランク冒険者、
レイン・フォルド殿」
名を呼ばれ、
彼は静かに
一歩前へ出た。
「王子殿下が、
直々に
お会いになりたいと」
セリナの表情が
一瞬、
硬くなる。
(来たわ……
予定より早い)
王城の訓練場は、
白い石畳に囲まれた
開放的な場所だった。
そこに立っていたのは、
若い男。
整った顔立ち。
無駄のない体躯。
王子、
アルベルト・レオンハルト。
「君が、
噂のSランクか」
穏やかな声。
だが、
目は鋭い。
「そうだ」
簡潔な返答。
王子は
微かに笑った。
「随分と、
素っ気ないな」
「必要なことしか
話さない」
訓練場に
沈黙が落ちる。
王子は
それを楽しむように、
剣を手に取った。
「少し、
試させてもらえるか」
周囲の騎士が
ざわつく。
セリナが
一歩前に出た。
「殿下。
それは――」
「問題ない」
レインが
先に答えた。
「構わない」
木剣が
二本、
渡される。
合図はなかった。
次の瞬間、
王子が踏み込む。
速い。
正確。
だが――
レインは
一歩も動かず、
剣を受け止めた。
衝撃音。
王子の眉が
わずかに
動く。
「……なるほど」
数合、
剣が交わる。
結果は
明白だった。
レインの剣先が、
王子の喉元で
止まる。
静寂。
「ここまでとは
思わなかった」
王子は
素直に
剣を下ろした。
「だが――」
視線が、
エリナへ
向けられる。
「守れなかった、
と聞いている」
空気が、
凍る。
レインは
否定しなかった。
「事実だ」
王子は
その答えに、
満足そうに
頷いた。
「強さだけでは、
国は守れない」
「分かっている」
即答だった。
その声に、
迷いはなかった。
王子は
一瞬だけ
驚いた顔をし、
すぐに笑う。
「ならば、
君は変わるな」
その言葉に、
セリナの背筋が
冷たくなる。
(まずい……
殿下は、
レインを
“駒”として
見始めている)
王子は
告げた。
「近く、
大規模な
討伐がある」
「参加を?」
「いや」
王子は
はっきりと言う。
「同行を、
命じたい」
それは
依頼ではなく、
命令だった。
レインは
初めて、
即答しなかった。
背後で、
エリナが
不安そうに
彼を見る。
セリナは
祈るように
拳を握った。
この選択が、
物語を
王道へ戻すか。
それとも――
破滅へ
進めるか。
レインは
ゆっくりと
口を開いた。




