第十一章 それぞれは、同じ空を見上げる
王都の門は、
朝霧に
包まれていた。
別れには、
ちょうどいい
静けさだった。
セリナは
簡素な外套を
羽織り、
荷を
肩に掛けている。
かつての
華やかな
装いはない。
だが、
背筋は
真っ直ぐだった。
「ここまでね」
彼女は
振り返り、
レインに
微笑む。
「追放される側が、
見送られるなんて」
「皮肉だな」
レインは
短く
答えた。
言葉は
少ない。
だが、
それで
十分だった。
「……ありがとう」
セリナは
小さく
頭を下げる。
「私を、
悪役のままで
終わらせなかった」
「俺は、
何もしていない」
「いいえ」
彼女は
首を振る。
「選んだわ」
「裁かれる
道を」
その背を、
彼は
見送った。
悪役令嬢は、
物語から
消えた。
だが、
敗者として
ではない。
次に、
エリナが
立つ。
肩には
包帯。
それでも、
表情は
穏やかだった。
「王立医療院、
厳しいそうです」
「逃げ出すな」
レインは
即答する。
「……はい」
エリナは
笑った。
「逃げません」
「私、
怖かったんです」
「強い人に
守られることも」
「弱い自分を
認めることも」
彼女は
一度、
深呼吸する。
「でも、
あの日」
「立てた」
「だから、
次は
自分の足で」
彼女は
深く
頭を下げた。
ヒロインは、
誰かの
後ろではなく、
自分の
道を
選んだ。
最後に、
レイン。
彼は
王都を
振り返る。
Sランクの
称号はない。
名誉も、
権限も、
今はない。
だが、
不思議と
軽かった。
門の外で、
ギルド長が
待っていた。
「一年だ」
「それまで、
王都には
戻るな」
「分かっている」
ギルド長は
一瞬、
目を細める。
「……いい顔に
なったな」
レインは
答えない。
ただ、
歩き出す。
進む先は、
未踏の地。
誰の
正しさにも
縛られない
場所。
それぞれが、
別の道を
選んだ。
だが、
空は
同じだった。
雲の向こうに、
まだ
知らない
答えがある。
物語は、
ここで
一度、
幕を下ろす。
最強は、
最強である前に、
一人の
人間として、
歩き始めた。
--第1部完--




