迷宮調査報告書(第一層)
◆迷宮調査報告書(第一層)
提出者:メル
同行者:アシェル
調査区分:第一層定期地図更新任務
【調査目的】
・第一層の地形変動の有無を確認し、地図を更新すること。
・新人アシェルの同行訓練および迷宮での実働確認。
【調査経過】
・出発後の経路移動について
ギルド出発後、大通りを経由して迷宮入口へ向かう途中、同行者アシェルが一時的に進行方向を誤り、隊列から外れる事態が発生した。混雑した通りと分岐の多い区画が重なったことが要因と考えられる。なお、当該事案は戦闘行為や外的要因によるものではなく、短時間の経路認識の齟齬によるものであった。合流後は問題なく迷宮に到着した。
・迷宮第一層の確認について
迷宮第一層における巡回および簡易調査を実施した結果、魔獣の出現状況は概ね平常であると判断する。確認された魔獣は泥ねずみおよび苔狼のみであり、いずれも個体数・行動範囲ともに過去の記録と大きな差異は見られなかった。異常増殖や新種の出現といった兆候も現時点では確認されていない。
なお、第一層においては比較的稀とされる転送罠が一箇所確認された。当該罠は床面に設置された旧式のもので、視認しづらい構造をしていたため、同行者アシェルが誤って踏み抜き、結果として同行者間の分断が発生した。
罠の残留魔力および痕跡を調査し、速やかに推定地点へ移動した。現地に到着後、該当位置の小部屋内を確認したが、アシェルの姿は確認できなかった。一方で、壁越しに音声のみが断続的に確認できたことから、当該小部屋の構造裏側に未確認の空間が存在すると判断した。
以上の状況より、当該地点にはこれまで記録されていなかった「隠し部屋」が存在する可能性が高いことが判明した。詳細については、後続の調査項目にて記載する。
・隠し部屋の発見について
分断後、外側から周辺構造の再調査を実施した。壁面の継ぎ目、石材の配置、および打診による反響音を確認し、内部構造に不自然な空間が存在する可能性を検討した。あわせて、壁越しに確認できたアシェル側からの位置報告と照合した結果、隠し通路および隠し部屋の正確な位置を特定するに至った。
該当位置に設置されていた外側の仕掛けは、偽装壁を固定する旧式の機構であり、手順通り作動させることで壁の一部が可動状態となった。その後、同行者アシェルの腕力により可動部を押し広げ、隠し通路を完全に解放することに成功した。解放時に追加の罠や魔力反応は確認されていない。
隠し部屋内部は小規模な石造空間であり、部屋中央に未確認の宝箱が一基設置されているのを確認した。宝箱周辺に明確な物理罠は視認されなかったものの、魔力反応については測定不能であり、封印・呪術・連動罠等の可能性を否定できない状況であった。
以上の理由から、安全確保を最優先とし、当該宝箱の開封および詳細調査は実施していない。代替措置として、隠し部屋入口付近に警告札を設置し、第三者がみだりに立ち入らないよう対応を行った。以降の調査および処遇については、ギルドによる正式判断に委ねる。
本件において確認された隠し部屋は、迷宮第一層という区画においては極めて稀な事例であり、通常の地図更新任務では想定されない構造であると判断される。第一層は新人を含む多数の冒険者が出入りする区画であるため、今後の調査および情報共有の必要性が高い。
・所見および新人同行時の注意点
本任務は新人同行を前提とした内容であったが、同行者アシェルの戦闘能力は非常に高く、魔獣対応・危機下での判断・救出後の行動いずれにおいても、特段の問題は確認されなかった。咄嗟の状況下でも冷静さを保ち、護衛役としての役割は十分に果たしていたと評価できる。
一方で、方向感覚に著しい難が見られ、迷宮内において自身の位置や進行方向を見失いやすい傾向が確認された。本件の分断も転送罠が主因ではあるが、単独行動時における迷走を行う可能性が高いと判断される。当面の間は単独での迷宮潜行は推奨しない。
以上を踏まえ、アシェルは実力面においては十分に中級以上の任務を遂行可能であると判断されるが、ロワルダン特有の迷宮環境への適応および立ち回りの安定を図るため、しばらくの間は初級任務を中心に同行形式で経験を積ませることが望ましい。特に、地図確認や定型的な迷宮作業において、位置把握や連携行動を重視した運用が適切である。
以上、報告とする。




