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魔術師は強かった  作者: 中山おでん
第一章 開始編
6/29

第5話 グレートリザード討伐

次の日

「どの依頼にしようかな?」

俺は今、ギルドで魔物の討伐の依頼を探している。色々な依頼があるが、俺は冒険者ランク3なので、ランク2から4までの依頼しか受けられない。でも、ランク3にもなると、魔物の討伐依頼も増えてくるので、迷っている。

「ねぇショータ?この依頼なんかどう?」

そう言ってエレアが一つの依頼の書かれた紙を指さした。

「えーっと、『ヴァルキュール草原に出没するグレートリザードの群れの討伐』か。」

「うん、私はそれがいいと思う。」

「グレートリザードってどんな魔物なんだ?」

「わからない。」

「まあいいか。ランク4だから俺達でも受けられるし。よし、これにしよう。」

そう言い、依頼の書かれた紙を取ろうとすると、

「おいおい、お前らじゃあその依頼は達成感できねえよ」

俺たちの後ろからそういう声が聞こえてきた。俺が振り返ると、身長が180センチぐらいで坊主のガタイのいいおっさんが立っていた。

「なんでだ?」

俺がそう聞き返すと、

「いいか?グレートリザードってのはすばしっこいんだ。お前らは魔術師だろ?魔術はあいつらには当たらねえよ。」

そう嫌味ったらしく言ってきたので、俺は少しイラッとした。

「なんだとおっさん!」

「お、おっさんだと!?」

俺のおっさんという言葉に反応したが、まあいい。

「じゃあ、俺たちがその依頼を達成したら、何か言うことを聞けよ!」

「いいだろう。だが、お前らには倒せないぞ。」

「よし、決まりだ。エレア、行くぞ!」

そう言い捨て、俺はギルドを出た。



「はぁ」

あのときは勢いで返事をしてしまったが、あのおっさんがあれだけ俺たちには倒せないと言っていたから、相当強いのかもしれない。どうしよう、今から依頼をキャンセルするか?いやいや、キャンセルには料金もかかるし、あのおっさんにもボロクソ言われそうだな。そんなことになったら俺のプライドがズタズタになりそうだし、受けるしかないな。

「よし、まずは依頼主の家に行こう。」

依頼を受けたら、まずは依頼主の家に行き、詳細を確認する。そして、依頼を達成したら、依頼主のサインをもらい、それを依頼達成の証としてギルドに見せる、そうすることで報酬をもらえるという仕組みだからな。


---------------------


「すいませーん」

依頼主の家は、ヴァルキュール草原の西の方にあった。別荘のようなログハウスだが、ここに依頼主が住んでいるらしい。

しばらくすると、扉が開いた。中にいるのは、頭と左足に包帯を巻いたいかにも戦士っぽい中年の男だった。

「俺に何か用かな?」

「俺たちは、ギルドの依頼で、この草原にいるグレートリザードの群れを討伐しに来ました。」

そう言うと、その男は険しそうな顔をして、

「グレートリザードは強い。お前らでは勝てぬ。やめておけ。」

ギルドにいたおっさんと同じことを言われた。

「すばしっこいからですか?」

そう聞くと、

「それもあるし 、グレートリザードはとても凶暴で、さらに群れで連携してくる。とても勝てる相手ではない。俺も討伐しようと試みたが、負けてこの有様だ。生きているだけでも幸運と言っていいぐらいだ。」

そんなに強いのか。でも、俺は倒すと決めたし、引き返すわけにはいかない。

「俺は行きます。」

そう言った。すると、中年の男は、ため息をつき、少し笑いながら、

「無理はするなよ?やばいと思ったら、この家に戻ってこい。あいつらは家に入ってはこん。」

「わかりました。」

そう言い、俺はグレートリザード討伐に向かった。


---------------------


「あれだな。」

「うん、そうだと思う。」

ヴァルキュール草原の真ん中らへん、周辺に木が何本か立っているだけの何も無い場所、そこにグレートリザードがいた。

「あそこの木に隠れて少し様子を見よう。」

そう言い、俺たちは、グレートリザードの近くの木に隠れて少しグレートリザードの様子を見ることにした。

「15匹ぐらいだな。」

体調が2メートルぐらい、全身が黄色く、15匹ぐらいの群れで固まっていた。固まって入るが、全員が周りを警戒しながらまあまあの速さで草原を走っていた。

「とりあえず魔術を撃ってみるか?」

「待って!」

俺が魔術を放とうとすると、エレアがすぐに止めた。

「どうしたんだ?」

「確か、グレートリザードは攻撃してきた人を、全員で連携して倒すって聞いたことがあるの。だから、むやみに攻撃するのは危ないと思うよ。」

「じゃあどうしようか…」

絶対に仕留められる方法じゃないといけない。じゃあ、一発であいつらを全員倒さないとだ。でも、あいつらはすばしっこく動いていて、狙いを定められない。うーん、どうしようか。と、俺が悩んでいると、

「ねえ?どっちかが囮になって魔術を撃ってグレートリザードの気を引いて、もう一人が一番強い魔術を一発撃って、一気に倒すってのはどう?」

なるほど、いいかもしれない。

「よし、じゃあ俺が囮になろう!」

「待って!私が囮になる。」

俺が囮になると言うと、エレアがそう言い出した。

「なんでだ?」

「私は、初めてであったときから、ショータに助けられてた。私はすごく感謝してる。だから、今度は私が何かをしてあげる番だと思う。それに、ショータのほうが、魔術の威力は高いでしょ?」

エレアの言っていることはもっともだ。でも…

「ね?お願い。私はショータのお荷物では居たくないの。」

「別に荷物だなんて思ってないよ。でも、うーん……わかった。」

俺は渋々了承した。

「うん、ありがとう。」

エレアはそう言って笑った。

「でも、無理はするなよ?」

「ふふ、ショータ、さっきの依頼主の男の人みたいなこと言ってるじゃん。」

「そ、そうか?」

「じゃあ、行ってきます。」


---------------------


よし、ここらへんでいいか。

グレートリザードから400メートルほど離れたところから囮となるエレアが魔術をグレートリザードに向けて放ち、それに反応して、向かってくる奴らを別の場所から待ち構える俺が炎の上位魔術で一気に攻撃する、という感じだ。なぜ囮を使うのかと言うと、グレートリザードはずっと不規則な方向に動いていて、狙いを定めにくいため、囮を狙わせることで、進む方向をはっきりさせ、それを俺が狙い撃ちするからだ。

エレアが俺に向かって手を挙げた。あれが作戦開始の合図だ。

エレアから火魔術が放たれた。魔術はグレートリザードと1匹に命中し、燃やした。それと同時に、グレートリザードが全員エレアに向かって走り出した。よし、俺は杖を両手で持ち、営業を始めた。

「炎の力をもって敵を圧倒し、すべての悪に火の力を示さん…」

詠唱は終わったが、まだ打つタイミングではない。まだ、まだ、今だ!!

「イグニス!」

俺は思いっきりグレートリザードに向かって火属性の上位魔術を放った。

普通の威力でも大ダメージを与えるほどの魔術だが、俺の魔術は他の魔術師が放つ魔術よりも威力が段違いに高い。俺の放った火属性の上位魔術『イグニス』は直径8メートルぐらいで、走るグレートリザードの群れに直撃し、全員を焼き尽くした。

俺はすぐさまエレアのもとに走って近寄り、

「やったな!」

「うん!」

俺たちは、グレートリザードを討伐した。

「じゃあ、あの依頼主の家に戻るか。」

俺は、水魔術で、グレートリザードを燃やす火を消した。グレートリザードは跡形もなかった。


---------------------


依頼主の家に戻り、

「すみませーん、戻りました。」

そう言うと、すぐに扉は開いた。

「おい、大丈夫か?どこをケガした?」

そう言われた。そんなに心配してくれてたのか。

「大丈夫ですよ。俺達はグレートリザードを全員倒しました。」

「なに!?本当か?」

「ええ、行ってみてみますか?まあ、グレートリザードが燃えた跡しかないですけど。」

「いや、その顔なら本当なんだろう。それにしても、お前たちはすごいな。ギルドで、報酬も貰えるだろうが、何か別でお礼をしよう。ちょっとそこで待っていてくれ。」



そう言い、依頼主の男は家の奥に戻っていき、しばらくして杖を2本持って戻ってきた。

「お前たちは魔術師だろう。だから、我が家にある杖をやろう。」

確かに俺は、ギルドからもらった短い杖しか持ってないし、エレアのも安物の杖だからな。でも依頼主のおっさんが持ってる杖はなんか高そうだな。そんなことを思っていると、

「昔の話だがな、450年ほど前、この草原にはブレイズドラゴンと呼ばれるドラゴンがおってな、それを俺の先祖が倒して、そいつの体内にあった魔鉱石を杖に使ったらしい。ほんとだったら俺が使うものだが、俺は戦士で魔術はさっぱりだからな。お前たちにやろう。」

「いいんですか?」

「ああ、そのぐらいの恩ということだ。」

「ありがとうございます。」

そんな高い杖を、しかも2本か、こっちのほうがありがたいな。

「それじゃあ、お前たち、頑張れよ!」

依頼主のおっさんはそう言いながら扉を閉めた。

「よし、じゃあレイルに戻るか。」

「うん。」

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